33 / 77
33
しおりを挟む
僕にとって重要な二つの出来事が起きた翌日から、進藤レイに対する心構えに変化が現れた。
レイに対する広義の好意も、いっしょに過ごす時間が楽しいと思う気持ちも、以前と変わらず高い水準を維持している。
しかし、熱い想いの中に、冷めたかたまりが伴うようになった。
熱い想いが心臓の大きさだと仮定すると、その冷めたかたまりはせいぜい米粒ほどに過ぎない。しかしそれは、レイに対する愛情や好意とは明確に異なる性質を有していて、それゆえにサイズに不釣り合いな存在感を誇った。
といっても、常に僕の意識に強い影響力を及ぼしたわけではない。特定の状況になったとたん、今まで大人しくしていたのが嘘のように大量の冷気を撒き散らしはじめ、心をまたたく間に退廃的な銀世界に変えてしまうのだ。
「特定の状況」というのは、レイに対するポジティブな感情が極限まで高まったときのことを指す。換言するならば、彼女に対して熱くなりきれない呪いをかけられたようなものだ。
レイと会話が盛り上がっているさなかにこの現象が起きたとして、急に口をつぐみ、頭を振って会話から自主的に離脱する、などという行動を僕が起こすことは絶対にない。ただし、表向きは何食わぬ顔で会話を続けながらも、おおむね以下のような意味のことを考える。
僕はなにを熱くなっているんだろう。進藤さんは僕のことなんてなんとも思っていないのに。見返りなんて期待できないのに。僕一人が必死になって、馬鹿みたいだ。
そう無声でつぶやいているあいだ、心はやるせなさと虚しさと自責の念で満たされている。表向きは平静でいられていることからも分かるように、決して激しい感情ではない。それでいて、なにをしても払拭できない驚異的な固着力を有している。追い払えたことは今までに一度もない。無視できるくらいに縮小するまで待つしか解決策はなかった。
二つの出来事がもたらした影響は大きかった。一見、石沢との親密な会話のみが関係しているようにも思えるが、事前に庭での会話があったからこそ、コンビニでの一件の影響力が増したのは明らかだ。
庭でレイからかけてもらった言葉に、僕は彼女に救世主の素質を見出した。心が劇的に楽になった。抱えている悩みのすべてが円満に解決した錯覚さえ抱いた。
しかし、長続きしなかった。中学二年生の僕の日常をぶち壊した石沢が、三年の時を経て、今度は幻想を打ち砕いた。
嫉妬。
不信感。
失望。
よりによって石沢なんかと――。
レイに対する広義の好意も、いっしょに過ごす時間が楽しいと思う気持ちも、以前と変わらず高い水準を維持している。
しかし、熱い想いの中に、冷めたかたまりが伴うようになった。
熱い想いが心臓の大きさだと仮定すると、その冷めたかたまりはせいぜい米粒ほどに過ぎない。しかしそれは、レイに対する愛情や好意とは明確に異なる性質を有していて、それゆえにサイズに不釣り合いな存在感を誇った。
といっても、常に僕の意識に強い影響力を及ぼしたわけではない。特定の状況になったとたん、今まで大人しくしていたのが嘘のように大量の冷気を撒き散らしはじめ、心をまたたく間に退廃的な銀世界に変えてしまうのだ。
「特定の状況」というのは、レイに対するポジティブな感情が極限まで高まったときのことを指す。換言するならば、彼女に対して熱くなりきれない呪いをかけられたようなものだ。
レイと会話が盛り上がっているさなかにこの現象が起きたとして、急に口をつぐみ、頭を振って会話から自主的に離脱する、などという行動を僕が起こすことは絶対にない。ただし、表向きは何食わぬ顔で会話を続けながらも、おおむね以下のような意味のことを考える。
僕はなにを熱くなっているんだろう。進藤さんは僕のことなんてなんとも思っていないのに。見返りなんて期待できないのに。僕一人が必死になって、馬鹿みたいだ。
そう無声でつぶやいているあいだ、心はやるせなさと虚しさと自責の念で満たされている。表向きは平静でいられていることからも分かるように、決して激しい感情ではない。それでいて、なにをしても払拭できない驚異的な固着力を有している。追い払えたことは今までに一度もない。無視できるくらいに縮小するまで待つしか解決策はなかった。
二つの出来事がもたらした影響は大きかった。一見、石沢との親密な会話のみが関係しているようにも思えるが、事前に庭での会話があったからこそ、コンビニでの一件の影響力が増したのは明らかだ。
庭でレイからかけてもらった言葉に、僕は彼女に救世主の素質を見出した。心が劇的に楽になった。抱えている悩みのすべてが円満に解決した錯覚さえ抱いた。
しかし、長続きしなかった。中学二年生の僕の日常をぶち壊した石沢が、三年の時を経て、今度は幻想を打ち砕いた。
嫉妬。
不信感。
失望。
よりによって石沢なんかと――。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる