黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第123話 支配と支配③

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「あ゛あ゛ああああっ! 百花繚乱っ!!」
  距離を詰めたツグナが竜顎刀を振るい、数多の斬撃がドラゴンロードに襲い掛かるも、そのすべてを高い防御力をもった深紅の骨が弾き返す。
「ギュオアアアアァァッ!」
「ぐっ!? ……んなろっ!」
 返礼とばかりにガパリと大きく口を開け、噛み砕こうと迫る相手の巨大な牙に、ツグナは空中で身を捻り、遠心力を効かせた刃をヒットさせ、弾かれた反作用を利用して辛くも攻撃を回避した。

 ズザザッ! と靴底をブレーキ代わりにして地に降り立ったツグナは、額から流れる汗を袖で拭いつつ呟く。
「ハハッ。ったく、あんだけの斬撃を受けながらも傷一つ付かないのかよ。防御力高過ぎだって――」
 発した言葉を最後まで言い切らず、口を大きく開いたドラゴンロードの前に浮かぶ深紅の球体にハッと気づいたツグナは、本能が告げるままに横っ飛びでその射線から離れる。

 瞬間、ドラゴンロードの砲声と同時に、形成されていた深紅の球体から一条の閃光が彼の横を通り過ぎていく。

「これが……紅血閃線クリムゾン・レイってヤツか? この破壊力……尋常じゃねぇな」
 ツグナはドラゴンロードが放った紅血閃線クリムゾン・レイの爪痕を視界に収めながらゴクリと生唾を飲み込んだ。
 さながら巨大なレーザービームと思えるその閃光は、射線上にあるものをすべて焼き尽くし、その衝撃が大地を割った。
 生身の身体で直撃しようものなら、一瞬で存在そのものが消し去られるほどのエネルギーと破壊力である。そう、それは文字通り「影も形もなく」だ。
 
(どうやら放つまでにはあるていどエネルギーを溜める必要があると思えるのが幸いだな……)

 襲って来た紅血閃線クリムゾン・レイに対し、自分なりの分析をしつつも、一歩間違えれば命を失う、そんなギリギリの攻防が続く。神経がひりつく紙一重の回避を繰り返し、少しずつでも攻撃の機会を窺うグナ。魔闘技と獅子闘気で身体能力を劇的に向上させているため、何とか致命傷は避けられているものの、それでも彼は綱渡りの攻防を止める気配はない。

 そんな巨大な体躯を誇るドラゴンロードに挑む彼の姿に、見ている者は「もう諦めろ」と声を掛けたくなるだろう。放つ攻撃が弾かれ、大したダメージも入っているように見えない相手に命をすり減らして挑むのは愚の骨頂だろう、と。

 しかし、彼の目や表情からは「諦め」の感情は微塵も感じられない。むしろ、「絶対に生き残ってみせる」という強烈な生への執着が彼の戦う態度から見て取れる。


 何が彼を突き動かすのか。
 ――それはあのイグリア大陸、転生を果たした当初に経験した壮絶な過去を乗り越えた経験と、その後に降りかかった様々な激闘を乗り越えた経験に裏打ちされた信念である。

 それが彼の「死に抗い、絶対に生き延びてやる」という強い生への執着を生んだ。

 イグリア大陸で過ごした彼は、長い間その身に宿す「黒」の髪と瞳の色から、「忌み子」としてのレッテルを貼られ、疎んじられた。時には罵詈雑言を浴びせかけられ、嘲笑される差別も受けた。

 そんな相手に対し、ツグナは自らの力を頼りに努力と精進を重ね、嘲り笑う輩を逆に見返すほどの力をつけて確固たる地位を築き上げたのだ。

 確かに、絶望的な状況に追い込まれた先で生きることに執着するのは、何だか泥臭くて醜いことと捉えれるかもしれない。
 けれども、潔く死を受け入れることが正解とは限らない。

 岸壁に爪を立てる思いで、必死に食らいつく思いで、不様とも滑稽とも思われる姿で生き延びた先――乗り越えた向こうには、新たな視野が広がっている可能性があるのだから。

「はああああああああああっ! 桜花、繚乱っ!」

 何度となく地に叩きつけられ、

「食らええっ! 百花繚乱っ!」

 それと同じくらい立ち上がり、

「だああああああああっ! 一閃万破!」

 満身創痍になりながらも巨大な敵に挑む。

 ――しつこいって? ハッ! 上等だ。
 ――もう無理だって? ふざけんなよ。
 ――もう諦めろって? だから何だよ。

 ――――――
 ………

 一時間、三十分、いやまだ十分かもしれない。
 すでにどれほどの時間が経過したのかも忘れ、ツグナはもう何度目かも分からないほどの攻撃を放つ。



 ――――――――――そして、

 ピシイィッ!

 彼の執着、信念――そして後ろに控える仲間たちの願いが、一つの形となって具現化した。
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