97 / 129
本編
第096話 追跡と面会準備④
しおりを挟む
(まず――ッ!?)
ネズミとスキルを通じて同調していたニアは、ゼクスの鋭い眼光に慌ててそれを切った。
(っ――! 撤収っ! 各自速やかにその場を離脱っ!)
彼女から下された大号令に、今回の追跡劇に投入された「駒」たちは、その身をブルリと大きく震わせ、蜘蛛の子を散らすように一目散にその場から離れていく。
(クッ、部屋に侵入した駒は潰されたと判断するべきでしょうね。逆探知は……ない、か。仕方がない。追跡はここまでのようね……)
配下たちとの同調を解除したニアは、大きく深呼吸をしてドッドッドッ……と早鐘を打っていた心臓を落ち着かせる。何時の間にか額にじわりと浮かんでいた汗を拭い、念話のスキルでツグナに召喚解除を申し出たニアは、魔書の中に送還されながら同調したネズミの目越しに見たゼクスの両眼を脳裏に思い浮かべる。
その時――
「…………うん?」
ゾクリ、と何かがニアのうなじに取り憑いた気配を覚え、思わず手を首の後ろに当てる。
しかしながらその手が掴んだものはなく、結局「気のせいか……」と思考を切り替えた。
この時、ツグナと直接会えばその「何か」が気のせいではなかったことが分かったかもしれない。
「ふむ……上手くいったようですね」
静まり返った室内、その革張りの椅子に深く腰掛けたゼクスが人知れず微笑んだことなど知る由もなく。
◆◇◆
「――以上となります」
「なるほど。第六位、そしてアザエルという名の人物か……ナイトオーガとの件といい、今回のことといい、あれほどの派手な戦闘にもかかわらず一切報道されなかったのは裏で手を回してたってコトか」
ニアから詳細な報告を聞いたツグナは、ガシガシと頭を掻きながら呟く。
「はい。加えてあのゼクスという人物は相当な手練れかと思います。危機察知のスキルがあれほどまでに強く反応を示したのは、あの『七煌教会』が擁していた『色持ち』たち以来です。ゼクスという名がそのままの意味を持つのであれば、彼と同じクラスの人間が複数名存在するものと思われます……」
報告するニアはわずかに悔しさを滲ませつつも、自らの見解を述べる。
「色持ち、と同じクラスか……」
ニアの口から懐かしいフレーズを耳にしたツグナは、大きく息を吐きながらその言葉を口にする。ポツリと漏らすと同時、彼の脳裏には過去にその色持ちたちと繰り広げた激闘の数々と七煌教会のトップを務めたイリス、そして彼女を裏から操っていた悪神・オルクスの姿が思い描かれた。
胸中に重苦しい思いを抱きつつも、ツグナは一通りの報告を終えたニアを魔書の中に戻す。
(つーか、こっちの世界でもまたあんな手強いヤツらを相手にするってのか? 冗談キツイぞまったく……)
パタリとそのままベッドに身を投げ、長いため息を吐きながら「一体いつになったら落ち着けるんだよ……」と彼は誰に聞かせるわけもなく、そっと愚痴を吐く。
「――あー、もう考えることが多くて頭が働かないな。とりあえず、今日はもう寝るか……報告にあった敵の拠点に向かうのは明日以降にしよう。色々あってさすがに疲れたし」
ニアの報告を聞き、若干ながら「聞かなきゃよかったかな……」後悔の念を抱いたツグナだったが、「どのみち後で聞いても結果は同じか」と思い直し、彼は静かに瞼を閉じた。
だが、翌朝――
「……はっ?」
寝ぼけまなこを擦り、欠伸をしてリビングにやって来たツグナは、まだエンジンがかからない頭を起こそうとしてテレビをつける。
まだ朝の早い時間のため、リビングには彼一人しかいない。そのため、いつもはシルヴィが淹れるコーヒーを自分で淹れ、湯気が立ち昇るそれをゆっくりと喉に流し込みながら、ぼんやりとテレビの向こうから伝えられるニュースを眺めていた。
だが、あるニュースを目にして彼の思考が一瞬フリーズしてしまったのだった。
ネズミとスキルを通じて同調していたニアは、ゼクスの鋭い眼光に慌ててそれを切った。
(っ――! 撤収っ! 各自速やかにその場を離脱っ!)
