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C修道院は小高い山を背にして建つ二階建ての建物だ。その山になかば食いこむようにして、さながら片腕のように建物の一部が細長く突き出している。その突き当たりにある一室が懲罰部屋だ。
「先代の院長は行動力があるんだけど計画性があまりない人で、場当たり的にこの建物を改築してきたんだけど、懲罰部屋に関しては計画的に設計したのかもしれない。この廊下、日当たりが悪いせいで昼でも薄暗くて、少し怖いの。シスターに部屋まで連れていかれる眠り姫たちは、自分が犯したあやまちを心の底から悔やむでしょうね」
ジャンヌ副院長はマーガレットの三歩先を歩きながら、淡々と話す。
『マーガレットは、自分がした行為を後悔している?』
暗にそう問いかけているようでもある。
マーガレットは懲罰部屋に行くのはこれがはじめてだが、副院長は子ども騙しの脅しを言っているわけではないのは、歩いていてよくわかった。通路を照らす照明の光自体は充分に明るい。ただ、窓の外があまりにも暗いせいで、その暗さが室内にまで入りこんできていて、マーガレットは薄気味悪さを感じている。怖がりな少女には、ただこの通路を歩くだけでも罰の一つになるだろう、
やがて副院長の足が止まった。進路には、少し古びているが頑丈そうな鋼鉄製のドアが立ちふさがっている。
ジャンヌ副院長はポケットから取り出した鍵で施錠を解き、蝶番をきしませながらドアを開けた。
中は真っ暗だ。副院長の手によって部屋の照明が灯される。
懲罰部屋は木の床と石の壁で造られている。白に近い灰色の壁が寒々しい。パイプベッドがあって、洋式のトイレがあって、洗面台がある。手を伸ばせばやっと指が触れる高さに小窓があって、錠は大部分が錆びて赤茶けている。
マーガレットは懲罰部屋を、フィクションの描かれる刑務所の独房のような場所ではないかとイメージしていたが、それと比べるとまともな環境だ。ただ、中を見た瞬間に思わず一歩後ずさりをしそうになったくらい、陰惨なオーラが空間には充満している。
「マーガレットには起床時間まで、つまり今から約三時間、この部屋に入っていてもらいます。外から鍵をかけるから、時間が来るまでずっとこの中で過ごさなければいけない。いいですね?」
「……はい」
「心配しなくてもいいのよ。私は近くの部屋に待機していて、異変があればすぐに駆けつけるから」
副院長は声を少し和らげてそう言って、部屋を出て扉を閉めた。中の気配を探るような二・三秒の静寂が流れ、外側から鍵がかかる。
マーガレットはその場に立ち尽くしたまま、遠ざかる足音を耳で追いかける。やがて聞こえなくなり、ベッドの縁に腰を下ろす。マットレスは弾力がなく、少し湿っているように感じる。
こぼすつもりのなかったため息がこぼれた。
「先代の院長は行動力があるんだけど計画性があまりない人で、場当たり的にこの建物を改築してきたんだけど、懲罰部屋に関しては計画的に設計したのかもしれない。この廊下、日当たりが悪いせいで昼でも薄暗くて、少し怖いの。シスターに部屋まで連れていかれる眠り姫たちは、自分が犯したあやまちを心の底から悔やむでしょうね」
ジャンヌ副院長はマーガレットの三歩先を歩きながら、淡々と話す。
『マーガレットは、自分がした行為を後悔している?』
暗にそう問いかけているようでもある。
マーガレットは懲罰部屋に行くのはこれがはじめてだが、副院長は子ども騙しの脅しを言っているわけではないのは、歩いていてよくわかった。通路を照らす照明の光自体は充分に明るい。ただ、窓の外があまりにも暗いせいで、その暗さが室内にまで入りこんできていて、マーガレットは薄気味悪さを感じている。怖がりな少女には、ただこの通路を歩くだけでも罰の一つになるだろう、
やがて副院長の足が止まった。進路には、少し古びているが頑丈そうな鋼鉄製のドアが立ちふさがっている。
ジャンヌ副院長はポケットから取り出した鍵で施錠を解き、蝶番をきしませながらドアを開けた。
中は真っ暗だ。副院長の手によって部屋の照明が灯される。
懲罰部屋は木の床と石の壁で造られている。白に近い灰色の壁が寒々しい。パイプベッドがあって、洋式のトイレがあって、洗面台がある。手を伸ばせばやっと指が触れる高さに小窓があって、錠は大部分が錆びて赤茶けている。
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「……はい」
「心配しなくてもいいのよ。私は近くの部屋に待機していて、異変があればすぐに駆けつけるから」
副院長は声を少し和らげてそう言って、部屋を出て扉を閉めた。中の気配を探るような二・三秒の静寂が流れ、外側から鍵がかかる。
マーガレットはその場に立ち尽くしたまま、遠ざかる足音を耳で追いかける。やがて聞こえなくなり、ベッドの縁に腰を下ろす。マットレスは弾力がなく、少し湿っているように感じる。
こぼすつもりのなかったため息がこぼれた。
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