すばらしい新世界

阿波野治

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リーフの戦い

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「はあ? どういう意味? なんでそんな――」
「そろそろ来ますね」

 その呟きが号砲だったかのように、亀の怪物が大きく動いた。触手を地面に叩きつけて跳躍し、イナたちがいるほうへと飛んでくる。異形が横回転しながら見る見る接近する。

 リーフは助走をつけて青芝を蹴り、高々と跳躍するとともに蹴りを放った。両者は空中で交錯。大型トラック同士が時速百キロで正面衝突したような凄まじい激突音が響き、互いが地に落ちる。リーフは空中で器用に回転し、イナの目の前にクラウチングスタートのような姿勢で。怪物は両雄が衝突した真下の地面に、甲羅を下にして。

 敵が触手を使って起き上がろうとする間に、リーフはチーターのようにしなやかに駆けて距離を詰めた。怪物は目的を果たすと同時、触手をリーフに向かって鞭のように振るった。リーフは最小限の動きで攻撃を避けて甲羅に飛び乗り、赤い目の一つに垂直に刃を叩き込む。世にもおぞましい、濁りを帯びた咆哮が大気を震わせる。

 次から次へと迫りくる数多の触手を、リーフは左手のナイフを振るって薙ぎ払う。それに並行して、矢継ぎ早に、なおかつ的確に赤目を潰していく。基本的には右手のナイフで。二振りとも防御に回したときは、自らの靴の踵や爪先を使って。

 二十近く突き刺したころ、ひときわ甲高い声が響いた。全ての触手が反り返るように天を指し、痙攣。それが数秒間続いて、力尽きたように地に伏す。四分の一ほど残った瞳の全てから赤い光が消滅している。
 怪物の体はもはや微動だにしない。巨大な全身から、命の残滓が粒子となって昇天していくのが目に見えるようだ。

 勝負を決したカウボーイがホルスターに銃を収めるように、太もものベルトに二振りのナイフを戻し、リーフはイナのもとに戻ってくる。イナもリーフに歩み寄る。

「リーフ、強いね。楽勝じゃん。かっこよかった!」
「イナが最強の戦士に設定してくれたおかげです」

 疲れの色など微塵も滲んでいない顔が微笑む。ボディスーツのいたるところに飛び散った赤は、怪物の瞳の色そのものだ。

「リーフの戦いを見ていると、やっぱりぼくには難しそうだなって思う。消したり出したりは得意だけど、咄嗟にはできなさそうだし、しかも相手は常に動き回るわけでしょ」
「そうですね。ここはイナの想像力が創り出した世界ですから、イナがそう感じるのであれば、怪物に勝つのは不可能だと思います」

 リーフはその場に腰を下ろす。イナが気づかない間に手痛い一撃を受けていて、その傷が痛むのかと思ったが、汗に濡れた髪の毛を整える指の動きはいたって平然としている。
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