黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

文字の大きさ
78 / 129
本編

第077話 魔煌石を巡る攻防(北の陣)⑤

しおりを挟む
「幻影……と判断するのは早計でしょうね」
 イフリートの後方から並ぶゼータを見たリーナは、わずかに余裕を取り戻した相手の表情からそう結論づける。
「あら、意外と冷静なのね? 普通は驚いて戦意を喪失するか、幻だとか言って虚勢を張るものなのだけれど」
 並ぶ五体のマンイーター、そのうちの一体が微笑を湛えながらリーナの発言に反応を示す。
「そう? 私からすれば、5人に増えたところでやることは変わらないから別にどうでもいいのだけれど。それに、忘れたの? 貴女は所詮『喰人木マンイーター』。その本質が植物である以上、イフリートとの相性は覆しようがない」
「……さぁ、それはどうかしら?」
 もっともなリーナの指摘であったが、それを受けてもなおゼータの表情に変化は見られなかった。
「行きなさい」
 余裕の態度を崩さない相手に、リーナは一瞬訝しむ表情を浮かべたものの、すぐに気を取り直してイフリートへ指示を飛ばす。
「ゴアアアアァァァッ!」
 リーナの指示を受けたイフリートは、すぐに手近のゼータに接近し、その右手を彼女の顔に押し当てる。
 灼熱の右手は瞬く間に相手の身体を炎に包み、数分と経たずに消し炭へと変えた。
 ――残るは四体。消し炭に変えた相手を一瞥したイフリートは、すぐにその瞳をまた別のゼータに移して

 違和感に襲われる。

「なっ――!?」
 その違和感は指示を出したリーナもまた抱いていた。
「「「「「ふふっ。気がついた…?」」」」」
 そう。先ほどイフリートによって倒され、残るは四体になったはずのゼータであったが……
「5体に戻っている……?」
 そう。このリーナの呟きが示す通り、減っているはずの相手の数が戻っていたのだ。
「あはははっ! 残念だったわね。確かに貴女のその人型の炎イフリートと私とは相性最悪の組み合わせであることは間違いない。けれど、所詮は一体。分体を作り出せる私の方が数では上よ。それに、分体とは言ってもそれは単なる傀儡ではない。それぞれが思考し、攻撃・防御・補助を担える。だから、こんなことも可能なの……よ!」
 ゼータが言い終わるや否や、発言した個体とは別の二個体が太い枝をイフリートを迂回するように操作して挟み込む形でリーナへ直接攻撃を仕掛ける。
「チィッ!」
 左右から襲い来る木の鞭に、リーナは舌打ちしながらステップを刻んで回避する。
「さあさあさあっ! チマチマと一体ずつ燃やす間、貴女自身は私の攻撃を耐え忍ぶことごできるかしら? 言っておくけれど、分体の生成はさほど時間はかからないわよ? それはさっきので理解してもらえたと思うけれど、ね!」
「くっ!?」
 右下から切り上げるように放たれる木の鞭を、リーナは身体を捻ることで辛うじて躱す。その際、目算を誤ったのか、鞭が頬を擦り、わずかに血が滲んだ。
「あぁ……いいわぁ~、乙女の血って、どうしてこう唆られる・・・・のかしら。私の邪魔をしてくれた御礼も兼ねて、ゆっくりじっくり――嬲ってあげる」
「変態が……!」
 ゾクゾクと恍惚の表情を浮かべてリーナを見ながら話すゼータに、彼女はギリッと奥歯を噛みながら短く言葉を返す。その間も次々と襲い来る鞭を「魔闘技」のスキルで向上させた身体能力で回避したり、手にする黒杖を用いながら受け流したりと奮闘するものの、攻撃に転じることは出来ず、戦いの趨勢は徐々に不利なものとなっていった。
「ほらほらほら! 先ほどまでの威勢はどうしたのかしら? 防戦一方で歯応えが無くなってきてるわよ!」
 イフリートはリーナの指示通り、ゼータへ攻撃を仕掛けてはいる。だが、それを上回るスピードでゼータが分体の生成してしまうため、もはや焼け石に水の状態だ。
「君っ! ここは俺が――!」
 じりじりと追い込まれていくリーナを見かねた萩が声をかけて助力を申し出る。
 確かにこの状況下では動ける人員が多いことに越したことはない、ならば……とその申し出を受けるのが常識的な判断だろう。
 しかしながら、黒杖を振るって襲い来る鞭を弾き返したリーナは、萩の方を一瞥することすらなく
「結構です。貴方が戦線に加わったところであの分体の生成を上回る攻撃を仕掛けられる見込みは無い。相手は5体と数そのものは少ないですが、非常に連携が取れている。攻撃の間隔がわずかでも開けば、即座に新たな分体が生成されるでしょうね」
「な、ならどうするんだ!? このままだとジリ貧だぞ!」
 申し出を断られた萩は、驚きながらややキツい口調でリーナに問いただす。その言葉に、チラリとゼータの余裕そうな顔を垣間見た彼女は、
「そうですね……一体ずつ確実に燃やして潰すのが無理なら」
 薙ぐように放たれた鞭を飛び退いて回避し、続く言葉を口にする。

「――全てを同時に・・・・・・燃やしてしまえばいい」
「……は?」
 そのあまりに無茶苦茶なリーナの回答に、萩はポカンと呆けた顔を見せる。しかし、彼女は何も「破れかぶれ」でそのような答えを出したワケではない。

「――イフリート、炎型変換フレイムコンバート

 紡がれたリーナの言葉に、イフリートのその緑色の瞳がキラリと光を帯びる。
「――竜ノ型タイプ・ドラゴン
 カツン、と黒杖を鳴らして告げられた言葉を契機に、イフリートを中心とした炎柱が噴き上がる。
 やがてその噴き上がる炎が収まった時、

「ギィアアアアアアアアアァァァッッッ!」

 夜空に炎の竜が姿を現し、地を揺るがす咆哮を上げた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。  睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?  そんな男の二重生活の冒険譚です。  毎週水曜日午後8時に投稿予定です。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...