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本編
第094話 追跡と面会準備②
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(……ターゲット捕捉。これより追跡を開始。各員――配置につけ)
時間は遡り、ツグナがアルファとの取引を終えてから数分後。とある大型車両に乗り込むアルファの姿を、ニアは自身の固有スキル「従属同調」の効果で各所に散った配下の目を通じて確認すると、即座に命令を下す。
(……第一班は対象の車両内に侵入。できる限り会話を拾うように。第二班は上空から追跡を開始。第三班は先行して各ポイントにて待機。第二班と指定のポイントにて交代すること)
自身の「念話」のスキルを用いて予め振り分けた班に手慣れた様子でニアは自身の配下を向かわせる。
第一班は小動物を用いた盗聴がメインの任務だ。第一班はコビトジャコウネズミという、体長が約3.8センチほどの小さなネズミを中心に構成されている。
彼らの「耳」を通じて敵の情報を得る――それがニアの「盗聴手法」だ。
この手法は一見して「原始的」という印象を受けるかもしれない。何故なら、敵へスパイを紛れ込ませ、「人づてに」情報を入手する方法に近いからだ。
だが、常に「裏切り」のリスクを抱えるスパイに対し、ニアの配下として連なる動物たちは、そうしたリスクとは無縁の存在だ。また、彼女は(主であるツグナが設定した)従属同調の固有スキルで多様な動物を駒として使役することができる。
機械文明が発達した現代では、「盗聴」に対する対策はどうしても機械技術を用いたものがベースとならざるを得ないため、魔力やスキルという埒外の力については、現代の技術ではどうにも対抗することはできない。
そうしてアルファたちの車両内に潜り込ませた「駒」から、ほどなくして瞼を閉じて集中する彼女のもとに情報が届けられた。
「なるほど……対象は確保できたものの、代償としてラウンドガード1名が死亡ということですか」
「申し訳ありません」
モニター越しに映し出されたゼクスに、アルファはやや緊張した面持ちで任務の結果を報告する。
「分かりました。欠員したガンマについては、『候補生』の中から選抜しましょう。選抜については私の方で行いますので、結果は追って連絡します」
「ありがとうございます」
モニターのゼクスに画面越しながら頭を下げたアルファは、短く謝意を述べる。仲間の死、という重大な結果について驚くほどアッサリとした両者の会話だったが、これが主を守護する楯の存在意義であった。
我らは主であるゼクス様を守護する楯であり、道具。
主のためならば、この命など惜しくはない――
この信条に則り、ラウンドガードの面々は各種の任務を遂行する。そうしたなか、今回の任務のように欠員が生じることもしばしばあり、欠員が出た場合には主であるゼクスの裁量により彼が擁する「候補生」から欠員分の人間が選抜される。
「それにしても、先ほどの報告にあった『双短剣の少年』ですが……貴女から見て、仮に彼と刃を交えることとなった場合、確実にその息の根を止めることは可能ですか?」
モニターに映るゼクスから発せられた問いに、向かい合うアルファはすぐに返答することができなかった。
――あれはその辺りにいる「少年」ではない。
彼女は先ほどの取引で向かい合ったツグナの姿を脳裏に思い描きながらそう結論付けた。
隙のない立ち姿、高硬度を誇る呪い竜の骨を砕くその戦力、そして――躊躇なく人を斬れる強靭な精神。
(あの少年からは、まさに「歴戦の戦士」を彷彿とさせる。そんな彼に私は――)
勝てるのか? と問われれば、答えは否であった。
「私一人では覚醒してもなお倒すことは難しいでしょう。あの少年は九条――いえ、呪い竜の骨を単騎で砕く力量の持ち主です。それに、彼が率いる仲間もいるようです。どれほどの人数がいるかまでは把握できませんでしたが、警戒に警戒を重ねてもなお注意する人物とみるべきでしょう」
アルファはゼクスの機嫌を下手に損ねないよう、慎重に言葉を選びながらも自らの見解を述べていく。
「ほぅ……元軍人である貴女にそこまで評価されるとは。なるほど……その少年、もしアザエル様の手を煩わせるようなこととなれば――消した方がよいでしょう。そちらについては私の方で対処します。また、戦闘における国民への報道、警察関係者への対応もいつも通りこちらから根回しておきます」
「了解いたしました。お手を煩わせてしまい、申し訳ありません」
「その少年について貴女たちにはまた新たな任務を命ずる場合もありますが……当初の目的は達成できました。任務は終了しましたので、ひとまずは一旦戻りなさい。」
「承知いたしました。まもなくそちらに到着するものと思います」
アルファの返答を最後にビデオ通話が切れると、彼女は大きく息を吐いて「任務終了」とのゼクスの言葉に安堵する。
