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学校に行って、帰ったらゲームをして、編集する。あとは送られてきた台本を読み込んだり、フリーの台本でよさそうなものがないか探したり。SNSで配信予定を告知するのは必須だし、コメントをくれた人に返信なんかもしなくてはいけない。こまめな作業だが、意外と時間がかかる。それでも聞いてくれている人は大事にしたい。配信チャンネルは、鈴木の『居場所』なのだ。
(高野さん、昨日の配信は聞いてくれたのかな?)
相川と話をしている高野をチラリと見て、ふと思った。
昨日は、散々練習したあと、ゲリラで配信したのだ。高野が『かっこいい』なんていうから、なんというか声を変えたくなった。普段の声ではなく『サク』として話せば、みんなが褒めてくれる。
「あ、そういやさ、昨日、ゆりが言ってた『サク』って人配信してたよね? 聞いた?」
「あー、それ、聞けなかった。バイトだったんだよねぇ。ってなんで望美知ってんの?」
(ま、そんな毎回は聞かないよな)
ほんの少し、昨日も聞いてくれたかな、と期待してしまったけれど、配信者は数えきれないくらいるのだ。今でこそ、バイト以上に稼げるくらいには登録者数が増えたけれど、はじめたばかりのころなんて、覗きに来てくれてもすぐにいなくなる人もいて、聞いている人が一桁なんてことも珍しくはなかった。一人でもいるならまだいいけれど、誰も聞いていない日だってあったのだ。
高野と相川の会話の内容が気になるけれど、あまり見ていると変に思われそうだ。
ポケットからスマホを取り出して、ゲームアプリを開く。高野や相川みたいにリアルの生活に充実している人がうらやましいと思うこともあるけれど、鈴木にだって鈴木の趣味があるし、友達だっているのだ。人数は少ないけれど。
(あ、今村、またレベルあがってる)
今村と二人で配信するときは、対戦するものだったり、二人で協力してするゲームだったりするけれど、このゲームはそのどちらでもない。いろいろな素材を集めて自分の街を作るものだ。
落ちている石や木を拾い集めていたら、高野たちの声が大きくなった。
「聞いたの⁉」
(え? 何?)
気になって、手を止めた。
「うん。どんなのかなって思って」
「どれ? どれ聞いたの?」
「先輩と後輩のやつ」
(うわぁ……、なんか、もう……)
高野だけでなく、相川までも『サク』の配信を聞くなんて。スマホは握っているけれど、持っているだけだ。鈴木の意識は完全に高野立ちの会話に向いている。
「どうだった?」
「面白かったよ。セリフだってわかってても、ちょっとドキッとするよね」
そういった相川に高野が「でしょう?」と相槌を打つ。
(マジか……、いや、ほんと恥ずかしい)
褒められるのは単純に嬉しいけれど、知っている人に評価されるのは、照れくさい。こそばゆいなと思いながら、目だけを動かして高野たちのほうを見る。
「あ、そうだ。この間見たこれ、結構笑える」
これこれ、と言って相川がスマホを高野の前に差し出す。覗き込んだ高野が「どの人?」と言った。
(まあ、いろいろ見るよな、うん)
高野が見ているのは、『サク』の動画だけではない。当たり前だ。高野は村田の動画も見ているし、ほかの人のも見るだろう。動画配信は暇つぶしにもってこいなのだから。
聞いてくれているだけでも、ありがたい話なのだ。たまたま声がかっこいいと言われてたところで、それ以上でもそれ以下でもない。高野たちと鈴木は同じクラスにいるけれど、別次元に生きているみたいなものだ。
そりゃあそうだよな、と一人納得して、スマホを画面に視線を戻す。
(あ、鉱石落ちてる。拾っとこう)
(高野さん、昨日の配信は聞いてくれたのかな?)
相川と話をしている高野をチラリと見て、ふと思った。
昨日は、散々練習したあと、ゲリラで配信したのだ。高野が『かっこいい』なんていうから、なんというか声を変えたくなった。普段の声ではなく『サク』として話せば、みんなが褒めてくれる。
「あ、そういやさ、昨日、ゆりが言ってた『サク』って人配信してたよね? 聞いた?」
「あー、それ、聞けなかった。バイトだったんだよねぇ。ってなんで望美知ってんの?」
(ま、そんな毎回は聞かないよな)
ほんの少し、昨日も聞いてくれたかな、と期待してしまったけれど、配信者は数えきれないくらいるのだ。今でこそ、バイト以上に稼げるくらいには登録者数が増えたけれど、はじめたばかりのころなんて、覗きに来てくれてもすぐにいなくなる人もいて、聞いている人が一桁なんてことも珍しくはなかった。一人でもいるならまだいいけれど、誰も聞いていない日だってあったのだ。
高野と相川の会話の内容が気になるけれど、あまり見ていると変に思われそうだ。
ポケットからスマホを取り出して、ゲームアプリを開く。高野や相川みたいにリアルの生活に充実している人がうらやましいと思うこともあるけれど、鈴木にだって鈴木の趣味があるし、友達だっているのだ。人数は少ないけれど。
(あ、今村、またレベルあがってる)
今村と二人で配信するときは、対戦するものだったり、二人で協力してするゲームだったりするけれど、このゲームはそのどちらでもない。いろいろな素材を集めて自分の街を作るものだ。
落ちている石や木を拾い集めていたら、高野たちの声が大きくなった。
「聞いたの⁉」
(え? 何?)
気になって、手を止めた。
「うん。どんなのかなって思って」
「どれ? どれ聞いたの?」
「先輩と後輩のやつ」
(うわぁ……、なんか、もう……)
高野だけでなく、相川までも『サク』の配信を聞くなんて。スマホは握っているけれど、持っているだけだ。鈴木の意識は完全に高野立ちの会話に向いている。
「どうだった?」
「面白かったよ。セリフだってわかってても、ちょっとドキッとするよね」
そういった相川に高野が「でしょう?」と相槌を打つ。
(マジか……、いや、ほんと恥ずかしい)
褒められるのは単純に嬉しいけれど、知っている人に評価されるのは、照れくさい。こそばゆいなと思いながら、目だけを動かして高野たちのほうを見る。
「あ、そうだ。この間見たこれ、結構笑える」
これこれ、と言って相川がスマホを高野の前に差し出す。覗き込んだ高野が「どの人?」と言った。
(まあ、いろいろ見るよな、うん)
高野が見ているのは、『サク』の動画だけではない。当たり前だ。高野は村田の動画も見ているし、ほかの人のも見るだろう。動画配信は暇つぶしにもってこいなのだから。
聞いてくれているだけでも、ありがたい話なのだ。たまたま声がかっこいいと言われてたところで、それ以上でもそれ以下でもない。高野たちと鈴木は同じクラスにいるけれど、別次元に生きているみたいなものだ。
そりゃあそうだよな、と一人納得して、スマホを画面に視線を戻す。
(あ、鉱石落ちてる。拾っとこう)
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