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第二部
第五章:03
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場所を移り、ふたたび木立の中に身を潜める。
やはり、大改人の実力はおそるべきものだ。先ほどのシターテ・ル一体にさえ
ふたりがかりでどうにか退けたのだ。それが、二体。
「……さて、なにかいい考えはあるか?」
「生憎、品切れだ」
地に伏せながら、ささやきあう。
アルカーの方もいいアイディアはないようだ。
まさに打つ手なし、というべきだ。
「……シターテ・ルを仕留め損なったのは痛いが、ここは逃げの一手だな」
「……そうだな」
流石に、大改人二体を相手取っての大立ち回りをするには、
消耗しすぎているし、事前準備も足りない。
幸い、旅客機も既に静岡に入り安全圏だ。付近に人里もない。
やはりここは退くべきだろう。
「……既にPCPや偵察班は撤退させている。あとは俺たちが
逃げるだけだ」
「――どこに逃げようというのですかな?」
ばっ、と身を翻して飛びのく。一瞬おくれてその場を黒い靄が覆う。
靄がはれたあとは、草木が枯れてしおれていた。
……あの髑髏型大改人だ。どうやら、見つかったらしい。
「情けないのではありませんかぁ?
英雄二人が、こそこそと隠れ逃げ惑って!」
「好き勝手いってくれる……」
厭らしい嫌味にぼやく。そして腕をあげ、後ろから振りおろされた
鬼型大改人の一撃を圧しとめる。
「ぐぁッ……!」
「ノー・フェイス……ッ!」
ひざが曲がり、地面につく。いや――埋まる。
ただの力まかせの一撃だが、それがなにより重い。
「さすがに受け止めるか、フェイスの裏切り者よ。
だが――このオレと、力比べをしようなどと、
笑止千万!!」
ぎりぎりと押し込まれていく。逃れようにも地面と大改人の腕に
圧し挟まれて、身動きが取れない。
「このッ……!」
「おおっと、させませんよ?」
カットに入ろうとしたアルカーだが、髑髏型大改人がそれを抑える。
どちらも隙あらばこちらに介入しようとしているが、
互いにそれを許さない。
こちらは、こちらでしのぐしかない。
「ぬぅぅぅぅぅぅん……ッッッ!!」
「くぁッ……!!」
徐々に圧しこまれるが、なんとか"力ある言葉"を発動。
全身から雷撃を放散させ、大改人の動きを封じ込める。
「"ライトニング・バースト"ッ!」
「ぐぬッ……!」
一瞬身体が固まったその隙に、身体を回転させ低空からまわし蹴りを
そのわき腹に炸裂させる。
(……なんという分厚さだ!)
まるでびくともしない。タイヤを幾重にも圧縮したような感触だ。
足をとられるまえに反動で飛び退る。
アルカーと背中合わせに立つ。
大改人に囲まれた形になってしまった。
「……ようやく相まみえたのだ。
連れないことを考えないで欲しいものだ」
「さきほどまでは女性を二人がかりでいじめていたのです。
同じことをしかえされても、文句は言えないでしょう……?」
「……まったくだな」
戦いの基本は数で抑えることだ。同等以上の力を持つ相手に
やりかえされると、えげつない。
じり、と土を踏みしめる。互いに機を読みあい、無言で相手の動きを
牽制する。その所作からは、歴戦の戦士であることがうかがえる。
(……こちらは相手のことを知らないが、向こうはこちらの
手の内を知り尽くしている。厄介だな……)
やりようはある。
倒れこむような前傾姿勢になり、鬼型大改人に突進する。
相手はまっこうから受け止める算段のようだ。両手を広げ、
待ち受ける。
つかみ合う一瞬手前、膝に力を抜き地面に沈む。
地に着けた手を軸にして足払い。当然読まれており、飛び上がって
避けた上にその足を踏みつけようとしてくる。
「"ライトニング・ムーヴ"ッ!」
ぱりっ、と火花が散りその股下を瞬時に潜り抜ける。
踏みつけようとした足を手で掴み、そのまま引きずろうと――
「――惜しかったな」
――足は、びくともうごかない。見れば腕に生えた棘がのびて
地面につきささっている。これも読まれていたらしい。
サッカーボールを蹴るように、握った足を振りあげられ吹き飛ばされる。
樹木を何本もなぎたおしてバウンドし、なんとか受身をして立ち上がる。
「"ライトニング・ムーヴ"ッッ!!」
間髪いれず"力ある言葉"でスライド移動する。
追撃していた鬼型改人の足刀蹴りが、腕の表皮をわずかに削いだ。
「よくぞかわしたッ!」
賞賛しながらも連撃を止めることはない。矢継ぎ早に手が、足が
肘うちが飛んでくる。受け止めることができないのは、すでにわかっている。
とにかく、かわすしかない。
「ちぃッ……!」
見た目の鈍重さに反して、早い。シターテ・ルのような
目にも留まらぬ速さではないが、次にどこへ動けばいいのか
瞬時に決断しなければならない『時間』的な早さを持っている。
(アルカーは……ッ!)
