黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第089話 魔煌石を巡る攻防(南の陣) B part④

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 ツグナが三錬琥魄を手に連撃技を繰り出す一方、彼と共に闘うサクヅキもまた、赫と蒼の双剣を手に攻撃を仕掛けていた。
「だあ゛あ゛あああぁぁぁぁっ! 鎧砕よろいくだきぃ!」
「ゴガアアアアアアッ!」
 サクヅキが放った技もまた「砕く」と名の付く通り、破壊属性を有する技である。
 鎧砕きは交差させた剣を対象に押し当て、その膂力でもって楯や鎧を砕く技だ。その威力はサクヅキ自身のステータス(特に筋力値)によるため、ある意味「力技」という側面は否めないが、こうした「硬い」相手には有用な技であると言えよう。

 しかしながら、彼のステータスはツグナと比較すると見劣りしてしまう。そのため、幾度となく仕掛けても一向に状況は好転しなかった。
「ぐっ!? はぁ……はぁ……」
 回避しつつ、ピンポイント攻撃を繰り返すうちにサクヅキの身体はじわじわと疲労が募っていく。堅固なその骨はヒットするだけでも相応のダメージがあり、噛み千切ろうと迫る牙は彼の背丈にも達するほどに長く鋭い。
 その鋭さは剃刀よりもなお鋭く、触れただけで容易く傷付くほどだ。

 それを物語るように、サクヅキの身体には至る所に切り傷や擦過傷が刻まれ、傷から染み出した血が一滴、また一滴と地面に落ちていく。

(魔力転換を使って体力を補っちゃいるが、それで稼げる時間もあとわずかだ……だが――手が無いわけじゃない)

 満身創痍のサクヅキに残された、唯一にして最後の手札カード
 しかし、それは諸刃の剣と呼ぶべき代物で、効果時間内に敵を倒さなければその反動で一気に不利な状況に追い込まれてしまう。

(どうする……発動の条件自体は整った。後は仕掛けるタイミングだけだ……が、ここでミスると――)
 迫る竜の牙を避けつつ、慎重に機会を窺っていたサクヅキであったが、突如現れた人物によって事態は一変する。

「な、なんなのこれ……」
「っ――!?」

 不意に耳に届いた声。その声が聞こえた方に顔を向けるとそこには制服姿の千陽がわずかに身を震わせながら突っ立っていた。
「グルオオオオオオオオオッ!」
「ひっ――」

 闇夜に轟く竜の咆哮に、千陽は恐怖のあまり腰が抜けてしまいその場にペタリと尻もちをついてしまう。

 格好の獲物だ――

 そう判断した呪い竜はその標的を千陽に変更する。

 禍々しさを体現した、赤黒い骨
 易々と獲物を噛み砕く長大な牙

 殺意をバラ撒きながら迫る脅威に、千陽は自身の持ち札――水式神を召喚するのも忘れ、ただただ恐れ戦くことしかできない。

(あぁ……私、ここで死ぬんだ――)

 恐怖で身を震わせる彼女の脳裏を掠める「死」という言葉。

 ――死にたくない。

 ぽつりと胸中に吐き出された彼女の純粋な思い。だが、思いとは裏腹に、身体が言うことを利かない。
 あとほんのわずかで彼女の身体が無残に切り刻まれようとしたその時――

「お前の相手は俺だろうがああああああああああっ!」
「ギュルアアアアアッ!」
 雄叫びと共に呪い竜の横っ面を何者かが殴りつける。

「……へっ?」
 何が起きたのかぽかんと呆けた顔をする千陽の前には、三面六臂の姿――固有スキル・阿修羅を発動させたサクヅキが立っていた。

「ここまで手札を切らせたんだ。いい加減、決着をつけようぜ……なぁオイ」
 阿修羅を発動し、額を楯に走る「第三の眼」を開眼させたサクヅキは、その六つの手それぞれに漆黒の剣を持ちつつ、真っ直ぐに呪い竜の顔を見据えながら呟いた。

 サクヅキの持つ固有スキル・阿修羅は、体力と魔力の値が残り15%を下回ったときに発動できる、突き抜けたピーキー仕様のスキルだ。
 発動中は三面六臂の姿となり、その額に第三の眼が現れる。
 この「阿修羅モード」となったサクヅキは、技の威力や破壊力が劇的に向上し、「敵を倒すまで」攻撃し続ける「狂戦士バーサーカー」と化す。

 阿修羅を発動させ、三面六臂の姿となったサクヅキの手に握られた漆黒の剣。
 それら六本の剣は、このスキルのレベルが上がったことで「アップグレード」された、彼の新たなる相棒たちである。

 六本の剣はいずれも同じシルエットをしており、一見して見分けがつかないが、その柄には「壱」~「陸」の大字だいじが刻まれている。

 壱の剣――冥夜めいや
 弍の剣――夜斗やと
 参の剣――白夜びゃくや
 肆の剣――闇夜あんや
 伍の剣――夙夜しゅくや
 陸の剣――夜叉やしゃ

 なお、夙夜と夜叉は、もともと彼が腰に差していた赫色の剣「コズミックレイド」、蒼色の剣「クリアリエラ」がスキルの発動と合わせて変化したものである。
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