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異変
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外に出てすぐに異変に気がついた。カテゴリは、視覚的な異常。
空一面を覆い尽くす黒雲の一領域に、正円形の穴が生じ、太陽光が垂直に降り注いでいる。さながら神が地上に降臨した痕跡のような、我を忘れて見入ってしまうほど神秘的な情景だ。
「……よし」
首肯と呟きを同時に行い、イナは歩き出した。言うまでもなく、光が照らす地点を目指して。
懸念材料は複数ある。怪物が襲いかかってきた場合、リーフ亡き今、いかに対処すればいいのか。少女の希和子のように、消せない人間が現れて、それがイナに危害を加えてくる類の存在だったならば、いかに撃退すればいいのか。
うらはらに、恐怖や不安といったネガティブな感情は覚えていない。厳密にはまったくないわけではないが、実質的にそう見なしても差し支えないほど、その勢力は弱い。光そのものや、光が照らしている地点、あるいは物体に関しても同様だ。
イナは神なのだ。全知全能ではないにせよ、この世界を創生した超越者である事実は揺るぎない。最悪の事態は起こらない。想定外のトラブルに巻き込まれたとしても、なんとかなる。そう高を括っていた。
曇天から降り注ぐ光という、分かりやすい目印があるし、多少の物理的な障害ならば力を使って容易く取り払える。怪物も、招かざる訪問者も、今のところ現れないし、現れる気配もない。一人きりになったことによる恐ろしいまでの静寂は、リーフと共に過ごす時間が長かった分、むしろ新鮮に感じられ、心は淡く浮き立ちさえした。イナの移動に連動して光も遠ざかるといった、天邪鬼な現象も発生しない。怖いくらいに順風満帆な道のりだ。
唯一の難点は、ある程度歩かなければならないことだが、目的地までの距離は着実に縮まっているから焦燥感とは無縁だ。いざとなれば、バスを出現させてそれに乗ればいい。そう割り切っていたから気は楽だった。
* * *
祖母の家を出て半時間ほどが経った。
街中に場違いに広がる、ちょっとした規模の雑木林の中をイナは歩いている。イナの力が無意識に行使されたことで生まれたものらしいが、出現理由は彼女自身にも分からない。
足を踏み入れる前から、行く手が眩い光に照らされているのは分かっていた。踏み入れる前まではなんとも思わなかったが、踏み入れたとたん、林を抜けた先が目的地なのだという思いが萌芽した。数秒後には囚われていた。自ずと足が急いた。落葉を踏む音が焦燥をかき立て、足取りは一足ごとに加速する。
木々の密集地帯を脱した。
空一面を覆い尽くす黒雲の一領域に、正円形の穴が生じ、太陽光が垂直に降り注いでいる。さながら神が地上に降臨した痕跡のような、我を忘れて見入ってしまうほど神秘的な情景だ。
「……よし」
首肯と呟きを同時に行い、イナは歩き出した。言うまでもなく、光が照らす地点を目指して。
懸念材料は複数ある。怪物が襲いかかってきた場合、リーフ亡き今、いかに対処すればいいのか。少女の希和子のように、消せない人間が現れて、それがイナに危害を加えてくる類の存在だったならば、いかに撃退すればいいのか。
うらはらに、恐怖や不安といったネガティブな感情は覚えていない。厳密にはまったくないわけではないが、実質的にそう見なしても差し支えないほど、その勢力は弱い。光そのものや、光が照らしている地点、あるいは物体に関しても同様だ。
イナは神なのだ。全知全能ではないにせよ、この世界を創生した超越者である事実は揺るぎない。最悪の事態は起こらない。想定外のトラブルに巻き込まれたとしても、なんとかなる。そう高を括っていた。
曇天から降り注ぐ光という、分かりやすい目印があるし、多少の物理的な障害ならば力を使って容易く取り払える。怪物も、招かざる訪問者も、今のところ現れないし、現れる気配もない。一人きりになったことによる恐ろしいまでの静寂は、リーフと共に過ごす時間が長かった分、むしろ新鮮に感じられ、心は淡く浮き立ちさえした。イナの移動に連動して光も遠ざかるといった、天邪鬼な現象も発生しない。怖いくらいに順風満帆な道のりだ。
唯一の難点は、ある程度歩かなければならないことだが、目的地までの距離は着実に縮まっているから焦燥感とは無縁だ。いざとなれば、バスを出現させてそれに乗ればいい。そう割り切っていたから気は楽だった。
* * *
祖母の家を出て半時間ほどが経った。
街中に場違いに広がる、ちょっとした規模の雑木林の中をイナは歩いている。イナの力が無意識に行使されたことで生まれたものらしいが、出現理由は彼女自身にも分からない。
足を踏み入れる前から、行く手が眩い光に照らされているのは分かっていた。踏み入れる前まではなんとも思わなかったが、踏み入れたとたん、林を抜けた先が目的地なのだという思いが萌芽した。数秒後には囚われていた。自ずと足が急いた。落葉を踏む音が焦燥をかき立て、足取りは一足ごとに加速する。
木々の密集地帯を脱した。
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