9 / 113
証言と考察①
しおりを挟む
夕焼けに染まるには少し速い空の下を、親子ほども年齢差のある二人の男――草太朗と遼は肩を並べて歩いている。
部屋を出た直後、草太朗は美咲の自宅の場所を尋ね、遼はそれに答え、移動を開始した。
四本の脚が動き出してからの一分間、草太朗は様子見の意味から黙っていたが、遼はしゃべり出そうとしない。どうやら依然として緊張が強いらしい。
それをほぐすとともに、彼との距離を少しでも縮めたい思惑から、草太朗は趣味について尋ねてみた。
「一番の趣味はゲームですね。スマホのアプリで遊べるやつなんですけど。最近はもっぱら『ラストハルモニア』っていうファンタジーRPGを。武元さんはご存知ですか?」
「知らないね。ゲームには疎くて。王道のRPGって感じ?」
「そうですね。一言で言えば」
「王道っていう時点で面白そうだけど、覚えることとかやることとかがたくさんありそうで、おじさんにはちょっとハードルが高そうかな。僕なんてゲームといえば、むちゃくちゃ暇なときにリバーシをやるくらいだからね。同じゲームでも月とスッポンだよ」
「難しくはないですよ。簡単操作で手軽に遊べるというのが『ラスハル』の売りなので。たとえば――」
遼の顔に少年らしい明るさが感じられるようになり、口数が増えた。申告どおり、ゲームに疎い草太朗は興味が持てない話題だが、黙り込まれるよりもずっといい。
ゲームシステムの魅力、攻略の難しさ、課金額が制限されているもどかしさについて……。
「美咲に課金のことを話したら、むちゃくちゃ冷たい反応されるんですよね。あいつ、ゲームはやらないから」
「偏見かもしれないけど、ゲームを趣味にしているのは女の子よりも男の子のほうが多いイメージあるね。ゲームをしないなら、咲ちゃんはなにが好きなのかな? 遼くんとは普段どんな話題で盛り上がるの?」
「結構オタクっぽいところありますよ、美咲は。マンガとか、アニメとか。あいつは少女漫画が好きなんだけど、俺はヒーローものの少年漫画とかが好きだから、微妙に話が合わないんですよね。でも、美咲と好きなものを語っている時間は楽しいですよ。おすすめのマンガやアニメを紹介し合うとか、割とやってるんで」
趣味について知ることができた。二人の仲がいいのも確認がとれた。遼が幼なじみのことを活き活きと語るのを聞くのは素直に楽しい。
ただ、美咲が不登校・ひきこもり・人としゃべらなくなった原因は見えてこない。
遼と美咲とのあいだでなにかトラブルがあって、それが要因となったわけではなさそうだが……。
部屋を出た直後、草太朗は美咲の自宅の場所を尋ね、遼はそれに答え、移動を開始した。
四本の脚が動き出してからの一分間、草太朗は様子見の意味から黙っていたが、遼はしゃべり出そうとしない。どうやら依然として緊張が強いらしい。
それをほぐすとともに、彼との距離を少しでも縮めたい思惑から、草太朗は趣味について尋ねてみた。
「一番の趣味はゲームですね。スマホのアプリで遊べるやつなんですけど。最近はもっぱら『ラストハルモニア』っていうファンタジーRPGを。武元さんはご存知ですか?」
「知らないね。ゲームには疎くて。王道のRPGって感じ?」
「そうですね。一言で言えば」
「王道っていう時点で面白そうだけど、覚えることとかやることとかがたくさんありそうで、おじさんにはちょっとハードルが高そうかな。僕なんてゲームといえば、むちゃくちゃ暇なときにリバーシをやるくらいだからね。同じゲームでも月とスッポンだよ」
「難しくはないですよ。簡単操作で手軽に遊べるというのが『ラスハル』の売りなので。たとえば――」
遼の顔に少年らしい明るさが感じられるようになり、口数が増えた。申告どおり、ゲームに疎い草太朗は興味が持てない話題だが、黙り込まれるよりもずっといい。
ゲームシステムの魅力、攻略の難しさ、課金額が制限されているもどかしさについて……。
「美咲に課金のことを話したら、むちゃくちゃ冷たい反応されるんですよね。あいつ、ゲームはやらないから」
「偏見かもしれないけど、ゲームを趣味にしているのは女の子よりも男の子のほうが多いイメージあるね。ゲームをしないなら、咲ちゃんはなにが好きなのかな? 遼くんとは普段どんな話題で盛り上がるの?」
「結構オタクっぽいところありますよ、美咲は。マンガとか、アニメとか。あいつは少女漫画が好きなんだけど、俺はヒーローものの少年漫画とかが好きだから、微妙に話が合わないんですよね。でも、美咲と好きなものを語っている時間は楽しいですよ。おすすめのマンガやアニメを紹介し合うとか、割とやってるんで」
趣味について知ることができた。二人の仲がいいのも確認がとれた。遼が幼なじみのことを活き活きと語るのを聞くのは素直に楽しい。
ただ、美咲が不登校・ひきこもり・人としゃべらなくなった原因は見えてこない。
遼と美咲とのあいだでなにかトラブルがあって、それが要因となったわけではなさそうだが……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと - 〇
設楽理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡
やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡
――――― まただ、胸が締め付けられるような・・
そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ―――――
ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。
絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、
遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、
わたしにだけ意地悪で・・なのに、
気がつけば、一番近くにいたYO。
幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい
◇ ◇ ◇ ◇
💛画像はAI生成画像 自作
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
サナリア王国は、隣国のガルナズン帝国の使者からの通達により、国家滅亡の危機に陥る。
従属せよ。
これを拒否すれば、戦争である。
追い込まれたサナリアには、超大国との戦いには応じられない。
そこで、サナリアの王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るため。
サナリア王が下した決断は。
第一王子【フュン・メイダルフィア】を人質として送り出す事だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことなんて出来ないだろうと。
王が、帝国の人質として選んだのである。
しかし、この人質がきっかけで、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす。
伝説の英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
※タイトルはそのうち変更するかもしれません※
※お気に入り登録お願いします!※
OL 万千湖さんのささやかなる野望
菱沼あゆ
キャラ文芸
転職した会社でお茶の淹れ方がうまいから、うちの息子と見合いしないかと上司に言われた白雪万千湖(しらゆき まちこ)。
ところが、見合い当日。
息子が突然、好きな人がいると言い出したと、部長は全然違う人を連れて来た。
「いや~、誰か若いいい男がいないかと、急いで休日出勤してる奴探して引っ張ってきたよ~」
万千湖の前に現れたのは、この人だけは勘弁してください、と思う、隣の部署の愛想の悪い課長、小鳥遊駿佑(たかなし しゅんすけ)だった。
部長の手前、三回くらいデートして断ろう、と画策する二人だったが――。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる