惣助とアラバマ

阿波野治

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またね!

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 二人の大人は、手を伸ばせば相手に触れられる距離を挟んで相対する。
 遅れてアラバマも歩み寄ってくる。娘が到着するよりも先にしゃべり出す。

「あんた、ずっとてぃあらといっしょだったの?」
「……はい」
「いつから?」
「昨日の夕方から、です」
「ずっとって、てぃあらはあんたの家で寝たわけ?」
「はい」

 反射的になにか言いかけたが、やめた。腰に手を当てて俯き、心を整えるようなため息。アラバマが追いつき、母親の顔を見上げた。
 腰から手が外れ、鋭い目で惣助を見据える。

「歯ぁ食いしばれ」

 身構える間もなく、アラバマママの右ストレートが惣助の顔面に直撃した。惣助の体は吹き飛び、仰向けに地面に倒れた。

「おい、変態ロリコン野郎」

 ドスがきいた声。殴られた箇所を手で押さえながら、首だけを持ち上げる。アラバマママは、惣助を殴る前と同じ場所に立っている。顔が憤怒に染まっているのがはっきりと分かる。

「てぃあらが無事なようだから、今回は勘弁してやる。二度と近づくなよ。――帰ろう、てぃあら」

*

 アラバマママが手を握ろうとしてきたので、それをかわした。手にしている槍を投げ捨て、惣助のもとへと走る。

「こら! てぃあら!」

 呼び止められたが、無視した。すぐ傍でしゃがみ、鼻を押さえている惣助と目を合わせる。満面の笑みを浮かべる。

「そうすけ、ありがとう。楽しかった! おもしろかった! またね!」

 ぴょこんと立ち上がる。惣助は呆然とアラバマを見上げている。その顔に向かって手を振り、走って母親のもとに戻る。槍を拾い上げ、自ら母親の手を握る。

「帰ろ。おなかすいた!」

 アラバマママの表情がようやく緩んだ。二人は公園の出口に向かって歩き出した。

*

「腹減ったよな。少し早いけど、どこかで食べて帰ろう」
「がいしょくー!」
「テンション上がるよな、外食。てぃあらは昨日の夜と今日の朝、なに食べた?」
「昨日の夜はね、かきあげそば」
「そいつは豪勢だな」
「インスタントのやつだよ。朝はね、クリームパンとからあげ」
「揚げ物好きだもんな、てぃあらは」
「うん」
「じゃあ、ファミレスにするか。揚げ物も美味いし、他にもいろいろあるし」
「やったぁ!」

 二人は道に出た。金網フェンスの向こう側を右から左へと進む。

「その棒、重い? 持とうか?」
「軽いよ。ほら」
「うわっ、本当だ。それにしても、こんなものどこで拾ったの」
「ただでもらった。駅前にある小さい古い店でね、そこの店主さんが――」

 やがて姿が見えなくなり、声も聞こえなくなる。
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