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本編
第088話 魔煌石を巡る攻防(南の陣) B part③
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だが、やはり敵の硬さは尋常ではなく、彼のレベルをもってしても小さなヒビを入れるのがやっとであった。
ツグナの持つ二刀短剣術、その一つである「双頭崩牙」は、短剣技でありながら「破壊属性」を持つ珍しい技である。
この技は他の技のように「斬る」技ではない。どちらかといえば、その刀身を対象に放つことにより破壊させる「武器破壊」をメインとした技である。
(チィッ! 武器破壊に特化した「破壊属性」を持つこの技でもあんな小さなヒビしかできないのかよ。どんだけ硬いってんだよ!)
彼のステータス、特に「筋力」の値は既に4,000を超えている。その彼の力をもってしてもわずかばかりの傷しか与えられないのだから、いかにこの竜の防御力が高いかが推察できよう。
「ハハッ! 無駄無駄無駄あッ!! そんなチンケなモンでこの骨が砕けるかヨォ!!」
ツグナの攻撃を弾いた九条は、盛大に笑いながらその左腕を振り上げる。
「潰れろやああああああっ!」
雄叫びを上げながら振り下ろされた尻尾を、ツグナは大地を蹴ってギリギリで回避すると、「今度はこちらのターンだ」と告げるように、裂帛の気合いを込めて技を放つ。
「一点集中っ! ――徒花っ!!」
狙うは先ほど双頭崩牙の技で生じた小さな傷。そこを正確に、且つ凄じいスピードで何度も突くのは、相当な高い技量が求められる。
「はああああああああああああっ!」
悪神・オルクスの死闘を乗り越え、レベル666に到達したツグナ。その後は以前よりも命を賭けるような激闘はなかったものの、時間を見つけては各古代竜たちや始祖竜・アイオゲートと戦うことにより、レベルは700に届こうとするまでに至っている。
常人からすれば既に「化け物」の呼んでもおかしくはない彼のステータス。
そんな彼の放つ一撃一撃は、少しずつではあるが、着実にダメージを与えていく。
それはまるで硬い岩盤に風穴を空けるように。
ただ、そんな彼の姿は、他人から見れば、巨像に挑む蟻のように思えるだろう。
相性の悪い武具、ダメージが通らない硬い骨、巨体から繰り出される強大なパワー。
そんな「見るからに強敵」と思える相手に果敢に挑むツグナは、端から見れば「無謀」、「死にたがり」などと評価するかもしれない。
だが、彼は決して諦めない。たとえそれが他人から笑われようとも、「生き残る」ために彼は敵に挑む。
――ダメージが通らないから無理?
――どうせ敵いっこないから諦めろ?
(……ふざけるな)
三錬琥魄を手に、近接戦を仕掛けるツグナは、脳裏を掠めた主張に対して奥歯を強く噛みながら胸中に自分の思いを吐露する。
彼の目前に立ちはだかる九条の性格上、「歯向かった者は徹底的に潰す」という信条を持つ人物であると理解している。
さらに付け加えるならば、彼は並々ならぬ妄執に憑りつかれ、殺意を剥き出しにして襲い掛かって来ているのだ。
となれば、対峙するツグナにはもはや「撤退」の二字は有り得ない。
一瞬でも背中を見せたら最後、九条は何の躊躇いも無く、むしろこれ幸いとその命を狩りに来るだろう。
そして、その手はやがて自分の大切な仲間の身に及ぶことも。
だからこそ、彼は退かない。
仲間を守るために、己が生き残るために。
――異世界・イグリア大陸で育んだ「生きる」ことへの渇望や執着は、彼の名とその強さを広く轟かせるまでに至らせた。
もちろんそこには「創造召喚魔法」という、規格外のスキルがあったことは否定できない。
だが、所詮スキルはスキル。それをどう使いこなすかは己の技量による。
ツグナは(異世界に転生し)生まれた瞬間、「黒をその身に宿す子」として「忌むべき存在」とされた。
血のつながった家族から疎んじられ、爪弾きされ、侮蔑と嘲笑に晒された挙句、魔法と剣術の「練習台」と道具として扱われる日々を過ごした。
そうした生家の過酷な環境や、迷宮及び外界を徘徊する魔物との戦いを通じて芽生えたそれらの渇望や執着は、今日もなお彼の原動力の一つとしてその心に刻まれている。
何度打ち込んだか、正確な回数もとうに忘れ、ただひたすらにツグナは目の前の敵を倒さんとその短剣を振るう。
「いい加減、くたばれやあああああああああっ!」
「はああああああああああああっ! ――行っけええええええええええええっ!」
――そして。九条が技を繰り出すツグナを圧し潰そうと薙いだその時。
バキイイイイイィィィィィンッ!
