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夕食には宅配ピザが選ばれた。
トッピングはどうするか。生地やソースはなにを選ぶか。サイドメニューについて。
十分も二十分も迷い、迷うことにはしゃいでいる樹音たちを、真理愛は輪から少し外れた場所から冷ややかにせせら笑う。細かい部分まであれこれ指定して出来上がった料理が最後の晩餐になるのだと思うと、笑声を口内に抑え留めるのに苦労した。
真理愛が食べるピザはひと切れに制限された。その程度の嫌がらせ、今さら苦痛でもなんでもない。
早く、早く、就寝時間になればいいのに。
「王様ゲームでもやる? ていうか、やろうよ」
食後、だらだらと談笑に耽っている中、玲奈が唐突にそう提案した。
メンバーから異論は出ず、樹音の「いいんじゃない? やろうやろう」の鶴の一声がゴーサインを出した。階下から割り箸を持ってくる役割は佐久間に任された。
「それでは、今からゲームを始めまーす。題して、湯田真理愛虐待王様ゲーム!」
樹音の高らかな宣言に、取り巻き五人は惜しみない拍手を送った。樹音は割り箸の一本の下端に「☆」を、もう一本には「〇」をペンで書き込み、一同に見せびらかす。
「ルールは、普通の王様ゲームを少しアレンジしたものって思ってくれればいいよ。☆マークを引き当てた人が王様で、他の参加者に自由に命令できる。ただし命令は必ず、誰かが湯田になにかをする、という形式でなければならない。湯田になにかをする誰かは、〇印を引いた人。役職名は奴隷――いや、召使いかな。奴隷は湯田だから。どう? 面白そうでしょ?」
樹音は歯茎を剥き出しにする。白い歯よりも、肉色の歯茎よりも、ぎらついた双眸が印象的な嗜虐的な微笑。本当は自分がずっと王様役を務めて、湯田真理愛を虐げる役の人間だけをくじ引きで選びたいんだけどね。そう思っている顔だ。
真理愛は樹音の手に握られた割り箸の数を数えた。六本。
なるほどな、と思う。やっぱりな、と。
第一回の抽選が行われた。いきなり樹音が王様を引き当てたので、他の五人は歓声を上げた。本人のリアクションを見た限り、不正ではなく本当に偶然らしい。実行役に選ばれたのは、高宮。男子並みに大柄な彼女は、樹音と並んで立つと、友人同士というよりもボディーガードのように見える。
「じゃあ高宮、湯田に腹パンして。思いきりね、思いきり」
王様ははしゃいだように命じ、召使いは邪悪に口角を歪める。
トッピングはどうするか。生地やソースはなにを選ぶか。サイドメニューについて。
十分も二十分も迷い、迷うことにはしゃいでいる樹音たちを、真理愛は輪から少し外れた場所から冷ややかにせせら笑う。細かい部分まであれこれ指定して出来上がった料理が最後の晩餐になるのだと思うと、笑声を口内に抑え留めるのに苦労した。
真理愛が食べるピザはひと切れに制限された。その程度の嫌がらせ、今さら苦痛でもなんでもない。
早く、早く、就寝時間になればいいのに。
「王様ゲームでもやる? ていうか、やろうよ」
食後、だらだらと談笑に耽っている中、玲奈が唐突にそう提案した。
メンバーから異論は出ず、樹音の「いいんじゃない? やろうやろう」の鶴の一声がゴーサインを出した。階下から割り箸を持ってくる役割は佐久間に任された。
「それでは、今からゲームを始めまーす。題して、湯田真理愛虐待王様ゲーム!」
樹音の高らかな宣言に、取り巻き五人は惜しみない拍手を送った。樹音は割り箸の一本の下端に「☆」を、もう一本には「〇」をペンで書き込み、一同に見せびらかす。
「ルールは、普通の王様ゲームを少しアレンジしたものって思ってくれればいいよ。☆マークを引き当てた人が王様で、他の参加者に自由に命令できる。ただし命令は必ず、誰かが湯田になにかをする、という形式でなければならない。湯田になにかをする誰かは、〇印を引いた人。役職名は奴隷――いや、召使いかな。奴隷は湯田だから。どう? 面白そうでしょ?」
樹音は歯茎を剥き出しにする。白い歯よりも、肉色の歯茎よりも、ぎらついた双眸が印象的な嗜虐的な微笑。本当は自分がずっと王様役を務めて、湯田真理愛を虐げる役の人間だけをくじ引きで選びたいんだけどね。そう思っている顔だ。
真理愛は樹音の手に握られた割り箸の数を数えた。六本。
なるほどな、と思う。やっぱりな、と。
第一回の抽選が行われた。いきなり樹音が王様を引き当てたので、他の五人は歓声を上げた。本人のリアクションを見た限り、不正ではなく本当に偶然らしい。実行役に選ばれたのは、高宮。男子並みに大柄な彼女は、樹音と並んで立つと、友人同士というよりもボディーガードのように見える。
「じゃあ高宮、湯田に腹パンして。思いきりね、思いきり」
王様ははしゃいだように命じ、召使いは邪悪に口角を歪める。
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