台風と金木犀

阿波野治

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阿澄 九

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 翌日から、高梨創介と交流するのが阿澄の放課後の日課となった。

 触れ合っているあいだ、ブラジャーが本来の位置にある時間は五分にも満たなかった。高梨は多種多様なやりかたで成長期の胸を刺激した。唇や性器にも見向きもせずに、ひたすらその部位のみを攻めた。行為は総じて変態的かつ執拗で、回を重ねるごとにエスカレートした。
 放課後の触れ合いおける彼女は常に受け身だ。積極的になる必要性は感じないし、高梨も望んではいないらしい。言いなりになるつもりは毛頭ないが、好奇心と肉体的快楽を満たしてくれるなら、大人しくしていることも厭わないというスタンスだった。
 行為が佳境に入ると、決まって廊下を気にしはじめる高梨とは違い、阿澄は秘密の戯れが第三者に露見する心配はまったくしていなかった。足音や気配には常に細心の注意を払っているから、危険は事前に察知して回避できる自信があるという意味ではない。生きとし生ける存在はいつか必ず死ぬように、自分たちの行為は誰にもばれないと信じて疑わなかった。

「阿澄はこうやって胸をさらけ出したのかな? ほおら」
 七日目に、高梨はとうとう自らの下半身を露出した。
 禍々しいその突起物に、阿澄は自ら手を伸ばし、触れた。こちらが自らさらけ出した胸に高梨が行為を及ぼしたように、自分もそうすべきだと考えたからだ。
 高梨は意外そうに目を丸くしたが、すぐに失くしていた宝物を見つけたような顔に変わり、教え子の手をとって動作をサポートした。
 彼ははじめ、刺激を受けるたびに失笑をもらしていたが、経験を重ねるにしたがい、脚色されていない声をこぼすことも増えた。決して快い音色ではないが、そのたびに阿澄の頬は緩んだ。

 野球の試合のように攻守交代が峻別されていた戯れは、次第に境目が溶け合って曖昧になり、混沌と化していく。戦況が複雑さを増すと、阿澄は経験不足から取り残されそうになったが、懸命に食らいついた。その姿勢を、どうやら高梨は喜ばしく思っているらしい。
 阿澄は相手の気持ちなどどうでもよかったが、未知なる扉を開いてくれるのはありがたかった。彼女が高梨創介に期待している役割は、煎じ詰めればそれに尽きるのだから。

 はじめて口を使ったときは一線を越えたと思った。
 ただし、怯まない。阿澄はブレーキをかけるのではなく、アクセルを踏み込んで高梨にぶつかっていく。その先に待ち受けている光景は、彼女の冒険心をもれなく満足させた。
 味を占めた阿澄は、さらなる愉楽を求めてますます果敢になった。先へ進めば進むほど、刺激的な光景が視界に飛び込んできた。知らず知らずのうちに彼女は魅了されていた。そして、欲張った。
 もっと先へ進みたい。見たことがない景色を見たい。未体験の快楽を味わいたい。
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