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遼の聞き込み、についての報告
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「なるほどね」
うんうんと小刻みにくり返しうなずきながらのひとり言めいたつぶやきが、遼の報告を聞き終えての草太朗の第一声となった。
ひとまず役目を果たせて安堵したらしく、遼は表情を少し緩めてコーラに口をつける。
アイボリーのテーブルの天板に並べられているのは、両者ともに選んだコーラの他に、シェアする前提で注文したフライドポテト、てりやき味のハンバーグと白身魚のフライのハンバーガー。
ハンバーガーは二つとも草太朗の分で、魚のフライのハンバーガーはすでに三分の二が胃の腑に消えている。遼はフライドポテトを数本つまんだだけだ。
全国チェーンのファストフード店。出入り口からも窓からもトイレからも遠い、壁際の中途半端な席で、二人の男は対座している。
「聞き込み、僕が考えていた以上にがんばってくれたみたいだね。遼くん、ごくろうさま」
「ありがとうございます。まずいところもかなりあったけど、伊東に助けられました。新しい情報を得られなかったのは残念だけど」
「いや、遼くんはよくやってくれたよ。お世辞でもなんでもなくて、ほんとうによくやってくれたと思う。『新しい情報は得られなかった』って言ったけど、美咲ちゃんがトラブルに巻き込まれていない事実を確認できたのって、すごく大きいことだから。大収穫といっても過言ではないんじゃないかな、うん」
報告しているあいだ陰りを隠せなかった遼の表情が、輝きに包まれた。草太朗は「ただ」と言葉を繋げる。
「遼くんにもう少しやれることがあると思うんだ。まだ聞き込みしていない人がいるよね。弥生ちゃん以外の美咲ちゃんの友だち――昨日弥生ちゃんといっしょにいた女の子たちだね。彼女たちにも、昨日弥生ちゃんにしたのと同じ質問をしてくれないかな。難しいかもしれないけど、弥生ちゃんがその場にいないときを狙って」
弥生はグループのリーダー的存在だ。彼女の直接の影響を受けない、彼女の不在時に質問しなければ、脚色のない真実は得られない。
そんな草太朗の意図をどこまで察しているのかは定かではないが、遼は真剣な面持ちでうなずいた。
「それから、担任の先生にも事情を訊いてみて。先生って生徒間のトラブルには疎い印象があるし、こっちはまあ、ついでって感じかな。とにかく、打てる手は全て打っておこう」
「そうですね。やってみます」
遼の顔に年相応の瑞々しい表情が戻ってきた。
やはり、結城遼は行動の人だ。なにか一つでも仕事を任せておけば、ある程度の精神的安定は保たれるだろう。少年らしい葛藤や懊悩は当然あるのだとしても、とにかく最低限の安定は。
ただ、そうはいっても、このまま問題解決の手がかりを得られない状況が長引けば、いつ暗転するか分からない。
切言屋・武元草太朗に対する評価にも同じことがいえる。
アイスコーヒーを一気に喉に流し込み、草太朗は決意する。
――そろそろ僕も動かないとね。
うんうんと小刻みにくり返しうなずきながらのひとり言めいたつぶやきが、遼の報告を聞き終えての草太朗の第一声となった。
ひとまず役目を果たせて安堵したらしく、遼は表情を少し緩めてコーラに口をつける。
アイボリーのテーブルの天板に並べられているのは、両者ともに選んだコーラの他に、シェアする前提で注文したフライドポテト、てりやき味のハンバーグと白身魚のフライのハンバーガー。
ハンバーガーは二つとも草太朗の分で、魚のフライのハンバーガーはすでに三分の二が胃の腑に消えている。遼はフライドポテトを数本つまんだだけだ。
全国チェーンのファストフード店。出入り口からも窓からもトイレからも遠い、壁際の中途半端な席で、二人の男は対座している。
「聞き込み、僕が考えていた以上にがんばってくれたみたいだね。遼くん、ごくろうさま」
「ありがとうございます。まずいところもかなりあったけど、伊東に助けられました。新しい情報を得られなかったのは残念だけど」
「いや、遼くんはよくやってくれたよ。お世辞でもなんでもなくて、ほんとうによくやってくれたと思う。『新しい情報は得られなかった』って言ったけど、美咲ちゃんがトラブルに巻き込まれていない事実を確認できたのって、すごく大きいことだから。大収穫といっても過言ではないんじゃないかな、うん」
報告しているあいだ陰りを隠せなかった遼の表情が、輝きに包まれた。草太朗は「ただ」と言葉を繋げる。
「遼くんにもう少しやれることがあると思うんだ。まだ聞き込みしていない人がいるよね。弥生ちゃん以外の美咲ちゃんの友だち――昨日弥生ちゃんといっしょにいた女の子たちだね。彼女たちにも、昨日弥生ちゃんにしたのと同じ質問をしてくれないかな。難しいかもしれないけど、弥生ちゃんがその場にいないときを狙って」
弥生はグループのリーダー的存在だ。彼女の直接の影響を受けない、彼女の不在時に質問しなければ、脚色のない真実は得られない。
そんな草太朗の意図をどこまで察しているのかは定かではないが、遼は真剣な面持ちでうなずいた。
「それから、担任の先生にも事情を訊いてみて。先生って生徒間のトラブルには疎い印象があるし、こっちはまあ、ついでって感じかな。とにかく、打てる手は全て打っておこう」
「そうですね。やってみます」
遼の顔に年相応の瑞々しい表情が戻ってきた。
やはり、結城遼は行動の人だ。なにか一つでも仕事を任せておけば、ある程度の精神的安定は保たれるだろう。少年らしい葛藤や懊悩は当然あるのだとしても、とにかく最低限の安定は。
ただ、そうはいっても、このまま問題解決の手がかりを得られない状況が長引けば、いつ暗転するか分からない。
切言屋・武元草太朗に対する評価にも同じことがいえる。
アイスコーヒーを一気に喉に流し込み、草太朗は決意する。
――そろそろ僕も動かないとね。
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