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第5章
5話 【黒弧族】
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「黒弧族……、黒い狐の尾……」
希和は、二つの点と点を結びつけるように、つぶやいた。
「それじゃあ、あの転校生の黒柳くんは、黒弧族の人?」
言いながら希和は、今日の理科の授業中に起きた、黒柳の背後に見えた大きな尻尾の影を思い出していた。
「そいつは紛れもなく、黒弧族の末裔じゃ。希和」
トヨは、そう黒柳の正体を明らかにすると、まず、黒弧族に繋がる長い歴史を、順を追って話し始めた。
「太古の昔、弥生時代のことじゃ。狩猟や木の実などを取って食べる縄文時代が終わり、中国から伝わった稲作を中心とした、弥生時代に入った。田んぼの周りにクニと呼ばれる小さな集落がたくさん生まれた。じゃが、米の収穫量を巡り、クニどうしで争いが起きるようになった。初めは、男性の王が即位し、国を平定しようとしたが収まらず、国は乱れたそうじゃ」
トヨは、フゥーッとひと息つくと、話を続けた。
「そんな時、卑弥呼さまという、神の声を聞き、その声で国を治める巫女様が女王の座に就いたら、国の乱れは収まり安定したそうじゃ」
希和の真摯な顔を見ながら、トヨはなおも、
「その後、卑弥呼さまは亡くなり、男性が王位に就いたが、再び卑弥呼さまが即位される前のように、国が乱れた。そこで民衆は、今度はイヨさまという、卑弥呼さまの一族に当たる十三歳の少女を女王に据えた。そうしたら、ようやく国の乱れが収まったそうじゃ」
トヨは、何回か繰り返し希和に話した物語を、再び説明した。さらに、
「このイヨさまの後見人として選ばれたのが、おらが"白妙族"のご先祖さまじゃ。おらたちは、イヨさまの口を通し、卑弥呼さまのご霊言によって選ばれたのじゃ。じゃが、卑弥呼さま亡きあと、国を乗っ取ろうとしていた"黒弧族"、通称"クロ"にとって、おらたち"白妙族"、通称"シロ"は、目の上のタンコブのような存在なんだべ」
トヨは希和に、白妙族と黒弧族の確執の経緯を説明してくれた。
希和は、二つの点と点を結びつけるように、つぶやいた。
「それじゃあ、あの転校生の黒柳くんは、黒弧族の人?」
言いながら希和は、今日の理科の授業中に起きた、黒柳の背後に見えた大きな尻尾の影を思い出していた。
「そいつは紛れもなく、黒弧族の末裔じゃ。希和」
トヨは、そう黒柳の正体を明らかにすると、まず、黒弧族に繋がる長い歴史を、順を追って話し始めた。
「太古の昔、弥生時代のことじゃ。狩猟や木の実などを取って食べる縄文時代が終わり、中国から伝わった稲作を中心とした、弥生時代に入った。田んぼの周りにクニと呼ばれる小さな集落がたくさん生まれた。じゃが、米の収穫量を巡り、クニどうしで争いが起きるようになった。初めは、男性の王が即位し、国を平定しようとしたが収まらず、国は乱れたそうじゃ」
トヨは、フゥーッとひと息つくと、話を続けた。
「そんな時、卑弥呼さまという、神の声を聞き、その声で国を治める巫女様が女王の座に就いたら、国の乱れは収まり安定したそうじゃ」
希和の真摯な顔を見ながら、トヨはなおも、
「その後、卑弥呼さまは亡くなり、男性が王位に就いたが、再び卑弥呼さまが即位される前のように、国が乱れた。そこで民衆は、今度はイヨさまという、卑弥呼さまの一族に当たる十三歳の少女を女王に据えた。そうしたら、ようやく国の乱れが収まったそうじゃ」
トヨは、何回か繰り返し希和に話した物語を、再び説明した。さらに、
「このイヨさまの後見人として選ばれたのが、おらが"白妙族"のご先祖さまじゃ。おらたちは、イヨさまの口を通し、卑弥呼さまのご霊言によって選ばれたのじゃ。じゃが、卑弥呼さま亡きあと、国を乗っ取ろうとしていた"黒弧族"、通称"クロ"にとって、おらたち"白妙族"、通称"シロ"は、目の上のタンコブのような存在なんだべ」
トヨは希和に、白妙族と黒弧族の確執の経緯を説明してくれた。
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