戦っているのは自分ひとりではない。アルカーの動きも気になるが、
生憎あの髑髏型大改人が黒い靄を大量に発生させて煙幕にしている。
おそらく、改人どもには相手の様子がわかっているのだろう。
こちらだけ連携を断たれた状態だ。
(手ごわい……!)
ノー・フェイスも避けてばかりではない。間隙をぬって反撃をしかけるも、
ほとんどダメージが通った様子がない。数mの鋼鉄をひしゃげさせる
一撃も、かすり傷にしかならないようだ。
(……まるで、アルカーの力を手に入れる前のようだな……)
なんどもなんども立ち塞がってくる。悪夢のような連中だ。
いや、まさしく悪夢だ。人々にとって、理不尽に搾取するこいつらは、
悪夢以外のなにものでもない。
(そうだ。アルカーの力を手に入れる前と、何もかわらん。
倒さねば守ることもできん。なら、怯んでどうする!)
じりじりと下がっていた足を、あえて前に突き出す。
ある意味では無謀な無策によるものだが、かえってテンポを乱され
わずかに隙がうまれる。見逃すはずもない。
「"ジェネレイト・ボルト"ッッッ!!!」
相手の胸に押し付けた掌から、球電が移り、鬼型改人を拘束する。
雷光が激しく走りその重厚な肉体を縛り上げる。
「ぬぐッ……」
「"ボルト・クラッ"……」
「シェアァァァァァアッッッ!!」
発動しかけた"力ある言葉"を中止し、横手から飛んできた闇の塊を
危ういところで身を翻す。
「まったく……戦闘にしか取り得がない貴方が、油断ですか?
いや、あなたのことですから――まさか、"力ある言葉"を
受けてみたかった、などという気ではありませんかね?」
「……流石に、そのつもりはないが。
一撃ぐらいもらっても、どうということはあるまい」
改人どもが余裕綽々の態度で埃をはらう。
髑髏型を抑えていたはずのアルカーは……
「やってくれる……」
「――アルカーッ!」
信じられない光景だ。
あのアルカーが……全身を傷だらけにして、崩れ落ちている。
四肢のあちこちに靄が固まったような黒い結晶が張り付き、
動きを阻害しているようだ。
「戦いに、相性というものは大事ですよ。
特に我らのように、少数対少数の戦いではね」
髑髏型改人が薄く笑う。助けに行こうにも、鬼型が立ちはだかって
通してくれそうにない。
(くそ……!)
おそらく、髑髏型改人はアルカー対策に特化していたのだろう。かつての
ノー・フェイスがそうであったように、かつそれより遥かに高いレベルで。
鬼型改人は、ノー・フェイスを押さえるのが役目だった。
役割を分担していたつもりが、こちらを分断されていたようだ。
(一体一体が強いだけじゃない。こいつら、戦い慣れしている!)
連携も見事なものだ。こなれている。
実力も練度も高く、しかも一方的にこちらの情報を得ている。
あまりに不利だ。
これで、逃げる手もなくなった。
この強豪を前にして、傷ついたアルカーでは逃走しきれまい。
(……どうするか)
隙を見せずに思案する。第一試合は、こちらに失点だ。
挽回するには、普通のやり方ではだめだ。
アルカーもこちらを見て、どう対応すべきかあたりを見回している。
……。
「――おおおぉぉッッッ!!」
雄たけびをあげ、髑髏型大改人へ突撃する。
もう少しで手が届きそうなところで――横手から鬼型大改人が
肩口から体当たりされ、吹き飛ばされる。
飛ばされた先は――崖だ。
木々をなぎたおしながら、斜面を滑り落ちていく。
そしてノー・フェイスの姿は奈落の闇へと消えていった――。
・・・
「――ノー・フェイス!?」
アルカーが崖下に消えていったフェイスの裏切り者に声をかけるが、
夜の闇は沈黙して答えない。
「――ヤク・サ、何をしている! 追わんのか!」
「……迂闊に追えば、罠にはまるやもしれん
それよりは――」
落ちていった方向に警戒を払いながら、追跡せずこちらに振り向くヤク・サ。
ずいぶんと、相手を買ってるようだ。
ぐるりとまわしたヤク・サの視線につられ、アルカーを見る。
確かに、一人一人確実にしとめていくほうがいい。
「……ッ……」
あわれにも孤立したアルカーが、たじろぐ。
無能な仲間を信頼などするから、いざというときにこうなる。
所詮、仲間などというものは目的を果たすための駒だ。