その両者の会話に聞き耳を立てている存在が居ることも知らずに――
時間は遡り、ツグナがアルファとの取引を終えてから数分後。とある大型車両に乗り込むアルファの姿を、ニアは自身の固有スキル「従属同調」の効果で各所に散った配下の目を通じて確認すると、即座に命令を下す。
(……第一班は対象の車両内に侵入。できる限り会話を拾うように。第二班は上空から追跡を開始。第三班は先行して各ポイントにて待機。第二班と指定のポイントにて交代すること)
自身の「念話」のスキルを用いて予め振り分けた班に手慣れた様子でニアは自身の配下を向かわせる。
第一班は小動物を用いた盗聴がメインの任務だ。第一班はコビトジャコウネズミという、体長が約3.8センチほどの小さなネズミを中心に構成されている。
彼らの「耳」を通じて敵の情報を得る――それがニアの「盗聴手法」だ。
この手法は一見して「原始的」という印象を受けるかもしれない。何故なら、敵へスパイを紛れ込ませ、「人づてに」情報を入手する方法に近いからだ。
だが、常に「裏切り」のリスクを抱えるスパイに対し、ニアの配下として連なる動物たちは、そうしたリスクとは無縁の存在だ。また、彼女は(主であるツグナが設定した)従属同調の固有スキルで多様な動物を駒として使役することができる。
機械文明が発達した現代では、「盗聴」に対する対策はどうしても機械技術を用いたものがベースとならざるを得ないため、魔力やスキルという埒外の力については、現代の技術ではどうにも対抗することはできない。
そうしてアルファたちの車両内に潜り込ませた「駒」から、ほどなくして瞼を閉じて集中する彼女のもとに情報が届けられた。
「なるほど……対象は確保できたものの、代償としてラウンドガード1名が死亡ということですか」
「申し訳ありません」
モニター越しに映し出されたゼクスに、アルファはやや緊張した面持ちで任務の結果を報告する。
「分かりました。欠員したガンマについては、『候補生』の中から選抜しましょう。選抜については私の方で行いますので、結果は追って連絡します」
「ありがとうございます」
モニターのゼクスに画面越しながら頭を下げたアルファは、短く謝意を述べる。仲間の死、という重大な結果について驚くほどアッサリとした両者の会話だったが、これが主を守護する楯の存在意義であった。
我らは主であるゼクス様を守護する楯であり、道具。
主のためならば、この命など惜しくはない――
この信条に則り、ラウンドガードの面々は各種の任務を遂行する。そうしたなか、今回の任務のように欠員が生じることもしばしばあり、欠員が出た場合には主であるゼクスの裁量により彼が擁する「候補生」から欠員分の人間が選抜される。
「それにしても、先ほどの報告にあった『双短剣の少年』ですが……貴女から見て、仮に彼と刃を交えることとなった場合、確実にその息の根を止めることは可能ですか?」
モニターに映るゼクスから発せられた問いに、向かい合うアルファはすぐに返答することができなかった。
――あれはその辺りにいる「少年」ではない。
彼女は先ほどの取引で向かい合ったツグナの姿を脳裏に思い描きながらそう結論付けた。
隙のない立ち姿、高硬度を誇る呪い竜の骨を砕くその戦力、そして――躊躇なく人を斬れる強靭な精神。
(あの少年からは、まさに「歴戦の戦士」を彷彿とさせる。そんな彼に私は――)
勝てるのか? と問われれば、答えは否であった。
「私一人では覚醒してもなお倒すことは難しいでしょう。あの少年は九条――いえ、呪い竜の骨を単騎で砕く力量の持ち主です。それに、彼が率いる仲間もいるようです。どれほどの人数がいるかまでは把握できませんでしたが、警戒に警戒を重ねてもなお注意する人物とみるべきでしょう」
アルファはゼクスの機嫌を下手に損ねないよう、慎重に言葉を選びながらも自らの見解を述べていく。
「ほぅ……元軍人である貴女にそこまで評価されるとは。なるほど……その少年、もしアザエル様の手を煩わせるようなこととなれば――消した方がよいでしょう。そちらについては私の方で対処します。また、戦闘における国民への報道、警察関係者への対応もいつも通りこちらから根回しておきます」
「了解いたしました。お手を煩わせてしまい、申し訳ありません」
「その少年について貴女たちにはまた新たな任務を命ずる場合もありますが……当初の目的は達成できました。任務は終了しましたので、ひとまずは一旦戻りなさい。」
「承知いたしました。まもなくそちらに到着するものと思います」
アルファの返答を最後にビデオ通話が切れると、彼女は大きく息を吐いて「任務終了」とのゼクスの言葉に安堵する。
その両者の会話に聞き耳を立てている存在が居ることも知らずに――
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