僕の輝かしい暗黒時代

阿波野治

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 僕の両親がまとまった休暇をとるさいなどは、特例的に合意を崩してきたが、その特例が訪れる頻度が高くなると考えればいい。秋からの約半年、定期的に喜びを提供してくれたことに感謝するべきであって、レイを恨むのは筋違いだ。
 そう自分に言い聞かせたが、ショックはそう簡単に克服できそうにない。

 レイと過ごす日常が当たり前だと思いこんでいた。永遠に続くと錯覚していた。
 なんという若さだろう。
 なんという愚かさだろう。
 絶対はない。永遠もない。言語化するのも陳腐な自明の真理を、あのころの僕は一刹那たりとも意識することなく生きてきた。

 会える日が減る件に関しての話はそれだけで終わって、それからはいつもどおりに過ごした。互いに口数がいつもと比べてやや少なく、盛り上がりに欠けてはいたが、おおむね普段どおりだった。
 もっとも、普段どおりが維持されたのは、レイが普段どおりに振る舞ってくれたからこそ。彼女ほど打たれ強くない僕は、いつまで経ってもショックを引きずり、気持ちを切り替えられなかった。

 困難な問題からはすぐ逃げ出すくせに、己の不都合な事実からは目を逸らせず、念頭から払拭できず、魂をすり減らす――。
 それが曽我大輔という人間であり、曽我大輔という人間の弱さだった。

 レイが一方的に下した変更が承服しがたかったのだ。やむをえない事情があるのだと察しながらも、なぜ、なぜと、割り切れない思いが胸の中でいつまでも渦巻いていた。
 レイが「いろいろあって」の一言にこめた拒絶の意思は、絶対的なものではなかった。僕は事情を問い質すべきだった。回答を拒絶された場合に初めて、別の道を模索するなり、潔く諦めるなりすればよかったのであって、行動もしないうちから解決を放棄するべきではなかった。
 しかし、当時の僕は間違いに気づけなかった。臆病さに邪魔をされて、障害を乗り越えられなくて、自らの幸福に繋がる保証のない選択肢を選んでいた。半年をかけて築き上げた関係を考えれば、思い切った行動をとっても決定的な破綻が生じないのは明らかなのに、万が一の可能性を過大に評価して。 

「じゃあね」
 レイが別れのさいに発した声は、どこかそっけなかった。
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