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土日ではなく、僕の両親が自宅に不在にもかかわらず、レイが曽我家を訪れなかった初めての日が、そんな日がいつか来ると彼女から予告された何日後の何月何日に現実と化したのかを、僕は覚えていない。
これまで、レイが来ないことが最初から分かっている休日も、会えない・顔が見られない・話ができない現実にさびしさを感じてきた。その日の体調や精神状態、家族とのあいだで起きた悶着によっては、気力を失ってベッドに倒れこんだが最後、一・二時間は起き上がれないこともあった。
期待を裏切られた場合は、それよりもさらにひどいと説明すればいい。すなわち、それ以外のネガティブな要因が作用しなかったとしても、なにをする気力も湧かず、ベッドから抜け出せないまま時間を消費することを余儀なくされる。さらなるネガティブな出来事が降りかかるなどしたら、終日ベッドの上で過ごす羽目になる。「進藤さんはもう二度と僕には会いにきてくれないのでは?」と本気で疑うことだってある。
心配は漏れなく杞憂に終わった。不安に心を囚われる期間は、どんなに長くても丸一日で済んだ。レイ本人が心がけた結果なのか、偶然なのかは定かではないが、彼女が事前の予告もなく、土日でもないという条件下で、二日連続で曽我家のインターフォンを鳴らさない日はなかった。
レイは僕に会いたくないのではなく、やむを得ない事情があって曽我家まで来られないだけ。「会えないのはさびしいが、明日には必ず会えるのだから」と自らの胸に刻みつけ、暗黒の海に深く沈みこむ時間をなるべく作らないようにするべきだ。
そう自分に言い聞かせたのだが、レイに会えないという厳然たる現実が運んでくる、救いようがない憂鬱な気分に、適切に対処するのは難しい。レイに対して八つ当たりめいた感情を抱いたこともある。半年という長い時間は、僕の中のレイの価値をそれほどまでに高めていたのだ。
つらく苦しい経験を重ねる中で、僕は少しずつ打たれ強い心を獲得していった。ただし、受けるダメージが申し訳程度に減っていっただけで、真の意味で慣れることは最後までなかったように思う。
* * *
レイが曽我家に来ない頻度は月日が経つにつれて増えていった。
初めて二日連続で休みになった日は、梅雨入りよりも先にやって来た。
一日休みになっただけで受ける精神的なダメージの大きさを思えば、僕の生活に看過できない悪影響が生じることが予想された。しかしふたを開けてみれば、これといった変化はいっさい現れなかった。
一見すると首を傾げてしまう結果だが、メカニズムは単純だ。そのころには、彼女が来ない夕方は珍しくなくなっていた。ようするに、彼女に会えない寂寥感や空虚感に対する耐性がある程度ついていたわけだ。
一回だろうが二回だろうが、休みは休みなのだから、受け入れるしかない。
我ながらさびしい諦めであり、適応だった。
これまで、レイが来ないことが最初から分かっている休日も、会えない・顔が見られない・話ができない現実にさびしさを感じてきた。その日の体調や精神状態、家族とのあいだで起きた悶着によっては、気力を失ってベッドに倒れこんだが最後、一・二時間は起き上がれないこともあった。
期待を裏切られた場合は、それよりもさらにひどいと説明すればいい。すなわち、それ以外のネガティブな要因が作用しなかったとしても、なにをする気力も湧かず、ベッドから抜け出せないまま時間を消費することを余儀なくされる。さらなるネガティブな出来事が降りかかるなどしたら、終日ベッドの上で過ごす羽目になる。「進藤さんはもう二度と僕には会いにきてくれないのでは?」と本気で疑うことだってある。
心配は漏れなく杞憂に終わった。不安に心を囚われる期間は、どんなに長くても丸一日で済んだ。レイ本人が心がけた結果なのか、偶然なのかは定かではないが、彼女が事前の予告もなく、土日でもないという条件下で、二日連続で曽我家のインターフォンを鳴らさない日はなかった。
レイは僕に会いたくないのではなく、やむを得ない事情があって曽我家まで来られないだけ。「会えないのはさびしいが、明日には必ず会えるのだから」と自らの胸に刻みつけ、暗黒の海に深く沈みこむ時間をなるべく作らないようにするべきだ。
そう自分に言い聞かせたのだが、レイに会えないという厳然たる現実が運んでくる、救いようがない憂鬱な気分に、適切に対処するのは難しい。レイに対して八つ当たりめいた感情を抱いたこともある。半年という長い時間は、僕の中のレイの価値をそれほどまでに高めていたのだ。
つらく苦しい経験を重ねる中で、僕は少しずつ打たれ強い心を獲得していった。ただし、受けるダメージが申し訳程度に減っていっただけで、真の意味で慣れることは最後までなかったように思う。
* * *
レイが曽我家に来ない頻度は月日が経つにつれて増えていった。
初めて二日連続で休みになった日は、梅雨入りよりも先にやって来た。
一日休みになっただけで受ける精神的なダメージの大きさを思えば、僕の生活に看過できない悪影響が生じることが予想された。しかしふたを開けてみれば、これといった変化はいっさい現れなかった。
一見すると首を傾げてしまう結果だが、メカニズムは単純だ。そのころには、彼女が来ない夕方は珍しくなくなっていた。ようするに、彼女に会えない寂寥感や空虚感に対する耐性がある程度ついていたわけだ。
一回だろうが二回だろうが、休みは休みなのだから、受け入れるしかない。
我ながらさびしい諦めであり、適応だった。
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