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の音色が眠り姫の時間の終わりを知らせた。
観覧スペースの内情はベールに包まれているが、まだ油断はできない。終了の鐘が鳴ると同時にベッドルームが観覧できなくなるような仕掛けが発動する、という話は聞いたことがない。だから、もしかしたら、客たちからはまだ見えている可能性がある。
眠り姫たちもそれはわかっているから、鐘の音の余韻が消え去ってもしばらくは極力動こうとはしない。眠りに落ちている少女はもちろん、形だけ眠っているふりをしている少女たちも。少し身じろぎが多くなったかな、程度の違いがあるだけで。
眠り姫たちが本格的に動き出すのは、終業の鐘が鳴って、客観時間にして十分ほどが経ってから。
ある者は、一秒前まで微動だにしなかったのが嘘のようにきびきびとベッドから下り、小用を足したり飲み物を飲みに行ったりいったん自室に戻ったりするためにベッドルームから出ていく。
ある者は、人目もはばからずに大あくびをして、ブランケットで顔を隠して改めて寝る態勢に入る。
ある者は、小さく寝返りを打っただけでまぶたも開けない。
どの眠り姫の自室にも一応ベッドは用意されている。ただ、基本的にはベッドルームで寝るように指示されている。いったん外に出ていた者もやがては戻ってきて、鐘が鳴った三十分後には消灯される。そして、眠り姫たちにとっての夜の後半戦、あるいは本当の夜がはじまる。
終業の鐘を聞いたマーガレットに真っ先に訪れるのは、静かな安堵。
ああ、これでやっと眠れる、という安堵。
心の緩みが眠気を運んでくる。三時間苦悶していたマーガレットは、嬉々としてそれに身を委ねる。眠り姫の時間に満足に眠ることができない彼女は、慢性的にほんの少し寝不足だ。緊張が緩んだ瞬間に襲いかかってこられると、抗う意思があったとしても起きているのは難しい。
もっとも、抗おうと考えることはまずない。楽になりたい。眠りたい。だから、身をゆだねる。
ひとたび意識を手放してしまえば、朝まで取り戻すことはできない。
こうしてマーガレットの一日は幕を下ろす。
観覧スペースの内情はベールに包まれているが、まだ油断はできない。終了の鐘が鳴ると同時にベッドルームが観覧できなくなるような仕掛けが発動する、という話は聞いたことがない。だから、もしかしたら、客たちからはまだ見えている可能性がある。
眠り姫たちもそれはわかっているから、鐘の音の余韻が消え去ってもしばらくは極力動こうとはしない。眠りに落ちている少女はもちろん、形だけ眠っているふりをしている少女たちも。少し身じろぎが多くなったかな、程度の違いがあるだけで。
眠り姫たちが本格的に動き出すのは、終業の鐘が鳴って、客観時間にして十分ほどが経ってから。
ある者は、一秒前まで微動だにしなかったのが嘘のようにきびきびとベッドから下り、小用を足したり飲み物を飲みに行ったりいったん自室に戻ったりするためにベッドルームから出ていく。
ある者は、人目もはばからずに大あくびをして、ブランケットで顔を隠して改めて寝る態勢に入る。
ある者は、小さく寝返りを打っただけでまぶたも開けない。
どの眠り姫の自室にも一応ベッドは用意されている。ただ、基本的にはベッドルームで寝るように指示されている。いったん外に出ていた者もやがては戻ってきて、鐘が鳴った三十分後には消灯される。そして、眠り姫たちにとっての夜の後半戦、あるいは本当の夜がはじまる。
終業の鐘を聞いたマーガレットに真っ先に訪れるのは、静かな安堵。
ああ、これでやっと眠れる、という安堵。
心の緩みが眠気を運んでくる。三時間苦悶していたマーガレットは、嬉々としてそれに身を委ねる。眠り姫の時間に満足に眠ることができない彼女は、慢性的にほんの少し寝不足だ。緊張が緩んだ瞬間に襲いかかってこられると、抗う意思があったとしても起きているのは難しい。
もっとも、抗おうと考えることはまずない。楽になりたい。眠りたい。だから、身をゆだねる。
ひとたび意識を手放してしまえば、朝まで取り戻すことはできない。
こうしてマーガレットの一日は幕を下ろす。
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