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本編
第127話 激闘の余波③
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「此の度はアザエル様のご期待に応えられず、誠に申し訳ございませんでした……」
とある施設内のある一画に設けられた一室。
重厚さと格調高い、艶のある漆黒の机と同色の革張りの肘掛け椅子が置かれたその部屋は、ゼクスの主たるアザエルの執務室だ。その椅子に腰かけていたアザエルに対し、ゼクスは両膝を床につけ、額を擦り付けるように土下座をしながら最大限の謝罪の念をその態度でもって現わしていた。
「ふむ。そろそろ面を上げて説明してくれない? ここ一時間ばかり、ずっと土下座を見せられてもこっちが困るんだけど……」
頬杖を突きながら気だるそうにつぶやくアザエルに、ゼクスはようやくその顔を上げた。
「ハッ! ではまず……こちらをご覧ください……」
顔を上げたゼクスは、部屋の扉のそばに控えていたアルファに目配せして命じる。
「承知しました。アザエル様、こちらを――」
机の前まで進み出たアルファは、ゼクスの命に従い、彼の前に一台のポータブルプレーヤーを差し出す。
そして、パカリと蓋を開けるようにしてアザエルに向けて画面を見せた彼女は、静かにプレーヤーの再生ボタンを押す。
当初は渋々、といった体で再生される映像を目にしていたアザエルであったが、再生してすぐ、ツグナが魔書《クトゥルー》を取り出し、従者たちの召喚及び顕現した従者たちをもとに混成召喚を行ったシーンからその顔つきがガラリと変化する。
また、彼が率いるレギオン「ヴァルハラ」のメンバーであるソアラ、キリア、リーナ、アリアの四人の女性たちが見せる高度な連携、魔法や技の数々に映像を見つめるアザエルがニヤリと笑みを零す。
そして――極めつけはゼクスによる「支配」の力を受けたソアラたちを解放せんと発動させた「大罪召喚」である。「色欲」と「傲慢」、そして対ドラゴンロードとの戦闘に発現した「憤怒」の大罪の力。
やがて流れていた映像が終了し、アルファはプレーヤー携えて再び元の位置に戻った。
「……なぁるほど。キミが敗北を喫したのも分かるよ」
備え付けの机の引き出しから一本の棒付き飴を取り出したアザエルは、飴を口の中で転がしながら先ほど目にした映像に対する感想を口にする。
「……はい。まさかあの少年が私を上回るほどの強大な力を持っているとは……完全に予想外でした」
「ふぅむ……あの映像に映っていた少年は、先日キミの部下たちが戦ったのと同じかい?」
「はい。間違いありません」
チュパッと音を立てて棒付き飴を口から離したアザエルが発した問いに、扉の横に立つアルファが頷きながら肯定を示す。
「そうかそうか……」
くるくると棒付き飴を手で弄びながら再び口の中に放り込んだアザエルは、返って来たアルファの言葉に、スッと口の端を持ち上げ、不気味さを孕んだ笑みを浮かべる。
「それは――実に面白い」
先ほどまでの露骨なまでの気だるさを見せていたアザエルは、すっかり上機嫌となってゼクスの失敗も咎めることなく二人を部屋に返す。
そして、執務室に一人きりとなった彼は、歯を見せて笑いながら嬉しそうに独り言を呟く。
「ふふっ……やっと、やっとだ。あぁ、やっと現れてくれた――僕の遊び相手が。数百……いや、数千年にも及ぶ長い年月を生きてきた僕の前に現れた相手だ。ゲームの舞台は既にある。駒も充分……さぁ、始めようか。人の世に堕ちた僕と神の力を手にしたキミとの命を賭したゲームを!」
バキリと棒付き飴を噛み砕き、ギラリと目を鋭くさせて笑ったアザエルは、「さて次はどうやって遊ぼうか」と嬉しそうに思案し始めるのだった――
とある施設内のある一画に設けられた一室。
重厚さと格調高い、艶のある漆黒の机と同色の革張りの肘掛け椅子が置かれたその部屋は、ゼクスの主たるアザエルの執務室だ。その椅子に腰かけていたアザエルに対し、ゼクスは両膝を床につけ、額を擦り付けるように土下座をしながら最大限の謝罪の念をその態度でもって現わしていた。
「ふむ。そろそろ面を上げて説明してくれない? ここ一時間ばかり、ずっと土下座を見せられてもこっちが困るんだけど……」
頬杖を突きながら気だるそうにつぶやくアザエルに、ゼクスはようやくその顔を上げた。
「ハッ! ではまず……こちらをご覧ください……」
顔を上げたゼクスは、部屋の扉のそばに控えていたアルファに目配せして命じる。
「承知しました。アザエル様、こちらを――」
机の前まで進み出たアルファは、ゼクスの命に従い、彼の前に一台のポータブルプレーヤーを差し出す。
そして、パカリと蓋を開けるようにしてアザエルに向けて画面を見せた彼女は、静かにプレーヤーの再生ボタンを押す。
当初は渋々、といった体で再生される映像を目にしていたアザエルであったが、再生してすぐ、ツグナが魔書《クトゥルー》を取り出し、従者たちの召喚及び顕現した従者たちをもとに混成召喚を行ったシーンからその顔つきがガラリと変化する。
また、彼が率いるレギオン「ヴァルハラ」のメンバーであるソアラ、キリア、リーナ、アリアの四人の女性たちが見せる高度な連携、魔法や技の数々に映像を見つめるアザエルがニヤリと笑みを零す。
そして――極めつけはゼクスによる「支配」の力を受けたソアラたちを解放せんと発動させた「大罪召喚」である。「色欲」と「傲慢」、そして対ドラゴンロードとの戦闘に発現した「憤怒」の大罪の力。
やがて流れていた映像が終了し、アルファはプレーヤー携えて再び元の位置に戻った。
「……なぁるほど。キミが敗北を喫したのも分かるよ」
備え付けの机の引き出しから一本の棒付き飴を取り出したアザエルは、飴を口の中で転がしながら先ほど目にした映像に対する感想を口にする。
「……はい。まさかあの少年が私を上回るほどの強大な力を持っているとは……完全に予想外でした」
「ふぅむ……あの映像に映っていた少年は、先日キミの部下たちが戦ったのと同じかい?」
「はい。間違いありません」
チュパッと音を立てて棒付き飴を口から離したアザエルが発した問いに、扉の横に立つアルファが頷きながら肯定を示す。
「そうかそうか……」
くるくると棒付き飴を手で弄びながら再び口の中に放り込んだアザエルは、返って来たアルファの言葉に、スッと口の端を持ち上げ、不気味さを孕んだ笑みを浮かべる。
「それは――実に面白い」
先ほどまでの露骨なまでの気だるさを見せていたアザエルは、すっかり上機嫌となってゼクスの失敗も咎めることなく二人を部屋に返す。
そして、執務室に一人きりとなった彼は、歯を見せて笑いながら嬉しそうに独り言を呟く。
「ふふっ……やっと、やっとだ。あぁ、やっと現れてくれた――僕の遊び相手が。数百……いや、数千年にも及ぶ長い年月を生きてきた僕の前に現れた相手だ。ゲームの舞台は既にある。駒も充分……さぁ、始めようか。人の世に堕ちた僕と神の力を手にしたキミとの命を賭したゲームを!」
バキリと棒付き飴を噛み砕き、ギラリと目を鋭くさせて笑ったアザエルは、「さて次はどうやって遊ぼうか」と嬉しそうに思案し始めるのだった――
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