その点、フェイスという駒ほど信頼できるものはない。
いくらでも使い捨てにできるのだから。
心の中で舌をだしつつ、獲物をしとめるため手にした杖を奮う。
「"ネブラ"……"ドムス"……"ツァオン"……」
"力ある目録"――擬似的な"力ある言葉"を発動し、
アルカーと自分たちの間に闇を生み出す。その闇の中から無数の槍を
射出するも、アルカーはきわどいところでかわしたようだ。
「――ちぃッ!!」
悪態をついて無様に逃げ出すアルカー。なんとも情けない。
こんな程度の相手に、苦労してきたというのか。
(おっと、いかんいかん……)
油断するのは、改人全体に言える悪い癖だ。気を引き締めなければ。
まずは、確実かつ迅速にアルカーをしとめる。
するすると滑るように走り、アルカーを追い込む。
回り込む形で追い立てるのはヤク・サだ。崖の方へと、誘導する。
一人対、二人。動きは大きく制限され、あっという間に壁際に
追い詰められるアルカー。なんとも、他愛ない。
「……まあ、よくも一人で戦い続けてきたとは思いますよ、アルカー。
しかし――貴方が相手取ってきたのは所詮、手駒の雑魚」
本当のフェイスダウンの戦力である改人、そして大改人の手にかかれば――
こんな、ものだ。
「く……うおぉぉぉッッ!!」
追い詰められ、アルカーがやぶれかぶれに空中に飛び上がり
逃れようとする。なんとも、往生際の悪いことだ。
"ライトニング・ムーヴ"があるノー・フェイスと違いアルカーは
空中での制御能力は低い。かえって的のようなものだ。
とどめをさそうと、杖をゆらめかせる。それにあわせてヤク・サが
足に力を入れ、大地を蹴って空高く跳躍を――
「う……む……!?」
「な……なに……!?」
――空高く跳躍を、できなかった。地面を離れたその身体は、ゆっくりと
少しずつ空中へ浮かび上がっていく。慌てて"力ある目録"を
発動させようと杖を動かそうとするが――その動きも、異様に鈍い。
あたりが、よどんでいる。
「こっ、これは――ステイシス・フィールド!?」
・・・
存外にあっさりと、この手にのってくれたものだ。
空中で体勢を整えながらアルカーは胸をなでおろしていた。
この位置からは、停滞波動発生装置も見える。電源ユニットを破壊され
機能は停止していたが、本体は無傷だ。
研究班に可能なら調査したい、と言われ残しておいたのが功を奏した。
電源を失ったにも関わらず、今は問題なく機能している。
――"雷の精霊"を電力源として。
ノー・フェイスはやられのではない。このステイシス・フィールドの
確保のため、わざと攻撃を受けあの場を離れたのだ。
アルカーもそれにあわせ、大改人たちを誘導した。そして発動の直前に
その発動範囲から逃れるため、空中へ退避した。
戦闘中にこの装置のことを思い出せたのも、アルカーの意図を
ノー・フェイスが汲めたのも僥倖だった。
なまじ普段フェイスたちをこき使っている分、侮りがあったのかもしれない。
こちらには都合のいいことだ。
停止した装置が、再稼動するなどと思っていなかったのだろう。
もろに稼動範囲にとらわれ、動きが鈍っている。
ノー・フェイスが"ライトニング・ムーヴ"でアルカーの傍に現れる。
何も言わずともこちらの意図を察してくれる、心強い相棒。
奴らは、アルカーとノー・フェイスの戦闘データを叩き込んでいた。
だが、どうやら一番肝心なことを知らなかったらしい。
このノー・フェイスという男のことを。
誰よりも頼りになるこの仮面とアルカーが集えば、
百人力だということを、知らなかったのだ。
お互いの腕をあわせ、雷と炎の力を融合させていく。
狙いは――大改人たちの中心。
"力ある言葉"を混ぜ合わせ、炎雷の渦を解き放つ。
「「アステリオス・ワールフレイムッッッ」」
炎と雷が荒れ狂う竜巻のような力の奔流が、大改人たちにむかい
一直線に突き進む!
あわてて髑髏型大改人が黒い靄を盾代わりに展開するが――
その靄を巻き込んで、貫く。
爆炎。
雷をともなった大爆発が、山中を包み込む。
ふたたびあたりに闇がもどってきたとき――大改人の姿は、どこにも見えなかった。
・・・
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