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翌日の夕方、一輝のスマホに学年主任の教師から電話がかかってきた。
気が向かなかったが電話に出た。用件は案の定、一輝が最近授業に出席していない件についてだった。
登校できない理由はなにか。家庭や金銭面での問題なら家族に相談するべきだし、大学生活のことで悩みがあるなら学生相談室に相談してみるといい。学年主任の立場としても解決に協力したいから、なにか問題を抱えているなら正直に話してほしい。
声音からは誠意を感じたが、一輝は曖昧なことしか言えなかった。登校できない理由が自分でもわからないからだ。同級生とのあいだにトラブルがあるわけではないし、授業が楽しくないわけでも、難しすぎてついていけないわけでもない。しかし、朝になると心も体も重くなり、大学に行くなんてとても無理だ、という気分になる。
小中高と、不登校になったことはない。現在通っている芸術大学は第一志望だ。本当に、本当に、授業に出られない理由が分からない。
「明日からは登校できると思います。わざわざ連絡してくださって、ありがとうございました」
通話を切り、特大のため息とともに万年床に横になる。
多分、明日も行かないだろうな、俺は。
まだ前日の夕方、明日が来るまでは時間があるのに、後ろ向きなことを考える自分は我ながら情けない。
ふて寝をして現実逃避がしたい。しかし、どうやら眠れそうない。空腹なのだ。そう言えば、そろそろ夕食にしようかと考えていたときに、タイミング悪く学年主任から電話がかかってきたのだった。
少し前、大学をときどきサボるようになったばかりのころは、コンビニ弁当を買ってくるか、それも面倒くさいときは買い置きのインスタント食品で済ませていた。しかし、怠惰な生活に慣れた今は違う。怠惰の泥沼にどっぷりと浸かっているからこそ、溺れてしまわないように体を動かす。すなわち、自分が食べる料理は自分で作る。
料理といっても、作るのは八割以上チャーハンだ。
幸い、ごはんは炊飯器にたっぷりと残っている。生鮮食料品のストックも以下同文だ。
食材になにを登用するかは、そのときの気分と、前回作ったチャーハンのレシピ、その他もろもろの事情によって左右される。いっそのこと、気まぐれと言ってしまったほうが真実に近いかもしれない。
買ってから日にちが経って少ししなびてきたので、レタスを使い切ることにした。それ以外には、毎回のように入れている卵。彩りを考えてウインナーもチルドケースから取り出す。
炒める順番は、ぶつ切りにしたウインナー、ごはん、卵、レタス。味つけは塩コショウのみ。卵は溶き卵を流し込むのでも、先に半熟に炒めておいて投入するのでもなく、ごはんの上に直接割り入れる。洗い物が少なくて済むし、手間もはぶける。
根が無精な一輝にとって「簡単にできる」というのは最重要となる要素。チャーハンを作ることが多いのは、好物の中でもっとも簡単に作れる料理がそれだからだ。最初からぶつ切りにされているウインナーが市販されていたなら、たとえいつも買っている商品の倍の値段がしたとしても、彼は迷いなくそれを買って使うだろう。
レタスチャーハンが完成した。
パラパラの食感ではなかったし、塩コショウが少し効きすぎていたが、おおむね満足できた。炊飯器に残っていた、茶碗二杯分ほどのごはんを全て使ったので、ボリューム的にも充分だ。
満腹感が眠気を運んできた。二種類の生理的な要請の前では、授業に出られずにいる惨めな現状は取るに足らない些事へと成り下がる。
食器も洗わずに布団に大の字になる。眠りに落ちるまではあっという間だった。
気が向かなかったが電話に出た。用件は案の定、一輝が最近授業に出席していない件についてだった。
登校できない理由はなにか。家庭や金銭面での問題なら家族に相談するべきだし、大学生活のことで悩みがあるなら学生相談室に相談してみるといい。学年主任の立場としても解決に協力したいから、なにか問題を抱えているなら正直に話してほしい。
声音からは誠意を感じたが、一輝は曖昧なことしか言えなかった。登校できない理由が自分でもわからないからだ。同級生とのあいだにトラブルがあるわけではないし、授業が楽しくないわけでも、難しすぎてついていけないわけでもない。しかし、朝になると心も体も重くなり、大学に行くなんてとても無理だ、という気分になる。
小中高と、不登校になったことはない。現在通っている芸術大学は第一志望だ。本当に、本当に、授業に出られない理由が分からない。
「明日からは登校できると思います。わざわざ連絡してくださって、ありがとうございました」
通話を切り、特大のため息とともに万年床に横になる。
多分、明日も行かないだろうな、俺は。
まだ前日の夕方、明日が来るまでは時間があるのに、後ろ向きなことを考える自分は我ながら情けない。
ふて寝をして現実逃避がしたい。しかし、どうやら眠れそうない。空腹なのだ。そう言えば、そろそろ夕食にしようかと考えていたときに、タイミング悪く学年主任から電話がかかってきたのだった。
少し前、大学をときどきサボるようになったばかりのころは、コンビニ弁当を買ってくるか、それも面倒くさいときは買い置きのインスタント食品で済ませていた。しかし、怠惰な生活に慣れた今は違う。怠惰の泥沼にどっぷりと浸かっているからこそ、溺れてしまわないように体を動かす。すなわち、自分が食べる料理は自分で作る。
料理といっても、作るのは八割以上チャーハンだ。
幸い、ごはんは炊飯器にたっぷりと残っている。生鮮食料品のストックも以下同文だ。
食材になにを登用するかは、そのときの気分と、前回作ったチャーハンのレシピ、その他もろもろの事情によって左右される。いっそのこと、気まぐれと言ってしまったほうが真実に近いかもしれない。
買ってから日にちが経って少ししなびてきたので、レタスを使い切ることにした。それ以外には、毎回のように入れている卵。彩りを考えてウインナーもチルドケースから取り出す。
炒める順番は、ぶつ切りにしたウインナー、ごはん、卵、レタス。味つけは塩コショウのみ。卵は溶き卵を流し込むのでも、先に半熟に炒めておいて投入するのでもなく、ごはんの上に直接割り入れる。洗い物が少なくて済むし、手間もはぶける。
根が無精な一輝にとって「簡単にできる」というのは最重要となる要素。チャーハンを作ることが多いのは、好物の中でもっとも簡単に作れる料理がそれだからだ。最初からぶつ切りにされているウインナーが市販されていたなら、たとえいつも買っている商品の倍の値段がしたとしても、彼は迷いなくそれを買って使うだろう。
レタスチャーハンが完成した。
パラパラの食感ではなかったし、塩コショウが少し効きすぎていたが、おおむね満足できた。炊飯器に残っていた、茶碗二杯分ほどのごはんを全て使ったので、ボリューム的にも充分だ。
満腹感が眠気を運んできた。二種類の生理的な要請の前では、授業に出られずにいる惨めな現状は取るに足らない些事へと成り下がる。
食器も洗わずに布団に大の字になる。眠りに落ちるまではあっという間だった。
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