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本編
第104話 当主会談と御神木、そして乱入者約一名⑤
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「え゛えっ!? ちょ、ちょっと待って!? 継那さんと尊琉が試合!?」
その頃、リリアたちを連れて境内にある御神木の近くに来ていた千陽は、慌てた様子で健介からの言伝を伝える使用人の言葉に声を裏返させた。
「うん? どうしたんだ?」
「何? 何かあったの?」
「ツグ兄のこと?」
驚く彼女の声に、近くにいたリリア、ソアラ、アリアがくいっと顔をそちらに向けて訊ねる。
「あっ、は、はい。どうやら継那さんと尊琉――火之輪家の当主代理が、どうやら試合をするらしくて……」
おずおずと言い辛そうに口を開く千陽に、リリアは「ほぅ……」とどこか興味津々な面持ちで相槌を打った。
「火之輪家の当主代理って、さっきここに移動する直前にやって来た人?」
「うん。そうよ。名前は火之輪尊琉。御水無瀬家と同じ、五家門の一つよ。得意とする属性は火で、五家門の中で最も攻撃に秀でた家柄とされているの」
アリアからの問いに、千陽はこくりと頷きながら簡単な説明を行う。
「ふむ、火属性……攻撃に秀でた家柄の者か。ただ分らんな。当主殿は別として、その者はツグナとは初対面のはずだろう? どうしてその者と試合など――」
「その理由は私の方からご説明しましょう」
訊ねたリリアに、ふと横から千陽のものとは別の声が耳に届く。その声が聞こえた方に目を向けると、そこには千陽よりも背丈の低い椿の姿があった。
「アッハッハ! そうかそうか……ずかずかと上がり込んで来たその火之輪家の当主代理が、ツグナに喧嘩を吹っ掛けたのか……」
「うわぁ……『大した力も持たない』って面と向かって言ったんだぁ……」
「あー、うん。それは確かに怒るわね。うん、簡単に想像できるわ……」
一通りの説明を椿から受けた直後、リリアは腹を抱えて大笑いし、シルヴィは若干顔を引きつらせながらツグナに同情を寄せる。
他方、ヴァルハラの女性陣と言えば、
「あ゛ぁ? 何なんですか、その無礼千万なクソ野郎は。あれだけ身を挺して戦い、敵を退けた兄さんのことを『大した力も持たない』と? 万死に値しますね」
「アハハ~……リーナ姉がマジだ。マジもんの目になってるよ。まぁ分からなくもないけどね。にしても目障りなヤツには違いないよね。どうする? 私の剣技でブスッと一突きしとく?」
「それはあまりも手抜き過ぎないかしら? どうせなら、ありとあらゆる状態異常、50倍コースでもいっとく?」
「いやぁ~えげつないねぇ、キリアは。ここはサクッと私の魔鋼糸でふん縛って、奈落の底に突き落とす感じで良くない?」
などなど、およそ女性の発言とは思えない、物騒極まりない言葉が並んでいく。
「あ、あのぅ……すみません」
「さて、どうやって地獄を見せようか」と談義するアリアたちに、涙目になりながら椿が声をかける。ビクビクと身を震わせながら声をかけるその姿は、さながら素人がいつ爆発してもおかしくはない爆弾を処理するシーンとどこか似通ったものを想起させる。
「「「「あ゛ぁ?」」」」
「ヒィ――ッ!? あ、あのですね? あくまでも今回の試合は継那さんと火之輪家当主代理の間でのものなので、他人が割って入る余地はない、か……と」
プルプルと震えながらも懸命に説明する椿に、千陽は遠くから「ナイスガッツ!」と軽く拳を握りながら心の中で声援を送る。
「え~っ? ツグ兄だけぇ? ……ということは、私たちは参加できないってこと? (;´・ω・)」
「そうらしいわね。チィッ……50倍コースの実験台が…… (´-ω-`)」
眉根を寄せ、さも残念そうに訊ねるアリアに、腕を組んだキリアが答える。
「クッ……同じ炎を操る者として灼熱の果てに消し炭にしてやろうかと思ってたのに…… (-_-メ)」
「まぁまぁ、仕方がないよ。それがルールというのなら、さ。でもため息をつきたくなるのも分かるよ。私も、折角だから魔鋼糸でなます切りにしようかと考えてたんだけどさぁ…… (=゚ω゚)ノ」
ギリギリと歯噛みしながら悔し気に呟くリーナを、傍らに立ったソアラがどうどうと落ち着かせながら声をかける。
それまでの張り詰めた空気がフッと和らぎ、落ち着きを取り戻したアリアたちは、再び御神木の前で思い思いの時間を過ごし始める。
彼女らがこの場所から動こうとしないのは、先にリリアが述べたように魔力の回復量・スピードが、自然回復に任せるよりも圧倒的に早いからに他ならない。
「あっ! ねぇねぇ、ほらっ! 月が出てるよ!」
「あら、ホントね。ふぅむ……どうせなら、お茶とお菓子でも摘まみながらツグナが来るまでまったりしない?」
ソアラが興奮しながら月を指し示し、それを月を仰ぎ見たキリアが他のメンバーにお茶会の開催を提案する。
「キリアの意見にさんせー! どうせツグ兄が来るのを待つだけだし、何もしないのはさすがに退屈だよ」
「そうね。ただ……アリア。貴女はただお茶会よりも食べるのが主体でしょう?」
「なはは……リーナ姉。その通り」
先ほどまでのギスギスとした雰囲気からがらりと一変してまったりと和やかな空気の中でワイワイと騒ぐ異世界組の面々に、付き添いの千陽及び試合の説明に訪れた椿はそのあまりに様変わりした様子についていけず、ポカンと呆けた顔で目の前の光景を眺めていた。
