黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第082話 魔煌石を巡る攻防(南の陣) A part④

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「ふむ……『魔喰い人』ね。魔煌石の埋め込みによる浸食率……それが100%に到達してもなお、その自我が残っているってのは驚愕に値すべきだろうね。よっぽど適性があったって証左でもあるんだろうさ。ただ……お前さん、一体何人その手にかけてきた? アンタから匂って来る死臭……酷過ぎて鼻がもげそうだよ」
 固有魔法《詳細情報分析》により、覚醒したガンマの状態を分析し終えたフランは、珍しく不快感を露わにしながらその鼻をサッと白衣の袖で塞ぎながら訊ねる。

「ハハッ。良いをしてるじゃねぇか、えぇ? ちっちゃなお譲ちゃん。敵ながら、その目利きは大したモンだ。だが、年上からの有り難いアドバイスを一つやるなら――覗き見・・・し過ぎると火傷するぜ?」
 ニヤリと口の端を吊り上げつつも、今にも獲物を狩ろうとする獰猛な目つきで挑発するように告げるガンマに、フランはピクリと片眉をわずかに上げて答える。

「ご忠告どうも。その有り難いアドバイスってヤツはゴミ箱にブチ込んでおくから安心しておきな。あぁそうだ。ついでに言うなら、その蛇にも似た舐め回すような目を向けるのは止めてくれないかね。私はアンタの手のひらで震えながら喰われるのを待つほど、素直な性分じゃないんでね」
 彼女の言葉に、側に立つリルは明らかに辟易した様子で軽くため息を吐きつつ呟く。

「確かにフランの言う通りだな。奴の舐め回すような目は見ていて気分のいいものではない。いや、いっそ気色悪いと言った方がいいか」
「同感。つーか、さっさとブチ倒さね? あの手の快楽殺人者シリアルキラーはしつこいし、後々面倒なことになる確率が高いゾ」
 一方、リルの反対側でガンソード・クリアディーヴァを担ぐようにして構える白兎が気だるそうに提案する。
「そうだねぇ。確かに白兎の言うのも尤もだね。こっちは負傷者も抱えてるし、主の方も気がかりだ。だから――」
 鼻を塞いでいた袖を下し、片眼鏡モノクルの縁をキラリと輝かせたフランは、ガンマの顔を真正面に捉えながら告げる。
「キッチリとその身に教え込もうじゃないか。魔物に成り下がったあの化け蜘蛛女に『化け物退治の何たるか』ってのをさ!」
「ハハッ! 威勢のいい獲物は仕留め甲斐があるってもんだよ! 返り討ちにしてやる!」
 投げかけた挑発を何倍もの嫌味で返したフランの言葉に、ガンマはこめかみに青筋を浮かべながら吠えた。

「行くぞ――疾走紫電スパーク!」
 駆け出したリルが、「まずはジャブ」と言わんばかりにその銀灰色の毛並みを逆立て、雷系統魔法を繰り出す。瞬間、バチバチと弾ける音を伴いながら虚空を走る青白い光がガンマに向けられる。
「チィッ! 電撃かっ!」
 迎えるガンマは咄嗟に右手から糸を吐き出し、その先端を少し離れた大木の幹に付着させ、投げ縄の要領でその場から緊急離脱を試みる。

 だが、フランの横にいる「射手」はそれを許さない。

「ハッ、甘ぇよ。そこはクリアディーヴァこいつの守備範囲、だぜ?」

 わずかに口角を上げた白兎は、彼の相棒たる銃剣・クリアディーヴァの引き金を素早く引く。
 彼の持つスキル「早撃ちクイックドロウ」の効果により目にも留まらぬ早さで射出された三発の弾丸が、ガンマの手から伸ばされた糸を精確に撃ち抜いた。

「くっ!?」
 ブチリと音を残して引き千切られた糸に、思わず顔を顰めたガンマは、空中で器用に態勢を立て直し、再び地に足をつける。
「風刃乱舞っ!」
 着地したのも束の間、今度はリルの詠唱がガンマの耳に届く。ハッと声のした方、面を上げた彼女の視界に捕らえられたのは、飛び上がったリルとこちらに向かって放たれた幾つもの風の刃であった。

 ヒュヒュン、とかすかな音だけを響かせて放たれたその風の刃は、虚しくも相手を斬り刻むことなく大地にその爪痕を残して終わる。

「まったく、連携のとれた攻撃ほど厄介なものはないね」
 リルの放った風系統魔法を回避し、離れた場所へ逃がれたガンマが苦い顔で呟く。
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