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本編
第078話 魔煌石を巡る攻防(北の陣)⑥
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新月の闇夜に現れた炎の竜。それはさながらこの夜の支配者の如き圧倒的な存在感を放ち、見る者に思わず畏怖の念を抱かせてしまう存在であった。
炎型変換。
それは業火の狩人の周囲にある魔力の流れを操作することにより、人型から別の形態へと変換させるものだ。
これはリーナが習得している「魔力操作」のスキルを土台にしており、このスキルを遠隔的に、既に外界に現れているイフリートという「魔法」に施すことで成されている。
リーナと同じ職種である魔術師は、魔力操作のスキルを習得している者は少なくない。しかしながら、通常、外界に事象として発生している魔法を直接作用させることはしないケースがほとんどだ。何故なら、結果として現れている魔法に後付けすることは「意味がない」との認識が一般的であるためだ。
それは例えば杖から射出された「火球」の形を変形させることと同じことで、それは魔力の流れを意図的に術者が変えることを意味する。
それは余計な力を加えることになるため、単純に術を放つ以上に術者への負担が増える。
また、射出された攻撃魔法は、それこそ一瞬で相手に届く。つまり、後付けで放った魔法の形を変えるのは、技術的にも相当なレベルが要求されるのだ。
負担が増加し、高い技量が要求される――そのため、「無意味」と言われる技巧。
だが、リーナの持つイフリートは、通常の魔法とは一線を画す例外的な特性を有している。
それは「比較的長時間、場に留まることができる」という特性である。
イフリートは相手から消し飛ばされる、または術者が解除することでその効果が終了する。
そのため、火球に代表されるような「撃てば終わり」の単発的な魔法とは異なり、その発動にかかる効果時間が一定程度持続している。
この点に着目したリーナは、その魔法の特性を生かすために「後付け」の技術を磨いた。
その過程で「魔力操作」のスキルも10の大台を突破し、さらに効率的にイフリートの形態を変換させることも可能になった。
今では竜の他にも幾つかの形態変換に成功している。
「ド、ドラゴン……!? いや! けれどもまだ一体に変わりは――」
上空に現れた竜形態のイフリートを仰ぎ見たゼータは、その表情を驚愕に染めながらもまだ自身の方が形勢的に有利であると判断する。
だが、リーナのターンは未だ終わりを告げていない。
「装填――千和雷槍」
黒ちゃん・顎を上空に浮かぶイフリートに向けて掲げたリーナは、自らの魔法適性の一つたる雷系統魔法「千和雷槍」を既に発動させている火系統魔法「業火の狩人」に混ぜ込む。
火系統魔法と雷系統魔法の混合魔法。
発動時に異なる魔法を併せることを複合魔法と呼ぶ一方、既に発動している魔法に別系統の魔法を加えることを混合魔法と呼ぶ。
混合魔法として成立させるためには、魔法の効果時間や魔法同士の相性を予め認識した上で、その効果時間内に魔力を練り上げ、発動させる必要がある。
そのため、混合魔法は複合魔法に比べて難易度が高い。
「ギィギャアアアアァァァッ!」
リーナが魔法名を唱えると同時、竜形態のイフリートが咆哮と共にその両翼を大きく広げた。
次いで彼の目の前に五つの火球が浮かぶ。やがてその火球はバチバチと雷を纏いながら槍の形へとその姿を変える。
「――射て」
端的に告げられたリーナの言葉を合図に、雷を纏った炎の槍がゼータに向けて発射される。
「ぐあ゛あ゛あ゛あああぁぁぁっ!!!」
直後、落雷時の轟音が辺りに響き、大地がわずかに揺れる。放たれた槍は全く同じタイミングでゼータを貫き、その灼熱の炎で瞬く間に消し炭へと変えた。
場に並んでいたゼータ、その分体を含めた全てを焼き尽くしたリーナは、イフリートの魔法を解除し、軽く安堵の息を吐く。
「ふぅ……少々やり過ぎた感は否めませんが、敵を無事に倒せたことですし、まぁ結果オーライとしましょう。それよりも、一足先に奥へと向かったアリアは大丈夫でしょうか。兄さんの方も気になりますが、まずはアリアの方に向かうとしましょう」
立ち止まって考えをまとめたリーナは、疲れた様子もなくさっさと移動を開始する。