その頃、リリアたちを連れて境内にある御神木の近くに来ていた千陽は、慌てた様子で健介からの言伝を伝える使用人の言葉に声を裏返させた。
「うん? どうしたんだ?」
「何? 何かあったの?」
「ツグ兄のこと?」
驚く彼女の声に、近くにいたリリア、ソアラ、アリアがくいっと顔をそちらに向けて訊ねる。
「あっ、は、はい。どうやら継那さんと尊琉――火之輪家の当主代理が、どうやら試合をするらしくて……」
おずおずと言い辛そうに口を開く千陽に、リリアは「ほぅ……」とどこか興味津々な面持ちで相槌を打った。
「火之輪家の当主代理って、さっきここに移動する直前にやって来た人?」
「うん。そうよ。名前は火之輪尊琉。御水無瀬家と同じ、五家門の一つよ。得意とする属性は火で、五家門の中で最も攻撃に秀でた家柄とされているの」
アリアからの問いに、千陽はこくりと頷きながら簡単な説明を行う。
「ふむ、火属性……攻撃に秀でた家柄の者か。ただ分らんな。当主殿は別として、その者はツグナとは初対面のはずだろう? どうしてその者と試合など――」
「その理由は私の方からご説明しましょう」
訊ねたリリアに、ふと横から千陽のものとは別の声が耳に届く。その声が聞こえた方に目を向けると、そこには千陽よりも背丈の低い椿の姿があった。
「アッハッハ! そうかそうか……ずかずかと上がり込んで来たその火之輪家の当主代理が、ツグナに喧嘩を吹っ掛けたのか……」
「うわぁ……『大した力も持たない』って面と向かって言ったんだぁ……」
「あー、うん。それは確かに怒るわね。うん、簡単に想像できるわ……」
一通りの説明を椿から受けた直後、リリアは腹を抱えて大笑いし、シルヴィは若干顔を引きつらせながらツグナに同情を寄せる。
他方、ヴァルハラの女性陣と言えば、
「あ゛ぁ? 何なんですか、その無礼千万なクソ野郎は。あれだけ身を挺して戦い、敵を退けた兄さんのことを『大した力も持たない』と? 万死に値しますね」
「アハハ~……リーナ姉がマジだ。マジもんの目になってるよ。まぁ分からなくもないけどね。にしても目障りなヤツには違いないよね。どうする? 私の剣技でブスッと一突きしとく?」
「それはあまりも手抜き過ぎないかしら? どうせなら、ありとあらゆる状態異常、50倍コースでもいっとく?」
「いやぁ~えげつないねぇ、キリアは。ここはサクッと私の魔鋼糸でふん縛って、奈落の底に突き落とす感じで良くない?」
などなど、およそ女性の発言とは思えない、物騒極まりない言葉が並んでいく。
「あ、あのぅ……すみません」
「さて、どうやって地獄を見せようか」と談義するアリアたちに、涙目になりながら椿が声をかける。ビクビクと身を震わせながら声をかけるその姿は、さながら素人がいつ爆発してもおかしくはない爆弾を処理するシーンとどこか似通ったものを想起させる。
「「「「あ゛ぁ?」」」」
「ヒィ――ッ!? あ、あのですね? あくまでも今回の試合は継那さんと火之輪家当主代理の間でのものなので、他人が割って入る余地はない、か……と」
プルプルと震えながらも懸命に説明する椿に、千陽は遠くから「ナイスガッツ!」と軽く拳を握りながら心の中で声援を送る。
「え~っ? ツグ兄だけぇ? ……ということは、私たちは参加できないってこと? (;´・ω・)」
「そうらしいわね。チィッ……50倍コースの実験台が…… (´-ω-`)」
眉根を寄せ、さも残念そうに訊ねるアリアに、腕を組んだキリアが答える。
「クッ……同じ炎を操る者として灼熱の果てに消し炭にしてやろうかと思ってたのに…… (-_-メ)」
「まぁまぁ、仕方がないよ。それがルールというのなら、さ。でもため息をつきたくなるのも分かるよ。私も、折角だから魔鋼糸でなます切りにしようかと考えてたんだけどさぁ…… (=゚ω゚)ノ」
ギリギリと歯噛みしながら悔し気に呟くリーナを、傍らに立ったソアラがどうどうと落ち着かせながら声をかける。
それまでの張り詰めた空気がフッと和らぎ、落ち着きを取り戻したアリアたちは、再び御神木の前で思い思いの時間を過ごし始める。
彼女らがこの場所から動こうとしないのは、先にリリアが述べたように魔力の回復量・スピードが、自然回復に任せるよりも圧倒的に早いからに他ならない。
「あっ! ねぇねぇ、ほらっ! 月が出てるよ!」
「あら、ホントね。ふぅむ……どうせなら、お茶とお菓子でも摘まみながらツグナが来るまでまったりしない?」
ソアラが興奮しながら月を指し示し、それを月を仰ぎ見たキリアが他のメンバーにお茶会の開催を提案する。
「キリアの意見にさんせー! どうせツグ兄が来るのを待つだけだし、何もしないのはさすがに退屈だよ」
「そうね。ただ……アリア。貴女はただお茶会よりも食べるのが主体でしょう?」
「なはは……リーナ姉。その通り」
先ほどまでのギスギスとした雰囲気からがらりと一変してまったりと和やかな空気の中でワイワイと騒ぐ異世界組の面々に、付き添いの千陽及び試合の説明に訪れた椿はそのあまりに様変わりした様子についていけず、ポカンと呆けた顔で目の前の光景を眺めていた。
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