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決着
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心の中で復唱した瞬間、天啓が舞い降りた。
それは、絶望の中の光。無力感の大海原を漂流しているさなかに見つけた、希望が封じられた小瓶。
これが夢の中なら、自力で状況を打開できるはずだ。大蛇に襲われる夢だって、炎から逃れる夢だって、「死んでしまった七海」を直視する場面は回避した。直視する寸前に夢を終わらせられた。夢を見ている張本人である凪が、七海が死ぬところを見るのが嫌だったから。おそらくは、ただそれだけの理由で。
病室で七海が炎に包まれる夢では、息絶える場面まで放映された。残念ながら、絶対に回避できるわけではないのだろう。
しかし、光を見つけたことで、凪は今気力が漲っている。かつてないほど漲っている。
やってやるぞ。この手で岩永月夜を倒してみせる。
なにかに導かれるように、凪は自分の足元に視線を落とした。透明感のある水色の液体が、直径二十センチほど地面に溜まっている。凪が流した涙だ。
人の目から流れた涙にしては色がおかしいし、土に吸いこまれずに水たまりを作っているのもおかしい。
ここが夢の世界だからこそ、こんな非現実が現実と化しているのだ。
凪はふたたび岩永の顔を見据えた。彼の中でなにかが劇的に変化したのがわかったらしく、岩永の顔から笑みが消えた。
「岩永さん。夢の中だからといって、あなたが七海にしたことは赦せない」
「赦せないんだったら、どうするつもり?」
「消えてください。僕の前から、永久に」
手のない右手首を涙の水たまりにかざす。水を吸い寄せるイメージを脳内で思い描くと、液体は瞬時に刃へと形を変え、さらには手首と一体化した。闇にうっすらと立ち昇る白い冷気が、刃の素材が氷であることを伝えている。岩永の顔が驚愕に塗りつぶされた。
凪は立ち上がる。異形と化した右手を胸の高さに構え、上半身から岩永の体にぶつかっていく。
岩永は咄嗟に防御態勢をとろうとしたが、それよりも一瞬早く、氷の刃が彼女の左胸に深々と突き刺さった。手応えを感じた。刃は付け根まで人体に埋もれ、静止した。
岩永は刃を急所に突き刺したまま、両目と口を大きく開けた表情で固まっている。口の端から一筋の血が垂れた。それを合図に、全身が小刻みに震えはじめた。血は胸の傷口からも流れ出ている。震えはだんだん激しくなっていく。
凪は刃を引き抜いた。岩永は人形のように仰向けに地面に倒れた。体の震えがぴたりとやんだ。岩永の左胸に手を当てると、鼓動は止まっていた。
刃はいつの間にか融けてなくなっている。
なくなった右手は、戻ってこない。
凪はため息をつき、移動を開始した。
それは、絶望の中の光。無力感の大海原を漂流しているさなかに見つけた、希望が封じられた小瓶。
これが夢の中なら、自力で状況を打開できるはずだ。大蛇に襲われる夢だって、炎から逃れる夢だって、「死んでしまった七海」を直視する場面は回避した。直視する寸前に夢を終わらせられた。夢を見ている張本人である凪が、七海が死ぬところを見るのが嫌だったから。おそらくは、ただそれだけの理由で。
病室で七海が炎に包まれる夢では、息絶える場面まで放映された。残念ながら、絶対に回避できるわけではないのだろう。
しかし、光を見つけたことで、凪は今気力が漲っている。かつてないほど漲っている。
やってやるぞ。この手で岩永月夜を倒してみせる。
なにかに導かれるように、凪は自分の足元に視線を落とした。透明感のある水色の液体が、直径二十センチほど地面に溜まっている。凪が流した涙だ。
人の目から流れた涙にしては色がおかしいし、土に吸いこまれずに水たまりを作っているのもおかしい。
ここが夢の世界だからこそ、こんな非現実が現実と化しているのだ。
凪はふたたび岩永の顔を見据えた。彼の中でなにかが劇的に変化したのがわかったらしく、岩永の顔から笑みが消えた。
「岩永さん。夢の中だからといって、あなたが七海にしたことは赦せない」
「赦せないんだったら、どうするつもり?」
「消えてください。僕の前から、永久に」
手のない右手首を涙の水たまりにかざす。水を吸い寄せるイメージを脳内で思い描くと、液体は瞬時に刃へと形を変え、さらには手首と一体化した。闇にうっすらと立ち昇る白い冷気が、刃の素材が氷であることを伝えている。岩永の顔が驚愕に塗りつぶされた。
凪は立ち上がる。異形と化した右手を胸の高さに構え、上半身から岩永の体にぶつかっていく。
岩永は咄嗟に防御態勢をとろうとしたが、それよりも一瞬早く、氷の刃が彼女の左胸に深々と突き刺さった。手応えを感じた。刃は付け根まで人体に埋もれ、静止した。
岩永は刃を急所に突き刺したまま、両目と口を大きく開けた表情で固まっている。口の端から一筋の血が垂れた。それを合図に、全身が小刻みに震えはじめた。血は胸の傷口からも流れ出ている。震えはだんだん激しくなっていく。
凪は刃を引き抜いた。岩永は人形のように仰向けに地面に倒れた。体の震えがぴたりとやんだ。岩永の左胸に手を当てると、鼓動は止まっていた。
刃はいつの間にか融けてなくなっている。
なくなった右手は、戻ってこない。
凪はため息をつき、移動を開始した。
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