黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第093話 追跡と面会準備①

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「は、はぁ……何か?」
 呼び止められたツグナは、くるりとその声の主の方へと振り向く。
 彼の視線の先には、先ほど窮地をサクヅキによって救われた千陽の姿があった。

「あ、あのっ! 先ほどはありがとうございました!」

 感謝の言葉と共に、千陽は勢い良く頭を下げる。
「……いや、別に御礼を言われるようなことじゃないさ。『魔喰人』を倒し、魔煌石も(穏便に)回収しようかと思ったんだがな。結局、奴らを見逃すことになったし、魔煌石は奪われちまったワケだしな」
 頭を深々と下げる千陽に、ツグナは軽く頭を横に振りながら答える。だが、千陽はその顔を上げることなくさらに言葉を続けた。

「でも……それでもお礼は言わせてください。貴方たちがいなければ……私を含め、大切な家族すらも生きてはいなかったかもしれませんから……」
「そうか」
 彼女の真っ直ぐな意志に気恥ずかしさを覚えつつも、ツグナは短く返答する。そして再び歩き始めた彼に、千陽は再び声をかける。

「それじゃあまた、学校で・・・。継那さん。今度、父からも改めてお礼させて欲しいとのことなので、面会の席を設けさせてもらえますか? いつ頃なら都合つきそうですか? 学校で日程の調整をした方が良いかな、とは思うのですが」
「――……えっ? ちょ、ちょっと待った。が、学校……?」
「はい。だって貴方は――亜里亜のお兄さんの、普通科クラス所属の継那さんですよね?」

 確信を持って告げられた千陽のセリフ。場に投下されたその爆弾の威力は絶大で、ツグナだけではなく、その場にいる全員の表情がその瞬間凍りつく。
「えっと、それって他人の空似――」
「顔の面影はそうかもしれませんが、喋り方や呼び方まで同じなのは『似ている』というレベルではないですよね? 少なくとも、私の知る中で『ツグ兄』と呼ばれる方は一人しか知りません」

 ズバリと痛いところを突かれたツグナは、さっと千陽から視線を外しつつ反論を試みる。
「あ~、それはどうかな? ほら『世界は広い』って言うだろ? なら、呼ばれ方まで同じ人間もいるんじゃ……」
「それなら何故堂々と『違う』と言わないのでしょう? そうやって挙動不審でいる方がますます『そうです』と自白してるようなものですよ?」
「――……」
 もはや「頭真っ白」でチラリと横に立つキリアやリーナに目配せして「どうしようか?」と訴えたツグナだったが、返って来た答えは

「仕方がないんじゃない」
「兄さん……もう無理かと」

 そんなにべもない返事だった。

「はぁ……分かった分かった。完敗だ。とりあえず、続きは学校で、だ。ひとまずはこっちも帰らせてくれ。いい加減アリアのことも診てやらなきゃならないしな」
「そう、ですね……分かりました。呼び止めてしまってすみません」
 千陽はツグナが抱え上げる傷だらけのアリアに気付くと、ペコリと軽く頭を下げて踵を返して去っていく彼らを見送った。

 御水瀬神社を後にしたツグナたちは、召喚したジェスターの管理する道化門ゲートを使って家に戻った。帰宅から数時間後、アルバイト先から戻って来たシルヴィとキリアの二人にアリアを預けてその後の処置を任せたツグナは、「纏装の指輪」で身に着けていた服や装備を戻すと、倒れるようにその身をベッドの上に横たえる。

 ひと段落ついた安堵と戦闘の疲労からすぐさま睡魔が襲いかかって来たものの、それを何とか抑え込んだツグナは一度寝返りを打つと「さてどうしようか……」と独り言を呟いた。

(最初は「異世界転移者の増加」の原因を突き止めて解決すればよかった。だが、その前に「魔喰人」という存在が現れた。魔喰人はリリアによれば、イグリア大陸むこうのせかいで昔に行われていた実験で、禁忌とされている技術。魔喰人はその身に「魔煌石」を埋め込まれた人間だ。魔煌石は魔物の体内で生成される特殊な石だ。そんなもの、こっちの世界にあるわけがない。けれど、現に魔喰人は存在し、ヤツらは組織だって動いている……何故向こうの世界にあるものが、こっちの世界に持ち込まれている? もしかして、この二つはつながっているのか……?)

 ツグナは身体を横たえながら思索を巡らせるものの、その「つながり」を証明する存在について情報を得ていないために、「とりあえずは情報収集しつつ様子見か」となんとも煮え切らない結論にとどまってしまう。

「う~ん、だめだ。これ以上は考えても埒が明かないな。とりあえず、あの神様ディエヴスの依頼と魔喰人との関係は置いておくとして……」
 むくりと状態を起こしたツグナは、左腕から魔書《クトゥルー》を引き抜いて従者を召喚する。

「――そっちはどうだ、ニア」
 青白い燐光を纏わせながら召喚された彼女は、ふっと微笑を湛えながら静かに呟く。
「それでは、報告させていただきます……」
 そして彼女は主たるツグナに対し、自らに課せられた「任務」の状況を報告し始めた。
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