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2章 屋敷での生活
ある日の執事(ロセ視点)
しおりを挟む私は、子供の頃両親が死に、孤児院で暮らしているところをとある貴族に拾われた。何でも魔力量が多かったためらしい。
私が拾われた貴族は多くの執事を育てる家庭で、私にも教育を受けさせてくれた。お陰で皆が認めてくれる立派な執事になれたと思う。
そんな私に、ある出来事がおこる。何と、公爵様が私を雇いたいと言ったのだ。なんでも、五歳の娘に付ける執事を探していて、年が近くて優秀な私を雇おうと判断したらしい。誉められて嬉しかったが正直私には荷が重かった。普通、元平民が公爵家に仕えるなどあり得ないことだ。
まぁ、嫌ですとは言えず、流されるまま公爵家につかえることになった。それから暫く屋敷の構図と、するべき仕事を教わった。私が仕事を覚えるのが早すぎたのか、執事長が驚いていた。
そして公爵家に雇われてから一週間がたったあ頃、ついにつかえる日がやってきた。旦那様に案内されながら、自分が仕える主のことを考えていた。私が仕える主はティアーナ様と言うらしい。私が知る限りでは、公爵様には五歳の娘がいるが、お茶会や社交界では誰も見たことがないと言われていた。噂では、病弱で余り外に出られないとかなんとか・・・。
そんなことを考えていると、旦那様が立ち止まった。
「娘はこの部屋にいる。自慢じゃないが、良い子で聞き分けがよく、それにとても可愛くて笑った顔などまるで天使のよう・・・ごほんっ・・・まぁ、きっと仲良くやれるはずだ。これからよろしく頼む。」
そういって微笑みながら去っていった旦那様は、噂で聞く氷の宰相ではなく、一人の親の顔をしていた。
(・・・思いっきり自慢してたな。)
「はい、精一杯支えさせて頂きます。」
きっと、旦那様にこんな顔をさせる主はとてもいい人なのだろう。そんなことを考えながら、ドアをノックした。
「ティアーナお嬢様、お目覚めでしょうか。紅茶をお持ちいたしました。」
旦那様いわく、今は寝ているとのことだったので、モーニングティーを用意した。紅茶特有の渋みが少ない物を選んでみたが、気に入って頂けるだろうか・・・。
可愛らしい声の返事が聞こえたので入ることにする。
ドアを開けた私は、ベッドに横たわっている少女を見て、一瞬息をするのを忘れてしまった。今まで生きてきて、これ程美しい人に会っただろうか。
澄みわたる空のような青色の瞳、朝日を浴びて輝く銀髪、その髪が光を反射してキラキラと辺りを照らしている姿は、神々しくさえ見えた。これからこの人に仕えるのだと思うと、とても緊張する。 無事に挨拶を終えると、ティアーナ様は笑顔で返してくれて、少し緊張が解れた。
それから少し黙りこんだティアーナ様は、私に余り堅苦しくしなくて良いと仰ったのだ。しかも愛称で呼ぶようにと上目遣いでお願いしてくる姿をみて、断れる男がいるのだろうか。いや、いないだろう。
そうして私は、敬語は変えられないことを伝え、二人の時は堅苦しくしないと約束した。あの時ティア・・・ティナ様が見せた笑顔は反則だと思う。
こうして私とティナ様は出会った。
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