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ただ座っているだけで汗ばんでくる。部屋にこもっている蒸し暑い空気のせいだ。不気味で陰気な密室の中で長時間過ごさなければならないこと、それだけが罰だと思っていたが、まさか他にも苦しませる要素があったなんて。
マーガレットはおもむろにベッドに上がり、小窓の錠に手を伸ばす。錆びて変色した部分を避けて、指先でつまむようにしながら開けたので、少々手こずった。錠も窓もちゃんと開いた。入りこんできた夜気は生ぬるかったが、それでも室内の空気よりはましだ。ほっと息を吐いて元の場所に座る。
環境がよくないのも罰の範疇ということなのか。それとも、利用頻度が高くないせいで配慮が行き届いていないのか。どちらにせよ、理性的に努めるのが大事だと、閉じこめられて五分でマーガレットは学んだ。我慢強く過ごす、というよりも。
疲れはない。眠気もない。部屋の蒸し暑さも、孤独感も、惨めさも、不愉快ではないといえば嘘になるが、どちらも耐えがたいほどではない。近いうちに心も体も環境に適応するだろう。
恐怖はみじんも感じていない。ジャンヌ副院長の口から「懲罰部屋」という言葉が出たときは、「懲罰」という単語が持つ酷薄な響きに慄然としたが、しょせんは一陣の風に過ぎなかった。実物を見たときは衝撃を受けたが、想定の範囲内での衝撃という感じで、心を大きく揺さぶられたわけではなかった。
問題はむしろ、
「退屈……」
眠気も、これという暇つぶし手段もなく、三時間一人で過ごさなければならないとなると、そちらのほうが厄介そうだ。
悪いことをした自覚がないからだろう、とマーガレットは考える。耐えがたいくらいに不愉快な気持ちになったから、叫び、暴れた。たとえるなら、顔にまとわりついてくる羽虫を最初は無視していたが、あまりにもしつこいので悪態をつきながら手で払ったようなもの。いわば正当防衛。
本来は正当であるはずの行為が、規則に反していると難癖をつけられたから、不承不承罰を受けているだけ。悪いのはむしろ、融通がきかない規則のほうだ。そんな青くさい反発心が胸の中で渦巻いている。
同時に、懲罰部屋の外で時間を消化することに、これというメリットを感じていないからでもあるのだと、やがて気がついた。
鍵のかかった部屋の中で過ごすのは退屈だ。それでは、部屋から出たらなにをしよう?
自問してみたものの、これという案を挙げることができない。
マーガレットは無趣味だ。自由時間にすることで楽しいと思えるのは、ヘレンと雑談をすることくらい。
ただ、ヘレンは親友ではない。友人かもしれないが、親友とまでは呼べない。話をしていて楽しいのはたしかだが、性格に気に入らないところもあるし、包み隠さずに本音をさらけ出すのには抵抗がある。後者に関しては、ヘレンではなくマーガレットの性格の問題のような気もするが……。
懲罰部屋の中に閉じこめられることと、外で過ごすこと。二つを比較すればするほど、この中にいるほうが快適かもしれない、という思いが高まっていく。
マーガレットはおもむろにベッドに上がり、小窓の錠に手を伸ばす。錆びて変色した部分を避けて、指先でつまむようにしながら開けたので、少々手こずった。錠も窓もちゃんと開いた。入りこんできた夜気は生ぬるかったが、それでも室内の空気よりはましだ。ほっと息を吐いて元の場所に座る。
環境がよくないのも罰の範疇ということなのか。それとも、利用頻度が高くないせいで配慮が行き届いていないのか。どちらにせよ、理性的に努めるのが大事だと、閉じこめられて五分でマーガレットは学んだ。我慢強く過ごす、というよりも。
疲れはない。眠気もない。部屋の蒸し暑さも、孤独感も、惨めさも、不愉快ではないといえば嘘になるが、どちらも耐えがたいほどではない。近いうちに心も体も環境に適応するだろう。
恐怖はみじんも感じていない。ジャンヌ副院長の口から「懲罰部屋」という言葉が出たときは、「懲罰」という単語が持つ酷薄な響きに慄然としたが、しょせんは一陣の風に過ぎなかった。実物を見たときは衝撃を受けたが、想定の範囲内での衝撃という感じで、心を大きく揺さぶられたわけではなかった。
問題はむしろ、
「退屈……」
眠気も、これという暇つぶし手段もなく、三時間一人で過ごさなければならないとなると、そちらのほうが厄介そうだ。
悪いことをした自覚がないからだろう、とマーガレットは考える。耐えがたいくらいに不愉快な気持ちになったから、叫び、暴れた。たとえるなら、顔にまとわりついてくる羽虫を最初は無視していたが、あまりにもしつこいので悪態をつきながら手で払ったようなもの。いわば正当防衛。
本来は正当であるはずの行為が、規則に反していると難癖をつけられたから、不承不承罰を受けているだけ。悪いのはむしろ、融通がきかない規則のほうだ。そんな青くさい反発心が胸の中で渦巻いている。
同時に、懲罰部屋の外で時間を消化することに、これというメリットを感じていないからでもあるのだと、やがて気がついた。
鍵のかかった部屋の中で過ごすのは退屈だ。それでは、部屋から出たらなにをしよう?
自問してみたものの、これという案を挙げることができない。
マーガレットは無趣味だ。自由時間にすることで楽しいと思えるのは、ヘレンと雑談をすることくらい。
ただ、ヘレンは親友ではない。友人かもしれないが、親友とまでは呼べない。話をしていて楽しいのはたしかだが、性格に気に入らないところもあるし、包み隠さずに本音をさらけ出すのには抵抗がある。後者に関しては、ヘレンではなくマーガレットの性格の問題のような気もするが……。
懲罰部屋の中に閉じこめられることと、外で過ごすこと。二つを比較すればするほど、この中にいるほうが快適かもしれない、という思いが高まっていく。
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