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本編
第106話 当主会談と御神木、そして乱入者約一名⑦
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「はあああああっ! 来い! 太白、太陰っ!」
開始の合図直後、まず動いたのは尊琉の方からであった。彼はその両手に札を持ち、掛け声と共に術式を発動させる。
彼の呼び声により札から現れたのは、右に白い炎でできた狐と左に黒い炎でできた狐だ。顕現した二匹の狐は、一度大きな遠吠えを響かせると、くるりとその身を丸める。
すると瞬く間に白と黒の狐は同色の一対の刀へとその姿を変え、尊琉の手に収まった。
「行くぞ! ――はっ!」
白き刀「太白」、黒き刀「太陰」を握り締めた尊琉は、一気に彼我の差を詰めて右手に持つ太白の刃をツグナ目がけて振り下ろす。
振り下ろされる刃に、すでに鞘から欄顎樟刀を抜いていたツグナは、その刃を受け止めようと構え――たのだが、
「――っ!?」
その迫る刃が得物をすり抜けた瞬間、即座に頭をわずかに右に傾けて刃の直撃を避け、身を捻って緊急回避する。白刃が頬の数センチ上を通過する際、チリッと炎で炙るような熱がツグナの身体を撫でた。
直後の切り返しを避けるために後方に逃れたツグナは、深く息を吐きながら相手を真正面に捉える。
「チィッ! 早々にケリをつけようと思ったんだが……すばしっこいヤツめ」
攻撃が空振りに終わったことに、尊琉は舌打ちをしてツグナに声をかける。
「そりゃどうもっ!」
掛けられた言葉に、ツグナは一応の返事をしつつも、頭では「さてどうしようか」と攻略の糸口を探ろうと思考を巡らせる。
(刃がすり抜けた、だと? おいおい、初見殺しにもほどがあるだろ。そしてあの熱……これがごく普通の刀だったらヤバかったぞ)
袖で左頬を拭いながら、ツグナは相手の得物の特性に見当をつけていく。
(おそらく、白い方は「透過」だな。んでもって……)
一旦思考を中断したツグナは、チャキッと刀を鳴らして柄を強く握りしめると、 魔闘技で素早く尊琉の右側、約10メートルほどの位置に移動したところで初めて攻勢に出る。
「これならどう、だ! ――桜花一閃っ!」
放ったのは彼の持つ刀術スキル、その中でも遠距離から仕掛けられる技でえある桜花一閃であった。欄顎樟刀を振り抜き、真っ直ぐ尊琉に放たれた三日月型の斬撃。
「くっ!? 生意気な!」
刀という近接戦闘に特化した武具による、遠距離からの攻撃。そのある意味意表を突く彼の技に、尊琉は手にした太白を振って防御する。
(っ! なるほどな……やっぱり透過の発動は術者の任意によるものか。なら、このまま遠距離から仕掛け続ければ……)
先ほどの攻撃で太白の特性と術者の尊琉が対応できる速度をある程度見切ったツグナは、頭の中で大まかな戦闘の流れを組み立てる。
だが――
「舐めるなよ、クソがぁっ!」
魔闘技で駆け回るツグナに対し、今度は尊琉がその黒刀――太陰を振り抜いた。瞬間、尊琉との距離を維持しながらも移動していたツグナを、刀身が伸びた刃が襲う。
「――っ!? チィッ!」
迫るその黒刃に対し、彼は身に添わせるように刀身の波紋が相手に見えるように平地で受け流す。刃と刃が擦れ、小さな火花が舞い、太陰の持つ熱がぶわりとツグナの肌を撫でる。
(こっちは「延伸」か! ったく、どっちも厄介な特性だなぁオイ!)
心中で舌打ちをして悪態をつけつつ、辛くも尊琉の攻撃を凌いだツグナであったが形勢は良いとは言い難い状況であった。
その主因は、やはり尊琉の持つ二振りの刀――太白と太陰の持つ特性にある。
任意で刃を透過させ、楯など相手の防御を無視して攻撃を与えることができる「太白」
刀という近接の武具でありながら、遠距離から攻撃を仕掛ることを可能にする「太陰」
まさに近接・遠隔の双方からアプローチできる尊琉の術式は、近接主体の攻撃手段しか持たないツグナにとっては非常に相性の悪い相手と言わざるを得ない。
「ハハッ! ほらほら、どうしたどうしたぁ! お前の特技は逃げるだけか? それとも、さっきの攻撃が精一杯の抵抗なのか? もしそうなら、お前のその手にしている刀で手打ちにしてやることもできるぞ?」
「あ゛ぁ? なんだと……?」
けらけらと笑いながら放たれた尊琉の言葉に、ツグナは眦を吊り上げて訊ねる。
「お前の刀……見るからに業物だろう。それを寄越せば楯突いたことは許してやろうということだ。この戦況を見れば分かるだろ? お前の攻撃はあの目障りな飛ぶ斬撃のみしか手段を持たない。だが、俺は違う。お前の防御は太白が無効化できるし、距離も太陰の能力で逃げ場はない。完全に詰んでるんだよ、お前は」
尊琉は大仰に笑いながらツグナに自らの優位性を突き付ける。確かに武具の特性や能力面から見た形勢は彼の方に天秤が傾くであろう。
だがしかし――
(ハッ、「詰んでる」か……まぁ端から見ればそう言えなくもない。実際ヤツの武具は厄介なことは変わりないしな。ただ、打つ手がないってワケじゃあない……こっちにだって手札はある)
