黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

文字の大きさ
109 / 129
本編

第108話 Event & Invader①

しおりを挟む
 御水無瀬家当主との面会、そしてその後の地下修練場での尊琉との一戦を終えたツグナは、気絶した尊琉は棗たち御庭番に任せ、健介と魔煌石を持ち去っていった組織に関する情報を交換し、その日は帰途に着いた。

 こうしてようやく本当の意味で日常の生活へと戻った彼らだったが、それから数日後、今度は別の問題にブチ当たる。

「ふえええぇぇぇ~もぅ無理ィ~っ!」
 その日の放課後、食堂にソアラの悲鳴が響く。

「何弱気になっているのよ。ほら、まだ終わってないわよ? 試験まであと一週間なんだから!」
 半分涙目になりながら声を上げる彼女に、真向いの席からキリアの厳しい言葉が飛ぶ。
「ひぃぃぃ~っ」

 彼女らの頭を悩ませる問題――それは「中間試験」というまごうことなき悪夢の学校イベントである。白桜学院では試験一週間前から部活動は休止という措置を講じているため、放課後に仲の良い者同士が集まって勉強会を開催するのが学生たちの恒例となっている。

 部活動が休止となるのは生徒たちにとっては歓迎するべき措置かもしれないが、これは「生徒たちの学力を向上を図り、一定程度の進学率確保を目指し、もって次年度の新規入学者の増加に寄与するため」という、何とも大人な事情が絡んでいたりする。

 そうした背景から、ツグナたちも他の生徒たちと同様、食堂のテーブルにノートや教科書を広げて勉強に勤しんでいた。
 
(う~ん……改めて考えると凄い光景だな)
 
 女性陣の姦しい声を聞きながら、ツグナはぽつりとそんな言葉を胸中に呟く。異世界から来た妖精族キリア狐人族ソアラが教科書とノートを広げながら問題を解く姿は、彼にとっては何だか新鮮な感じがしてならなかった。

 転生前、十数年を地球で過ごしていたツグナにとってはもはやこの手のイベントは慣れたものだったが、ソアラやキリア、そしてリーナとアリアは初めてのことだ。

 もちろん、向こうの世界にも同じような教育機関はいくつか存在するため、こうしたテストそのものは彼女らも経験済みである。しかし、向こうとは異なり、こちらでは「魔法」に関する科目は当然ながら出題されることはない。

 そのため、いつもよりも殺気立った様子が窺い知れる。
「だから~、ここの式の分解は……」
「アリア、そこ手順間違えてる。ここの化学式は……」

 そんななか、勉強会を率いているのはキリアとリーナの魔術師組である。
 もともと「魔法」という事象改変を得意とするためなのか、二人は論理的思考力が高く、理数系の分野に強みを持っている。授業でもその知識と理解度は群を抜いており、時折教師から「君、先生役をやって」とお願いされることもあると本人たちは述べている。

 それを耳にした時――いや、仕事しろよ。 と彼が思ったのは間違いではないだろう。
 しかしながら、事実として生徒たちからの評判も良く、「またお願いしたい」とリピーターになる人が続出しているのだとか。

「「ひぃぃぃ……」」

 対するソアラとアリアは暗記系の社会科目に強い傾向があった。ただし、本当に「頭に詰め込む」ように勉強するため、その忘却速度も速い。
 その忘却速度はツグナの予想以上で、ソアラは特に小テストなどは「授業の予鈴が鳴ったら頭に叩き込み、テスト終了とともに記憶の彼方に忘却する」という離れ技を駆使して乗り切っている。

 まさに綱渡りとも言える勉強態度だが、こればかりは生来の気質にもよるため、「矯正は至難の業だな」とツグナやキリア、リーナは半ば諦めている節があるのはここだけの話だ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。  睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?  そんな男の二重生活の冒険譚です。  毎週水曜日午後8時に投稿予定です。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...