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本編
第113話 Event & Invader⑥
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「委細承知いたしました、アザエル様。私の方は、間もなく準備が整う状況にございます。準備が整い次第、着手いたしましょう」
アザエルの笑みに釣られるように、ゼクスもまた笑みを浮かべながら状況を報告する。
「……了解。手筈はキミに一任するよ。準備が整ったら、改造を終えた彼も連れて行くといい。きっと面白いショーになるはずだ」
「はい。この度はお手間を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」
アザエルの言葉に対し、ゼクスは軽く頭を下げながら謝罪の言葉を口にする。
「ははっ、構わないさ。何たって、僕の『お気に入り』の七元徳、その第六位を冠するキミからのお願いだ。無碍に断ることなどしないさ。ただ……」
笑いながら「問題ない」と告げたアザエルは、一旦紡いだ言葉を切り、その口の端を大きく吊り上げた。極細の弧を描いて笑う彼の姿は、もはや子どもという皮を被ったなにか……という印象を与える。
そして、その弧を描いていたアザエルの口から再び言葉が紡がれる。
「できれば――舞台は人が大勢いる場所がいいな♪ ほら、観客や舞台に上がるエキストラは多い方が楽しいでしょ?」
笑みを零しながら告げるその言葉は、字面だけを見ればまるで演劇の準備を嬉しそうに行う子どものセリフと捉えられるだろう。
だが、その言葉とは裏腹に、アザエルの周囲に纏い付く重苦しい空気が彼の心の奥底にある狂気を暗に示していた。
「――かしこまりました、アザエル様。このゼクス、その名が示すに相応しい働きと結果を我らが主に必ずや献上することをここに誓いましょう」
「ふふっ、頑張ってね。それじゃ、僕はこの辺で~」
再び胸に手を当て、恭しく礼をして誓いの言葉を口にするゼクスに見送られ、アザエルは上機嫌で部屋を出る。
「さて……では本格的に仕掛けるとしましょうか。まずは重要な舞台設定からですね……」
革張りの肘掛け椅子に再び腰を下ろしたゼクスは、深く息を吐いて独り言を呟くと、その瞼を閉じて意識を集中させる。
やがて彼の瞼の裏には、通りすがりのとある女子高生のグループが映し出された。
――アザエルより直々に冠された称号「七元徳」、その第六位を与えらたゼクス。ギシリと背もたれに身を預けた彼は、体内に埋め込まれた魔煌石の持ち主である魔物の力を行使し始める。
ゼクスが発動した力――それは端的に言えば「支配」の力だ。
彼は「楔」を打ち込むことにより、対象者を操ることができる。操作する意識レベルも任意に調整でき、人形のように意識と身体の自由を完全に奪うことから、対象の深層意識のみを操り本人が意図せずゼクスの利益になるように仕向けることも可能だ。
ただし、その制約も厳しく、完全に相手の意識と身体の自由を奪うには相応の時間が必要で、打ち込んだ楔の効果を全身に行き渡らせる必要がある。
また、対象者が何らかの契約によりその行動や意識が縛られていた場合、ゼクスの「支配」は限定的な効果しか及ぼすことができない。これは予め縛られている相手に後付けで支配権を及ぼそうとするためで、既に確立された主従関係を覆したり、その上下関係に割って入るのは相当な力技となるからだ。
このような場合、無理に支配の力を行使すれば、被支配者の自我が崩壊するばかりか、最悪自分がダメージを負う可能性も発生し得る。
――制約は多いが、条件次第では絶大な力をもたらし得る力。
それがゼクスに備わる力であった。
『……たち、魅神楽リゾートに行くの? いいなぁ……私も予定がなかったら行きたかったよ』
実際にその場にいるかのようなクリアな声がゼクスの頭に響き、次いでその場所の魅力や特徴を列挙する別の声が彼に届く。
(ふむ……アトラクションが多数あるテーマパークですか。なるほど……そこなら今回の舞台としてはまさにうってつけと言えるでしょうね。それに、テーマパークならば、観客やエキストラも充分。ならば――)
ゼクスは手に入れた情報を吟味しつつ、一人計画を練り始めるのだった。
アザエルの笑みに釣られるように、ゼクスもまた笑みを浮かべながら状況を報告する。
「……了解。手筈はキミに一任するよ。準備が整ったら、改造を終えた彼も連れて行くといい。きっと面白いショーになるはずだ」
「はい。この度はお手間を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」
アザエルの言葉に対し、ゼクスは軽く頭を下げながら謝罪の言葉を口にする。
「ははっ、構わないさ。何たって、僕の『お気に入り』の七元徳、その第六位を冠するキミからのお願いだ。無碍に断ることなどしないさ。ただ……」
笑いながら「問題ない」と告げたアザエルは、一旦紡いだ言葉を切り、その口の端を大きく吊り上げた。極細の弧を描いて笑う彼の姿は、もはや子どもという皮を被ったなにか……という印象を与える。
そして、その弧を描いていたアザエルの口から再び言葉が紡がれる。
「できれば――舞台は人が大勢いる場所がいいな♪ ほら、観客や舞台に上がるエキストラは多い方が楽しいでしょ?」
笑みを零しながら告げるその言葉は、字面だけを見ればまるで演劇の準備を嬉しそうに行う子どものセリフと捉えられるだろう。
だが、その言葉とは裏腹に、アザエルの周囲に纏い付く重苦しい空気が彼の心の奥底にある狂気を暗に示していた。
「――かしこまりました、アザエル様。このゼクス、その名が示すに相応しい働きと結果を我らが主に必ずや献上することをここに誓いましょう」
「ふふっ、頑張ってね。それじゃ、僕はこの辺で~」
再び胸に手を当て、恭しく礼をして誓いの言葉を口にするゼクスに見送られ、アザエルは上機嫌で部屋を出る。
「さて……では本格的に仕掛けるとしましょうか。まずは重要な舞台設定からですね……」
革張りの肘掛け椅子に再び腰を下ろしたゼクスは、深く息を吐いて独り言を呟くと、その瞼を閉じて意識を集中させる。
やがて彼の瞼の裏には、通りすがりのとある女子高生のグループが映し出された。
――アザエルより直々に冠された称号「七元徳」、その第六位を与えらたゼクス。ギシリと背もたれに身を預けた彼は、体内に埋め込まれた魔煌石の持ち主である魔物の力を行使し始める。
ゼクスが発動した力――それは端的に言えば「支配」の力だ。
彼は「楔」を打ち込むことにより、対象者を操ることができる。操作する意識レベルも任意に調整でき、人形のように意識と身体の自由を完全に奪うことから、対象の深層意識のみを操り本人が意図せずゼクスの利益になるように仕向けることも可能だ。
ただし、その制約も厳しく、完全に相手の意識と身体の自由を奪うには相応の時間が必要で、打ち込んだ楔の効果を全身に行き渡らせる必要がある。
また、対象者が何らかの契約によりその行動や意識が縛られていた場合、ゼクスの「支配」は限定的な効果しか及ぼすことができない。これは予め縛られている相手に後付けで支配権を及ぼそうとするためで、既に確立された主従関係を覆したり、その上下関係に割って入るのは相当な力技となるからだ。
このような場合、無理に支配の力を行使すれば、被支配者の自我が崩壊するばかりか、最悪自分がダメージを負う可能性も発生し得る。
――制約は多いが、条件次第では絶大な力をもたらし得る力。
それがゼクスに備わる力であった。
『……たち、魅神楽リゾートに行くの? いいなぁ……私も予定がなかったら行きたかったよ』
実際にその場にいるかのようなクリアな声がゼクスの頭に響き、次いでその場所の魅力や特徴を列挙する別の声が彼に届く。
(ふむ……アトラクションが多数あるテーマパークですか。なるほど……そこなら今回の舞台としてはまさにうってつけと言えるでしょうね。それに、テーマパークならば、観客やエキストラも充分。ならば――)
ゼクスは手に入れた情報を吟味しつつ、一人計画を練り始めるのだった。
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