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秘訣
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何度か試行をくり返す。数をこなせばこなすほど、高速かつ広範囲を破壊できるようになっていったが、思い描いた理想からは程遠い。イナとしては、一瞬にして「徳島世界一大橋」の大部分を腐らせたいのに。
「リーフ、上手くいかないよ。橋、どうしたらいい感じに壊せるのかな?」
なにか言いたそうに主人を見守るリーフの視線には、腐らせようと最初に試みた時点から気がついていた。イナの心が読めるゆえに、質問が投げかけられるタイミングを把握していたのだろう。リーフは間髪を入れずに、なおかつ淀みなく答えた。
「イナは消したり出したりするのが得意ですよね。ようするに、一から一気にゼロへ。あるいは、ゼロから一気に一へ。見ている限り、腐らせるという表現方法で破壊したいようですけど、イナは過程を描くのが苦手なのだと思います。腐らせると言うと簡単なようだけど、腐り始めて、腐敗が進行して黒ずんで、その黒ずみが全体に行き渡って、ぐずぐずになって崩れ落ちる、という経過を辿るわけですよね。その具体的な変遷を緻密にイメージできないのが、失敗の根本的な要因ではないでしょうか」
一とゼロという二つの数字を出してからの、「過程を描くのが苦手」という単刀直入な指摘は、脳に達した瞬間に腑に落ちるくらい分かりやすかった。あまりにも容易に呑み込めたせいで、以降の説明は蛇足に感じられたが、疑問が氷解した喜びにも促されて、主君に対するリーフの愛情と誠意の表れだと好意的に解釈した。
「過程が描くのが苦手、か。だったら、過程をすっ飛ばしちゃえばいいってこと? 腐らせるのとは別のやり方での破壊になるけど」
「イナが本心から望むのであれば、方針転換するのもまったく問題ないと思いますが」
「そっか、そうだよね。――よし、やってみる」
リーフから視線を切り、数メートル先、進路にある路面の一点をねめつける。そして、二メートル弱四方の穴が生じるイメージを脳裏に思い描いた。
とたんに、イメージに忠実な形状の穴が、視線を注いでいた箇所に生じた。穴があく音もなければ、あけたさいに削れた地面が飛び散るまでもなく。
「おお……!」
イナは感嘆の声を漏らした。居ても立ってもいられず、穴へと駆け寄る。上体を前屈させて覗き込むと、吹き上がってくる風の流れを顔に感じた。穴は垂直に橋を貫通し、穏やかな水の流れを正方形に暴露している。
「リーフ、上手くいかないよ。橋、どうしたらいい感じに壊せるのかな?」
なにか言いたそうに主人を見守るリーフの視線には、腐らせようと最初に試みた時点から気がついていた。イナの心が読めるゆえに、質問が投げかけられるタイミングを把握していたのだろう。リーフは間髪を入れずに、なおかつ淀みなく答えた。
「イナは消したり出したりするのが得意ですよね。ようするに、一から一気にゼロへ。あるいは、ゼロから一気に一へ。見ている限り、腐らせるという表現方法で破壊したいようですけど、イナは過程を描くのが苦手なのだと思います。腐らせると言うと簡単なようだけど、腐り始めて、腐敗が進行して黒ずんで、その黒ずみが全体に行き渡って、ぐずぐずになって崩れ落ちる、という経過を辿るわけですよね。その具体的な変遷を緻密にイメージできないのが、失敗の根本的な要因ではないでしょうか」
一とゼロという二つの数字を出してからの、「過程を描くのが苦手」という単刀直入な指摘は、脳に達した瞬間に腑に落ちるくらい分かりやすかった。あまりにも容易に呑み込めたせいで、以降の説明は蛇足に感じられたが、疑問が氷解した喜びにも促されて、主君に対するリーフの愛情と誠意の表れだと好意的に解釈した。
「過程が描くのが苦手、か。だったら、過程をすっ飛ばしちゃえばいいってこと? 腐らせるのとは別のやり方での破壊になるけど」
「イナが本心から望むのであれば、方針転換するのもまったく問題ないと思いますが」
「そっか、そうだよね。――よし、やってみる」
リーフから視線を切り、数メートル先、進路にある路面の一点をねめつける。そして、二メートル弱四方の穴が生じるイメージを脳裏に思い描いた。
とたんに、イメージに忠実な形状の穴が、視線を注いでいた箇所に生じた。穴があく音もなければ、あけたさいに削れた地面が飛び散るまでもなく。
「おお……!」
イナは感嘆の声を漏らした。居ても立ってもいられず、穴へと駆け寄る。上体を前屈させて覗き込むと、吹き上がってくる風の流れを顔に感じた。穴は垂直に橋を貫通し、穏やかな水の流れを正方形に暴露している。
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