黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第107話 当主会談と御神木、そして乱入者約一名⑧

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「ククッ……本当にそう思うのか?」
「なんだと?」
 ツグナの言葉に、尊琉は不快そうに眉根を寄せてその本意を問いただす。

「道具は所詮道具ってことだ。持ち主の力量が足らなければ、そいつはただの宝の持ち腐れってヤツでしかないんだよ」
「この……この期に及んでもまだ減らず口を叩くってのか? オイ、侮辱するのも大概にしておけよ? お前の得物を寄越せば許してやろうかと思ったがもう――」
 ピキリと青筋を立てて反論する尊琉に、ツグナは不敵な笑みを浮かべながらただ呟く。

「なら――再教育の時間だ。お前のそのひん曲がった性根、徹底的に叩き直してやるよ」

 ツグナは吠えるように告げるや否や、再び魔闘技を発動させた状態で駆け出す。
「行くぜオラァ! ――夢幻燈火っ!」

 弾丸の如き速さで疾駆するツグナは、その速度を維持しつつ魔闘技の派生技能である夢幻燈火を発動させる。直後、彼の周囲に同じ姿をした数体の幻影が現れ、入り乱れるように縦横無尽に駆け回る。

「くっ!? コイツ、また性懲りもなく……っ!」

 突如として現れたツグナの幻影に、対する尊琉は苦々しげに呟く。

「だが、いくら数が増えようとも遠距離からの攻撃手段に乏しいお前に何が――」
「『何ができる』ってか? おいおい、あんまり下手なこと言うもんじゃないぜ? 相手の力量を見誤ると痛い思いをするのは自分だぞ?」
「クソッ! このぉっ!」
 不意に背後に現れたツグナに、尊琉は怒りに任せて太陰で薙ぎ払う。その黒刀は彼の胴を真っ二つに切り裂いたものの、相手の姿は切り払われると同時に流れ落ちる砂のように細かい粒子となって虚空へと消える。
「幻影か! クソッ!」
 頭に血が上った尊琉は、苦虫を噛み潰した表情を浮かべながら悪態をついた。

 幻影の一体を失ったものの、ツグナの表情に焦りの色は浮かばない。いや、むしろ先ほどまでの手詰まり感が嘘のように、余裕のある笑みまで浮かべている。

「――さて、ここで問題だ。対人戦、しかも相手とは初対面……そんなとき、まず始めにすることとは何だと思う?」
 場に展開する幻影と共に疾駆し、尊琉の意識を分散させながらツグナは問いかける。
「はっ? 一体何を……」

 自身のペースを夢幻燈火によって崩され、翻弄される尊琉。纏わりつくように周囲を動き回るツグナの幻影に対し、白と黒の刀を振り回すその顔には焦燥の色がありありと見て取れ、余裕の無いことが容易に想像できる。

「……時間切れ。答えは『観察』だ。相手の得物、技、特性……それだけじゃない。相手のコンディションや癖なんかも情報として持っておく必要がある。それもある程度の確度のある情報を、だ。人間同士の戦いなんざ、突き詰めれば『騙し合い』だからな」
「な、なん――」

 紡がれたツグナの言葉に反応した尊琉は、辺りを見回してハッと気づく。いつの間にか視界のあちこちにチラついていた幻影の姿が消え、やや距離を置いた場所に刀を担ぐようにして構える相手の姿に。
 息が上がり、荒い息を吐きながら肩を忙しなく動かす尊琉であったが、幻影が焼失したことに再び口の端を吊り上げる。
「ハハッ……そういうお前もどうやら策が尽きたか? 幻影が消え、本体のみとなった今、お前に残されたのは――」
「斬撃を飛ばすだけってか? 確かにそれもお前をブチのめす手段の一つだ。ただ……誰が飛ばせるのは一つだけ・・・・・・・・・・って言った?」

 不敵な笑みとともに、ツグナはスッと担いでいた刀を下げて告げる。
「なっ――!? ハッタリもいい加減に……」
 目を見開いて驚きつつも、なんとか反論する尊琉に、対峙するツグナはさらに言葉を続ける。

「ハッタリかどうか……見せてやるよ。複合技――桜花繚乱」

 紡ぎ、そして刀を振るうツグナ――虚空に幾度となく刻まれる黒刀から、夥しい量の斬撃が尊琉目がけて飛来する。
「こぉのおおおおおおぉぉぉっ!」
 襲い来る多数の斬撃に、尊琉は相討ちを覚悟で太陰の刃を伸ばす。
 黒刀「太陰」の特性である延伸の効果により、数十メートルにも伸びた刀身がツグナに向かって振り下ろされる。

 だが、
「あぁ、そうそう。言い忘れてたわ」
 太陰の伸びた刃がツグナの身体を両断せんとしたその時、彼の口がわずかに開く。

「幻影をすべて消した……とも俺は言ってないぜ? 言っただろ? 対人戦は『騙し合い』だってな……」
 伸びた太陰の刃は確かにツグナを捉えた。しかしながら、その切り裂かれたはずの相手は細かな粒子となって溶けるように消え去る。
 直後、全身に何度も強い衝撃が走り、尊琉の意識はブラックアウトした。

「――……安心しな。手心は加えてやったからな」
 だらしなく四肢を投げ出して倒れ伏せる尊琉に向けてツグナはカチン、と唾を鳴らして納刀しながら言葉をかける。

「しょ、勝者――佐伯継那っ!」

 ハッと我を取り戻した健介が試合の終了を告げたのは、ツグナが呟いてからしばしの間を置いてからであった。
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