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真理愛は口を半分開けた顔が隼人を見つめる。彼は説明する。
持参した包丁で樹音を刺殺した。動機は、真理愛が殺し損ねた樹音を殺せば、真理愛の好感度が上がると考えたから。殺した証拠として、体の一部を切りとって見せることにした。本当は生首を持参したかったのだが、包丁では上手く切れなかったので眼球で妥協した。数ある部位の中から眼球を選んだのは、樹音の瞳には死んでもなお人を委縮させる力が宿っていると感じたので、その効果を消し去りたかったから。
「好感度、というのはどういう意味? わたしが殺人鬼だから、機嫌をとって殺される確率を下げようとしたということ?」
「違うよ。殺されたくないなら、川真田さんの話を聞いた時点で逃げているさ」
ひと呼吸を置く。今の隼人は気持ちが前のめりだ。怖いものなどなにもない。
「湯田さん。いや、まりりん。君のことが好きだからだよ。君のもとに駆けつけたのも、川真田さんを殺したのも、君が好きだからこそ」
真理愛の瞳に光は宿らない。まばたきの頻度は少し増えたようだ。彼女の手に握られた樹音の眼球が隼人を見つめている。真理愛の双眸も見つめている。もっと言葉を聞きたがっている。説明を求めている。
「お互いに殺人の罪を犯して、先が見えなくて、なにかと大変だと思うけど、似た者同士、手を取り合えば案外なんとかなるんじゃないかな。いじめを克服できたまりりんと、臆病さを克服できた俺が協力すれば、きっとどんな困難も乗り越えていけるよ。だから、お願いします。俺の恋人になってください……!」
深々と頭を下げる。人声が途絶え、一帯は死後の世界を思わせる静寂に包まれた。
十、心の中でカウントアップした。
真理愛からの返事はない。
恐怖にも似た不安感が隼人の胸を駆け足で染め上げていく。
邂逅を果たした瞬間の真理愛は、呆然自失といった様子に見えた。犯した罪の重さを遅まきながら自覚し、途方に暮れていると解釈するのが妥当な姿だった。救済が必要だと思ったし、救済を欲しているとも思った。弱みにつけ込むようで罪悪感を覚えたが、それでも告白しようと決意した。二人でこれからの人生を歩んでいくこと、それこそが救済だと信じた。
では、肝心の真理愛はどう思っているのだろう?
彼女は果たして、「森嶋隼人は湯田真理愛を救い得る人間だ」と認識しているのだろうか?
隼人はこれまで、いじめられている真理愛をまともに助けようとはしなかった。全く行動を起こさなかったわけではないが、総じてささいで、なおかつ間接的な手助けに過ぎなかった。暴言や暴力をやめるよう加害者に物申したり、被害者の相談に乗ったりしたことは一度もなかった。
持参した包丁で樹音を刺殺した。動機は、真理愛が殺し損ねた樹音を殺せば、真理愛の好感度が上がると考えたから。殺した証拠として、体の一部を切りとって見せることにした。本当は生首を持参したかったのだが、包丁では上手く切れなかったので眼球で妥協した。数ある部位の中から眼球を選んだのは、樹音の瞳には死んでもなお人を委縮させる力が宿っていると感じたので、その効果を消し去りたかったから。
「好感度、というのはどういう意味? わたしが殺人鬼だから、機嫌をとって殺される確率を下げようとしたということ?」
「違うよ。殺されたくないなら、川真田さんの話を聞いた時点で逃げているさ」
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「湯田さん。いや、まりりん。君のことが好きだからだよ。君のもとに駆けつけたのも、川真田さんを殺したのも、君が好きだからこそ」
真理愛の瞳に光は宿らない。まばたきの頻度は少し増えたようだ。彼女の手に握られた樹音の眼球が隼人を見つめている。真理愛の双眸も見つめている。もっと言葉を聞きたがっている。説明を求めている。
「お互いに殺人の罪を犯して、先が見えなくて、なにかと大変だと思うけど、似た者同士、手を取り合えば案外なんとかなるんじゃないかな。いじめを克服できたまりりんと、臆病さを克服できた俺が協力すれば、きっとどんな困難も乗り越えていけるよ。だから、お願いします。俺の恋人になってください……!」
深々と頭を下げる。人声が途絶え、一帯は死後の世界を思わせる静寂に包まれた。
十、心の中でカウントアップした。
真理愛からの返事はない。
恐怖にも似た不安感が隼人の胸を駆け足で染め上げていく。
邂逅を果たした瞬間の真理愛は、呆然自失といった様子に見えた。犯した罪の重さを遅まきながら自覚し、途方に暮れていると解釈するのが妥当な姿だった。救済が必要だと思ったし、救済を欲しているとも思った。弱みにつけ込むようで罪悪感を覚えたが、それでも告白しようと決意した。二人でこれからの人生を歩んでいくこと、それこそが救済だと信じた。
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