「……彼女は一体、何者なんだ……?」
やや離れた場所で事の一部始終を見た萩は、ただリーナの圧倒的なまでの強さに、そう呟くことしか出来なかった。
炎型変換。
それは業火の狩人の周囲にある魔力の流れを操作することにより、人型から別の形態へと変換させるものだ。
これはリーナが習得している「魔力操作」のスキルを土台にしており、このスキルを遠隔的に、既に外界に現れているイフリートという「魔法」に施すことで成されている。
リーナと同じ職種である魔術師は、魔力操作のスキルを習得している者は少なくない。しかしながら、通常、外界に事象として発生している魔法を直接作用させることはしないケースがほとんどだ。何故なら、結果として現れている魔法に後付けすることは「意味がない」との認識が一般的であるためだ。
それは例えば杖から射出された「火球」の形を変形させることと同じことで、それは魔力の流れを意図的に術者が変えることを意味する。
それは余計な力を加えることになるため、単純に術を放つ以上に術者への負担が増える。
また、射出された攻撃魔法は、それこそ一瞬で相手に届く。つまり、後付けで放った魔法の形を変えるのは、技術的にも相当なレベルが要求されるのだ。
負担が増加し、高い技量が要求される――そのため、「無意味」と言われる技巧。
だが、リーナの持つイフリートは、通常の魔法とは一線を画す例外的な特性を有している。
それは「比較的長時間、場に留まることができる」という特性である。
イフリートは相手から消し飛ばされる、または術者が解除することでその効果が終了する。
そのため、火球に代表されるような「撃てば終わり」の単発的な魔法とは異なり、その発動にかかる効果時間が一定程度持続している。
この点に着目したリーナは、その魔法の特性を生かすために「後付け」の技術を磨いた。
その過程で「魔力操作」のスキルも10の大台を突破し、さらに効率的にイフリートの形態を変換させることも可能になった。
今では竜の他にも幾つかの形態変換に成功している。
「ド、ドラゴン……!? いや! けれどもまだ一体に変わりは――」
上空に現れた竜形態のイフリートを仰ぎ見たゼータは、その表情を驚愕に染めながらもまだ自身の方が形勢的に有利であると判断する。
だが、リーナのターンは未だ終わりを告げていない。
「装填――千和雷槍」
黒ちゃん・顎を上空に浮かぶイフリートに向けて掲げたリーナは、自らの魔法適性の一つたる雷系統魔法「千和雷槍」を既に発動させている火系統魔法「業火の狩人」に混ぜ込む。
火系統魔法と雷系統魔法の混合魔法。
発動時に異なる魔法を併せることを複合魔法と呼ぶ一方、既に発動している魔法に別系統の魔法を加えることを混合魔法と呼ぶ。
混合魔法として成立させるためには、魔法の効果時間や魔法同士の相性を予め認識した上で、その効果時間内に魔力を練り上げ、発動させる必要がある。
そのため、混合魔法は複合魔法に比べて難易度が高い。
「ギィギャアアアアァァァッ!」
リーナが魔法名を唱えると同時、竜形態のイフリートが咆哮と共にその両翼を大きく広げた。
次いで彼の目の前に五つの火球が浮かぶ。やがてその火球はバチバチと雷を纏いながら槍の形へとその姿を変える。
「――射て」
端的に告げられたリーナの言葉を合図に、雷を纏った炎の槍がゼータに向けて発射される。
「ぐあ゛あ゛あ゛あああぁぁぁっ!!!」
直後、落雷時の轟音が辺りに響き、大地がわずかに揺れる。放たれた槍は全く同じタイミングでゼータを貫き、その灼熱の炎で瞬く間に消し炭へと変えた。
場に並んでいたゼータ、その分体を含めた全てを焼き尽くしたリーナは、イフリートの魔法を解除し、軽く安堵の息を吐く。
「ふぅ……少々やり過ぎた感は否めませんが、敵を無事に倒せたことですし、まぁ結果オーライとしましょう。それよりも、一足先に奥へと向かったアリアは大丈夫でしょうか。兄さんの方も気になりますが、まずはアリアの方に向かうとしましょう」
立ち止まって考えをまとめたリーナは、疲れた様子もなくさっさと移動を開始する。
「……彼女は一体、何者なんだ……?」
やや離れた場所で事の一部始終を見た萩は、ただリーナの圧倒的なまでの強さに、そう呟くことしか出来なかった。
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