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夏休み最終日の出来事
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夏休み最終日、地区の子供たちは全員が広場に集合していた。ラジオ体操の参加日数に応じて貰える、景品の菓子を受け取るためだ。
水難事故で亡くなった川崎さん宅のタクミくんと、友人関係を苦に飛び降り自殺した高本さん宅のミユちゃんも、遺体の状態で本日のラジオ体操に参加している。夏場なので腐敗の進行が速く、タクミくんとミユちゃんは最早タクミくんとミユちゃんではなく、蛆が湧き、蠅がたかった巨大な腐肉だ。二人を広場まで運んできたのは彼らの両親だが、今は広場にはいない。菓子を受け取る時になれば再び現れるだろう。
かったるい時間が緩慢に流れ、今夏最後のラジオ体操が終わった。わたしを含む保護者は菓子の準備をし、子供たちは菓子を受け取るために列を作った。タクミくんとミユちゃんは並んでいない。彼らの両親がやって来れば彼らの代わりに並ぶはずだ。
菓子は多めに用意してあるので、貰いそこねることはまずないのだが、なにを焦ったのか、原山さん宅のケンゴくんが、川口さん宅のシュウくんと今崎さん宅のモトキくんの間に割り込んだ。瞬間、わたしの隣にいた永沢さん宅のお父さんが猛然と飛び出し、
「ミーン、ミーン」
蝉の鳴き真似をしながらケンゴくんを殴り始めた。暑さにやられて頭がおかしくなったらしい。
子供たちも、保護者一同も、誰もケンゴくんを助けようとしない。ケンゴくんを殴れば殴るほど、蝉の鳴き真似をすればするほど、永沢パパの外見は蝉に近づいていく。
「ミーン、ミーン」
やかましい鳴き声を聞いているうちに、気分が悪くなってきた。菓子を配る役は他の保護者に任せることに決め、わたしは一人広場を後にした。
自宅までは遠く、帰り着くまでに倒れてしまいそうだ。路線バスに頼ろう。そう方針を決定した直後、
「ミーン、ミーン」
黒っぽい肉塊を引きずりながら、最早蝉そのものとなった永沢パパが猛然とわたしを追い抜いていった。肉塊は、元を辿ればケンゴくんだろうか。永沢さん、流石はまだ三十代だけあって、体力がある。
幸運にも、一分少々待っただけでバスに乗れたが、車内でわたしは憂鬱だった。なぜならば、明日から妻は、息子のために弁当を作らなければならない。
良案はないかと思案しているうちに、わたしが乗車してから四つ目の停留所にバスは停車した。乗車口のドアが開き、乗り込んできたのは、二足歩行するアカウミガメ。わたしの他には二人しか乗っていないにもかかわらず、わたしの隣に座ったかと思うと、
「ふいー、間に合った」
尻の穴から丸いものを大量に吐き出し始めた。わたしは眉をひそめたが、よくよく見てみると、丸いものは卵でも糞でもない。タレが絡んだ肉団子だ。
子供は甘辛い味が好きだから、息子の弁当のおかずにぴったりかもしれない。静かな喜びが胸を満たしたが、長続きはしなかった。
肉団子はアカウミガメが排泄したものだ。所有権はアカウミガメにあるに決まっている。
水難事故で亡くなった川崎さん宅のタクミくんと、友人関係を苦に飛び降り自殺した高本さん宅のミユちゃんも、遺体の状態で本日のラジオ体操に参加している。夏場なので腐敗の進行が速く、タクミくんとミユちゃんは最早タクミくんとミユちゃんではなく、蛆が湧き、蠅がたかった巨大な腐肉だ。二人を広場まで運んできたのは彼らの両親だが、今は広場にはいない。菓子を受け取る時になれば再び現れるだろう。
かったるい時間が緩慢に流れ、今夏最後のラジオ体操が終わった。わたしを含む保護者は菓子の準備をし、子供たちは菓子を受け取るために列を作った。タクミくんとミユちゃんは並んでいない。彼らの両親がやって来れば彼らの代わりに並ぶはずだ。
菓子は多めに用意してあるので、貰いそこねることはまずないのだが、なにを焦ったのか、原山さん宅のケンゴくんが、川口さん宅のシュウくんと今崎さん宅のモトキくんの間に割り込んだ。瞬間、わたしの隣にいた永沢さん宅のお父さんが猛然と飛び出し、
「ミーン、ミーン」
蝉の鳴き真似をしながらケンゴくんを殴り始めた。暑さにやられて頭がおかしくなったらしい。
子供たちも、保護者一同も、誰もケンゴくんを助けようとしない。ケンゴくんを殴れば殴るほど、蝉の鳴き真似をすればするほど、永沢パパの外見は蝉に近づいていく。
「ミーン、ミーン」
やかましい鳴き声を聞いているうちに、気分が悪くなってきた。菓子を配る役は他の保護者に任せることに決め、わたしは一人広場を後にした。
自宅までは遠く、帰り着くまでに倒れてしまいそうだ。路線バスに頼ろう。そう方針を決定した直後、
「ミーン、ミーン」
黒っぽい肉塊を引きずりながら、最早蝉そのものとなった永沢パパが猛然とわたしを追い抜いていった。肉塊は、元を辿ればケンゴくんだろうか。永沢さん、流石はまだ三十代だけあって、体力がある。
幸運にも、一分少々待っただけでバスに乗れたが、車内でわたしは憂鬱だった。なぜならば、明日から妻は、息子のために弁当を作らなければならない。
良案はないかと思案しているうちに、わたしが乗車してから四つ目の停留所にバスは停車した。乗車口のドアが開き、乗り込んできたのは、二足歩行するアカウミガメ。わたしの他には二人しか乗っていないにもかかわらず、わたしの隣に座ったかと思うと、
「ふいー、間に合った」
尻の穴から丸いものを大量に吐き出し始めた。わたしは眉をひそめたが、よくよく見てみると、丸いものは卵でも糞でもない。タレが絡んだ肉団子だ。
子供は甘辛い味が好きだから、息子の弁当のおかずにぴったりかもしれない。静かな喜びが胸を満たしたが、長続きはしなかった。
肉団子はアカウミガメが排泄したものだ。所有権はアカウミガメにあるに決まっている。
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