太陰の攻撃を凌いだツグナは、わずかに口の端を持ち上げながら自らに残された手札を切った。
開始の合図直後、まず動いたのは尊琉の方からであった。彼はその両手に札を持ち、掛け声と共に術式を発動させる。
彼の呼び声により札から現れたのは、右に白い炎でできた狐と左に黒い炎でできた狐だ。顕現した二匹の狐は、一度大きな遠吠えを響かせると、くるりとその身を丸める。
すると瞬く間に白と黒の狐は同色の一対の刀へとその姿を変え、尊琉の手に収まった。
「行くぞ! ――はっ!」
白き刀「太白」、黒き刀「太陰」を握り締めた尊琉は、一気に彼我の差を詰めて右手に持つ太白の刃をツグナ目がけて振り下ろす。
振り下ろされる刃に、すでに鞘から欄顎樟刀を抜いていたツグナは、その刃を受け止めようと構え――たのだが、
「――っ!?」
その迫る刃が得物をすり抜けた瞬間、即座に頭をわずかに右に傾けて刃の直撃を避け、身を捻って緊急回避する。白刃が頬の数センチ上を通過する際、チリッと炎で炙るような熱がツグナの身体を撫でた。
直後の切り返しを避けるために後方に逃れたツグナは、深く息を吐きながら相手を真正面に捉える。
「チィッ! 早々にケリをつけようと思ったんだが……すばしっこいヤツめ」
攻撃が空振りに終わったことに、尊琉は舌打ちをしてツグナに声をかける。
「そりゃどうもっ!」
掛けられた言葉に、ツグナは一応の返事をしつつも、頭では「さてどうしようか」と攻略の糸口を探ろうと思考を巡らせる。
(刃がすり抜けた、だと? おいおい、初見殺しにもほどがあるだろ。そしてあの熱……これがごく普通の刀だったらヤバかったぞ)
袖で左頬を拭いながら、ツグナは相手の得物の特性に見当をつけていく。
(おそらく、白い方は「透過」だな。んでもって……)
一旦思考を中断したツグナは、チャキッと刀を鳴らして柄を強く握りしめると、 魔闘技で素早く尊琉の右側、約10メートルほどの位置に移動したところで初めて攻勢に出る。
「これならどう、だ! ――桜花一閃っ!」
放ったのは彼の持つ刀術スキル、その中でも遠距離から仕掛けられる技でえある桜花一閃であった。欄顎樟刀を振り抜き、真っ直ぐ尊琉に放たれた三日月型の斬撃。
「くっ!? 生意気な!」
刀という近接戦闘に特化した武具による、遠距離からの攻撃。そのある意味意表を突く彼の技に、尊琉は手にした太白を振って防御する。
(っ! なるほどな……やっぱり透過の発動は術者の任意によるものか。なら、このまま遠距離から仕掛け続ければ……)
先ほどの攻撃で太白の特性と術者の尊琉が対応できる速度をある程度見切ったツグナは、頭の中で大まかな戦闘の流れを組み立てる。
だが――
「舐めるなよ、クソがぁっ!」
魔闘技で駆け回るツグナに対し、今度は尊琉がその黒刀――太陰を振り抜いた。瞬間、尊琉との距離を維持しながらも移動していたツグナを、刀身が伸びた刃が襲う。
「――っ!? チィッ!」
迫るその黒刃に対し、彼は身に添わせるように刀身の波紋が相手に見えるように平地で受け流す。刃と刃が擦れ、小さな火花が舞い、太陰の持つ熱がぶわりとツグナの肌を撫でる。
(こっちは「延伸」か! ったく、どっちも厄介な特性だなぁオイ!)
心中で舌打ちをして悪態をつけつつ、辛くも尊琉の攻撃を凌いだツグナであったが形勢は良いとは言い難い状況であった。
その主因は、やはり尊琉の持つ二振りの刀――太白と太陰の持つ特性にある。
任意で刃を透過させ、楯など相手の防御を無視して攻撃を与えることができる「太白」
刀という近接の武具でありながら、遠距離から攻撃を仕掛ることを可能にする「太陰」
まさに近接・遠隔の双方からアプローチできる尊琉の術式は、近接主体の攻撃手段しか持たないツグナにとっては非常に相性の悪い相手と言わざるを得ない。
「ハハッ! ほらほら、どうしたどうしたぁ! お前の特技は逃げるだけか? それとも、さっきの攻撃が精一杯の抵抗なのか? もしそうなら、お前のその手にしている刀で手打ちにしてやることもできるぞ?」
「あ゛ぁ? なんだと……?」
けらけらと笑いながら放たれた尊琉の言葉に、ツグナは眦を吊り上げて訊ねる。
「お前の刀……見るからに業物だろう。それを寄越せば楯突いたことは許してやろうということだ。この戦況を見れば分かるだろ? お前の攻撃はあの目障りな飛ぶ斬撃のみしか手段を持たない。だが、俺は違う。お前の防御は太白が無効化できるし、距離も太陰の能力で逃げ場はない。完全に詰んでるんだよ、お前は」
尊琉は大仰に笑いながらツグナに自らの優位性を突き付ける。確かに武具の特性や能力面から見た形勢は彼の方に天秤が傾くであろう。
だがしかし――
(ハッ、「詰んでる」か……まぁ端から見ればそう言えなくもない。実際ヤツの武具は厄介なことは変わりないしな。ただ、打つ手がないってワケじゃあない……こっちにだって手札はある)
太陰の攻撃を凌いだツグナは、わずかに口の端を持ち上げながら自らに残された手札を切った。
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