彼女から下された大号令に、今回の追跡劇に投入された「駒」たちは、その身をブルリと大きく震わせ、蜘蛛の子を散らすように一目散にその場から離れていく。
(クッ、部屋に侵入した駒は潰されたと判断するべきでしょうね。逆探知は……ない、か。仕方がない。追跡はここまでのようね……)
配下たちとの同調を解除したニアは、大きく深呼吸をしてドッドッドッ……と早鐘を打っていた心臓を落ち着かせる。何時の間にか額にじわりと浮かんでいた汗を拭い、念話のスキルでツグナに召喚解除を申し出たニアは、魔書の中に送還されながら同調したネズミの目越しに見たゼクスの両眼を脳裏に思い浮かべる。
その時――
「…………うん?」
ゾクリ、と何かがニアのうなじに取り憑いた気配を覚え、思わず手を首の後ろに当てる。
しかしながらその手が掴んだものはなく、結局「気のせいか……」と思考を切り替えた。
この時、ツグナと直接会えばその「何か」が気のせいではなかったことが分かったかもしれない。
「ふむ……上手くいったようですね」
静まり返った室内、その革張りの椅子に深く腰掛けたゼクスが人知れず微笑んだことなど知る由もなく。
◆◇◆
「――以上となります」
「なるほど。第六位、そしてアザエルという名の人物か……ナイトオーガとの件といい、今回のことといい、あれほどの派手な戦闘にもかかわらず一切報道されなかったのは裏で手を回してたってコトか」
ニアから詳細な報告を聞いたツグナは、ガシガシと頭を掻きながら呟く。
「はい。加えてあのゼクスという人物は相当な手練れかと思います。危機察知のスキルがあれほどまでに強く反応を示したのは、あの『七煌教会』が擁していた『色持ち』たち以来です。ゼクスという名がそのままの意味を持つのであれば、彼と同じクラスの人間が複数名存在するものと思われます……」
報告するニアはわずかに悔しさを滲ませつつも、自らの見解を述べる。
「色持ち、と同じクラスか……」
ニアの口から懐かしいフレーズを耳にしたツグナは、大きく息を吐きながらその言葉を口にする。ポツリと漏らすと同時、彼の脳裏には過去にその色持ちたちと繰り広げた激闘の数々と七煌教会のトップを務めたイリス、そして彼女を裏から操っていた悪神・オルクスの姿が思い描かれた。
胸中に重苦しい思いを抱きつつも、ツグナは一通りの報告を終えたニアを魔書の中に戻す。
(つーか、こっちの世界でもまたあんな手強いヤツらを相手にするってのか? 冗談キツイぞまったく……)
パタリとそのままベッドに身を投げ、長いため息を吐きながら「一体いつになったら落ち着けるんだよ……」と彼は誰に聞かせるわけもなく、そっと愚痴を吐く。
「――あー、もう考えることが多くて頭が働かないな。とりあえず、今日はもう寝るか……報告にあった敵の拠点に向かうのは明日以降にしよう。色々あってさすがに疲れたし」
ニアの報告を聞き、若干ながら「聞かなきゃよかったかな……」後悔の念を抱いたツグナだったが、「どのみち後で聞いても結果は同じか」と思い直し、彼は静かに瞼を閉じた。
だが、翌朝――
「……はっ?」
寝ぼけまなこを擦り、欠伸をしてリビングにやって来たツグナは、まだエンジンがかからない頭を起こそうとしてテレビをつける。
まだ朝の早い時間のため、リビングには彼一人しかいない。そのため、いつもはシルヴィが淹れるコーヒーを自分で淹れ、湯気が立ち昇るそれをゆっくりと喉に流し込みながら、ぼんやりとテレビの向こうから伝えられるニュースを眺めていた。
だが、あるニュースを目にして彼の思考が一瞬フリーズしてしまったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?
サクラ近衛将監
ファンタジー
会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。
睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?
そんな男の二重生活の冒険譚です。
毎週水曜日午後8時に投稿予定です。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる