黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第114話 Event & Invader⑦

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 悪夢の試練――「中間試験」を無事に乗り切った翌日。雲一つない快晴の中、ツグナたち一行は目的地である魅神楽リゾートの正門前広場にいた。
 この日は休日とあってか、開園30分前にもかかわらず、大勢の客で賑わっていた。

「凄いなこりゃ……」
「うわぁ……どこを見ても人・人・人、だね。う~ん……人が多すぎて酔いそうだよ」
 辺りを見回しながら呟いたツグナの発言に、隣にいるソアラが頷きながら言葉を漏らす。まさに黒山の人だかりと言える光景に、率直な思いを口にしたソアラの表情が若干青く染まる。
「ちょ、ちょっと大丈夫? 青い顔してるけど……でも、確かに凄いわね……まだ開園前なんでしょ? それなのにこんなに大勢の人がいるなんて」
 青い顔を見せたソアラを、キリアが優しく介抱しつつ、広場を埋め尽くす客の多さに二人と同じような感想を漏らす。

「うほーっ! ねぇねぇ、ここから見える、あのレールの山がジェットコースター? うーん! 早く乗ってみたい!!」
「こらこらアリア、あんまりはしゃぎ過ぎないの。まだ開いてもないんだから……」
 また、キリアの横ではアリアが出入り口から見える園内の光景に、今から開園が待ち遠しいと興奮し、隣にいるリーナが呆れ顔で優しく注意する。

「……チイッ。俺がいるから師匠だけで十分だと思ったんだけどな」
「その師匠からの頼まれたんだから仕方がないでしょ。」
 一方、大勢の客が開園を待ち遠しにしているなか、ツグナたちの後ろでは千陽と尊琉が睨み合い、園内に入る前から険悪なムードを漂わせている。

 そうした様々な表情を浮かべるなか、開園を告げる放送が辺りに響き渡った。


 ――魅神楽リゾート。そこは夢と希望、そして様々なエンターテインメントを集めた一大テーマパークだ。

 主要なキャラクターは、白ウサギの可愛らしい女の子「チャームラビット」と同じく黒ウサギのハードボイルドな男の子「ダンシングバニー」で、

 チャームバニーが自分のイケてない体型を改善しようと「決意」し、「行動」を起こし、時に思い通りにいかない自分自身に「失望」しながらも、最後に「希望」を掴むというコンセプトで

 「決意ディスィジョンエリア」はシアター系
 「行動アクション」エリア」はアトラクション系
 「失望フラストレーションエリア」はホラー系アトラクション
 「希望ホープエリア」は売店などが立ち並ぶショップエリア

 となっている。
 なお、ウサギの男の子「ダンシングバニー」は、「希望」に溢れていた良家のお坊ちゃんが、友人の裏切りから「失望」しつつも、再起を誓って「行動」し、壮大な夢を「決意」するというコンセプトがエリアを通じたコンセプトになっている。

(……つーかコンセプト重くね? こんなのがキャラの背景バックグラウンドって大丈夫なのかよ……)

 ツグナは事前にリーナが書店で購入していたガイドブックをパラパラと捲りつつ、ふとそんな感想を胸中に呟く。

(……うん。これはアレだな。「突っ込んだら負け」というやつだ。細かいことは気にしても仕方がないし、素直にアトラクションを楽しむことにするか……)

 ツグナは「最近の怒涛の日々で疲れてるんだな」とガイドブックをそっと閉じて先を歩く女性陣の後を追いかけた。

 開園後、ツグナたちは目当てのアトラクションを楽しみつつ、園内をゆっくりと散策していた。
「うはーっ! すっごく楽しかったあ~! お昼食べたらまた並ぼうかな~」
「うえ゛っ!? もう十回以上は乗ったと思うけど? わ、私はもう無理だよ……」
 ウキウキしながら呟いたアリアの言葉に、隣にいる千陽が顔を強張らせながら「勘弁して」と呻く。

「あ~、そろそろ昼飯の時間か……」
 時計を見たツグナは、ざっと園内の地図を眺めながらどんなものがあるのかと確認する。
「お昼ですか? それなら……この店はどうです? ここからも近いですし」
 スッと横から首を伸ばして彼の視界内に割って入った尊琉が広げていたマップの一点を指差す。

「ここは……カレーか」
 指差された店について、マップに記載された店の紹介文に目を落としたツグナがぽつりと呟く。
「そうです! ここはダンシングバニーの飼っている子豚の『プギィ』が大好物のカレーを提供しているっていうお店でなんですよ! 席数も多いし、この大所帯で食べるのに向いてるお店だと思いますよ?」
「へぇ……確かに席数が多いのは助かるな」
 前半の説明は置いといて、と頭につけるのは野暮だなと思いつつ、ツグナは尊琉の意見に頷き、近くにいたキリアたちに提案する。

「あっ、いいわね。私もそこがいいかなぁと思ってたから」
「さんせー!」
「私もツグ兄の選んだところで問題ないよ」
「私もアリアと同意見です」

 キリア、ソアラ、アリア、リーナの順でそれぞれから了承をもらったツグナは、マップを頼りに目的地に向かい始める。
 彼を先頭に歩き始めたキリアたちは、早速「お店で何を頼もうか」とメニュー決めの話題で盛り上がる。

「うん……と、このガイドブックによると、店の名前は『POOGY´S GARDEN』ですね。『ダンシングバニーのペットであり、相棒でもある子豚のプギィが足しげく通う隠れた名店! 絶品のポークカレーをご賞味あれ!』だそうですよ?」
「へぇ……確か、プギィのキーホルダーとか小さいぬいぐるみをカバンにつけてる子がいたわね」
 ガイドブックを開きながら説明文を読み上げるリーナに、キリアがふと思い出したようにポツリと呟く。
「あ~、そう言えば千陽も持ってるってクラスメイトから聞いたよ。プギィのぬいぐるみ」
「えっ!? あぁ……まぁそうね」
 アリアからの急な振りに、千陽は驚きながらも首肯する。

 そうした他愛もない話をツグナは背中越しに耳にしつつも、

(つーか、子豚が足しげく通う隠れた名店で出されるのがポークカレーって! これはアレか? 突っ込むこと前提なのか……?)

 などと場違いな思いを抱いていたのはここだけの話だったりする。
 そうした彼の心の内など露知らず、一行は目的地に向かって歩みを進めていった。

◆◇◆

 ツグナたちが休日を満喫しているなか、魅神楽リゾートの端にある「関係者立ち入り禁止区域」に一台の特殊車両が停車した。
「……到着いたしました、ゼクス様」
 先に車から降りたアルファが、軽く頭を下げながら扉を開ける。

「ふむ……事前にリサーチはしていましたが……これは予想以上ですね」

 開かれた扉から降りたゼクスは、耳に届く大勢の客の賑やかな声に率直な感想を漏らす。
「はい。本日は休日ですし、特に『観客』は多いかと。『エキストラ』も数多く揃えられるものと思われます」
「なるほど……それで、主役の方は?」
 アルファの言葉に小さく頷いたゼクスは、チラリと傍らに立つ彼女に目配せして訊ねる。

「ハッ! そちらは問題なく。先ほど配置が完了したとの連絡がありました」
「そうですか……ならば、速やかに次のフェーズに移しましょう。貴女は先に行きなさい。私も追って向かいます」
「承知いたしました……」
 静かに扉を閉めたアルファは、恭しくゼクスに一礼するとそのまま真っ直ぐに園内に向けて歩き出す。

「さて、では私も舞台に上がるとしましょうか」
 カチャリと音を立てながら眼鏡を掛け直したゼクスは、悠然と園内に向けて歩き始める。

 直後に訪れるであろう絶叫と混沌に胸躍らせながら――
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