レム

阿波野治

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告白

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 凪は七海の目を見返して、深くうなずく。そして、話しはじめた。
 悪夢のこと。病気のこと。後者に触れるほうが心理的な抵抗感が強かったので、まずは前者から切り出してみる。

「実は、七海が出てくる夢を見たんだ。荒唐無稽なんだけど、噛みしめれば噛みしめるほど怖くなってきて、単なる夢だと笑い飛ばせない、そんな夢で」

 凪は語った。棺の夢はもちろん、大蛇の夢も、細部までしっかりと記憶に残っている。だから、最初から最後まですらすらと語れた。

「生贄にされる女性……。空っぽの棺……」

 七海はひとり言のようにつぶやき、うつむいていた顔を持ち上げる。

「生贄にされたのも、棺に入るのも、両方わたしだよね。つまり、わたしは死ぬ運命にある……」

 表情を見れば、ショックを受けているのは明らかだ。
 当たり前だ。自分が死ぬ夢を見たと言われて、気分がよくなる人間はいない。重い病を抱えている身だからこそ、受けたショックはより大きかったはずだ。

『僕がそんな内容の夢を見たのは、君が重い病気をわずらっているからだよ。七海のことをもっと知るためにも、病気について詳しく知っておきたい。七海もつらいと思うけど、正直に打ち明けてほしい。どんな現実も受け止める覚悟はできているから』

 凪がそう話を繋げようとすると、

「わたしは――」

 七海がおもむろに薄桃色の唇を動かした。発せられた言葉は、凪がまったく予想していなかったものだった。

「わたしは凪くんが創作した架空の人物であって、実在する人物じゃない。夢の中でわたしがそんな目に遭ったのは、人間は悲劇を好む習性を持つ生き物だから。創られた存在であるわたしには、自分が生きる物語を選択する権利は与えられていない。わたしが願うのは、ただ一つ。レム睡眠からノンレム睡眠へと速やかに移行すること」
「……七海? 君はなにを言って――」
「わたしがなんの病気で入院しているのか、凪くんは知らなかったよね」

 混乱が冷めやらないうちに、話題が変わった。心臓を鷲掴みされたかと思った。

「とても珍しい病気だから、病名を言っても凪くんはわからないと思う。たしかなのは、脳の病気だということ。そして、あと一か月の命だということ」

 ――嘘だ。
 つぶやいたはずの言葉は、声にはならなかった。

 嘘であれば、どんなによかっただろう。しかし、七海の眉根をかすかに寄せた顔は、「信じたくない気持ちは理解できるけど、嘘を言っているわけではないとわかって」と、静かに、それでいて切に訴えていた。

 七海は脳の病気をわずらっている。
 そのせいで、あと一か月しか生きられない。
 たった一か月の、命。

「ごめん。今日はもう、凪くんの顔は見たくないし、話をしたくもない」

 七海はそっぽを向いて告げる。

「今日のところはもう、帰って」
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