黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第083話 魔煌石を巡る攻防(南の陣) A part⑤

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(クソッ、こいつら……戦い慣れてやがる。連携にしても、言葉を交わさず、しかもその動きが仲間を阻害していない。こりゃあ警戒レベルを引き上げざるを得ないね……)

 それまでのどこか余裕のあった表情は消え失せ、大きく息を吐いたガンマは険しい顔でリルたちを見据える。
「カカカッ。それじゃあ……本気でいかせてもらうよ。絶技・影蜘蛛!」
 彼女の声に応じ、背後に伸びる影からカサカサと無数の黒い子蜘蛛が姿を現す。
「おいおい……一体何匹いるんだよ」
 離れた場所から眺めていた白兎が、引き攣った顔で声を漏らす。
「さぁね。イチイチ数えるのも面倒なくらい、とだけは言っておくよ。それに、影から出てきたあの黒い子蜘蛛……主の召喚する『蟲』と同じスキルを持っている」
「うげっ、蟲って……あの杖を使って呼び出す蟲か!? 確かあの蟲って、何でも喰っちまうんだろ?」
「悪食のスキルか。それにあの数……取りつかれたら瞬く間に終わりだな」
 フランの分析結果に青い顔で言葉を返す白兎に、戻って来たリルが横合いから口を挟む。
「二人とも正解。それにあの子蜘蛛は本体ガンマがいる限り増殖も可能というオマケ付きだ。だから、『雑魚敵をプチプチ潰せば何とか活路が――』って手法も無理だね」
「その前に私らの体力と魔力が持たないだろうがな」
「俺もあれだけの数を全てブチ抜くまでの弾数はないな」
 フランの補足情報にリルと白兎はややゲンナリしながら言葉を返す。
「それくらい言われなくても分かってるよ。だから、どうすればいいか――二人は分かってるでしょ?」
 ニィッと悪戯っぽい笑みを浮かべて訊ねるフランに、リルと白兎は互いに目配せしながら回答を口にする。

「「られる前に本体ヤツを叩く」」

「ザッツライト! ってなワケで、本体までの露払いは白兎、メインはリルの担当で頼むね。私はここを拠点化しておくよ――土塁壁っ!」
 フランが叫ぶと同時、周囲の土が盛り上がり、やがて四方を土の壁で覆う簡易的な拠点が構築される。
「しょうがない。ここはウチの分析官サマの言う通りにしておきますかね」
 結局いいように使われることにややテンションが下がる白兎であったが、現状としてそれが最も効果的だと認める他ないため、ガシガシと頭を掻きながらも不承不承受け入れる。
「確かにそれが最善手か。だが、あの数の子蜘蛛をすり抜けつつ、本体に相応のダメージを与えるとなると、魔法主体では決め手に欠ける。さっきの攻撃で把握できたが、奴はそこそこ素早い。魔法では回避されたり、子蜘蛛を楯にされるだろう。確実に当てるためには懐に飛び込んで物理攻撃を仕掛けた方がまだ望みはある。だが、この身体では噛み付くか爪で切り裂くくらいしかできん」
「――……でも、今のリルならできるでしょ?」
「むっ、しかしな……」
 ニマニマと意地の悪い笑みでにじり寄るフランに、リルはどこか歯切れの悪い返しでどうにか逃げようと試みる。
 しかし――

「逃げ場はないよ。どうせリルも分かってるでしょ?」

 じりじりと追い詰めるようなフランの言葉に、しばらく黙したままのリルであったが、
「仕方がない。どのみちあの子蜘蛛の説明を受けた時に、なんとなくは察していたからな」
「なら話は早いね。頼んだよ」
「どうにも乗せられた感は否めないが……承知した」
 フランの発言に軽くため息を吐いたリルは、自身が新たに獲得したスキルを発動させる。瞬間、リルの身体が白い光に包まれ――

 やがてそこには小さな三角耳を持つ、銀髪ツインテール姿の少女が現れた。

 ――リルが発動した「人化」のスキル。これは文字通り、狼としての姿を人の姿へと変化させるスキルである。このスキルは、あのイグリア大陸全土を巻き込んだ大戦後、さらなる強さを求めてリルが獲得したスキルであった。
 人化したリルは、背丈が130センチほどとフランとはいい勝負ができる体格にまで小さいものの、スキルに「身体制御」・「空中機動」が備わり、より高機動となった。
 また、後ろの腰には二本の双短剣が装備され、身軽な体躯、高機動な身体能力、手数重視の双短剣と、狼の形態よりもさらに攻撃特化仕様ダメージディーラーとしての戦闘スタイルが際立つ。

「うきゃああああっ! イイッ! いいよ! 待ってましたああああっ!」
 現れた少女は、珍しく興奮するフランに軽く引きながらも、後ろの腰に吊ったニ本の短剣を引き抜いて告げる。
「さて、行くか白兎。分析官フランの言う通り、露払いは頼んだぞ」
「はいよ、リル・・。そっちこそ、しくじるなよな」
「ハッ! ぬかせ!」
 発破をかける白兎の言葉に、人化したリルはニッと笑いながら蜘蛛の群れ目がけて駆け出した。
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