その強さに絶対の自信を持っていた九条の武器が粉々に砕け散った。
ツグナの持つ二刀短剣術、その一つである「双頭崩牙」は、短剣技でありながら「破壊属性」を持つ珍しい技である。
この技は他の技のように「斬る」技ではない。どちらかといえば、その刀身を対象に放つことにより破壊させる「武器破壊」をメインとした技である。
(チィッ! 武器破壊に特化した「破壊属性」を持つこの技でもあんな小さなヒビしかできないのかよ。どんだけ硬いってんだよ!)
彼のステータス、特に「筋力」の値は既に4,000を超えている。その彼の力をもってしてもわずかばかりの傷しか与えられないのだから、いかにこの竜の防御力が高いかが推察できよう。
「ハハッ! 無駄無駄無駄あッ!! そんなチンケなモンでこの骨が砕けるかヨォ!!」
ツグナの攻撃を弾いた九条は、盛大に笑いながらその左腕を振り上げる。
「潰れろやああああああっ!」
雄叫びを上げながら振り下ろされた尻尾を、ツグナは大地を蹴ってギリギリで回避すると、「今度はこちらのターンだ」と告げるように、裂帛の気合いを込めて技を放つ。
「一点集中っ! ――徒花っ!!」
狙うは先ほど双頭崩牙の技で生じた小さな傷。そこを正確に、且つ凄じいスピードで何度も突くのは、相当な高い技量が求められる。
「はああああああああああああっ!」
悪神・オルクスの死闘を乗り越え、レベル666に到達したツグナ。その後は以前よりも命を賭けるような激闘はなかったものの、時間を見つけては各古代竜たちや始祖竜・アイオゲートと戦うことにより、レベルは700に届こうとするまでに至っている。
常人からすれば既に「化け物」の呼んでもおかしくはない彼のステータス。
そんな彼の放つ一撃一撃は、少しずつではあるが、着実にダメージを与えていく。
それはまるで硬い岩盤に風穴を空けるように。
ただ、そんな彼の姿は、他人から見れば、巨像に挑む蟻のように思えるだろう。
相性の悪い武具、ダメージが通らない硬い骨、巨体から繰り出される強大なパワー。
そんな「見るからに強敵」と思える相手に果敢に挑むツグナは、端から見れば「無謀」、「死にたがり」などと評価するかもしれない。
だが、彼は決して諦めない。たとえそれが他人から笑われようとも、「生き残る」ために彼は敵に挑む。
――ダメージが通らないから無理?
――どうせ敵いっこないから諦めろ?
(……ふざけるな)
三錬琥魄を手に、近接戦を仕掛けるツグナは、脳裏を掠めた主張に対して奥歯を強く噛みながら胸中に自分の思いを吐露する。
彼の目前に立ちはだかる九条の性格上、「歯向かった者は徹底的に潰す」という信条を持つ人物であると理解している。
さらに付け加えるならば、彼は並々ならぬ妄執に憑りつかれ、殺意を剥き出しにして襲い掛かって来ているのだ。
となれば、対峙するツグナにはもはや「撤退」の二字は有り得ない。
一瞬でも背中を見せたら最後、九条は何の躊躇いも無く、むしろこれ幸いとその命を狩りに来るだろう。
そして、その手はやがて自分の大切な仲間の身に及ぶことも。
だからこそ、彼は退かない。
仲間を守るために、己が生き残るために。
――異世界・イグリア大陸で育んだ「生きる」ことへの渇望や執着は、彼の名とその強さを広く轟かせるまでに至らせた。
もちろんそこには「創造召喚魔法」という、規格外のスキルがあったことは否定できない。
だが、所詮スキルはスキル。それをどう使いこなすかは己の技量による。
ツグナは(異世界に転生し)生まれた瞬間、「黒をその身に宿す子」として「忌むべき存在」とされた。
血のつながった家族から疎んじられ、爪弾きされ、侮蔑と嘲笑に晒された挙句、魔法と剣術の「練習台」と道具として扱われる日々を過ごした。
そうした生家の過酷な環境や、迷宮及び外界を徘徊する魔物との戦いを通じて芽生えたそれらの渇望や執着は、今日もなお彼の原動力の一つとしてその心に刻まれている。
何度打ち込んだか、正確な回数もとうに忘れ、ただひたすらにツグナは目の前の敵を倒さんとその短剣を振るう。
「いい加減、くたばれやあああああああああっ!」
「はああああああああああああっ! ――行っけええええええええええええっ!」
――そして。九条が技を繰り出すツグナを圧し潰そうと薙いだその時。
バキイイイイイィィィィィンッ!
その強さに絶対の自信を持っていた九条の武器が粉々に砕け散った。
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