好きなのは俺の声だけですか?

高羽流生

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 高野にかっこいいと言われた。

 声だけだけど。

 だからといって、何が変わるわけでもない。『その配信のサクって俺だよ』なんて自ら声をかけるような勇気は持ち合わせていないし、そもそも褒められたのは配信中の声で鈴木自身ではないのだ。

 わかっているけれど、やっぱりなんだかそわそわする。

 (あ、練習しなきゃ)

 自宅に戻った鈴木は、パソコンの前に座って送られてきた台本に目を通した。「あー、あー」と声を出して、台本の男はどんな声だろうとイメージを膨らませる。

「おはよう。今日、元気ないね。……うーん、もうちょっと掠れた感じかな?」

 セリフを読んでみて、鈴木は「ううん」と唸った。

 (っていうか、高野さんはどんな声が好きなんだろ?)

 台本を読むとき、鈴木は自分なりにキャラクターをイメージして声を変えている。少し大人びたようなキャラクターのときには、いつもより声を低くしているし、俺様タイプのキャラクターだと思ったときには、普段話すときよりも腹の奥に力を入れてはきはきした感じで声を出す。つまりは毎回声を変えているのだ。

 とはいっても、素人だし、なんとなく既存のアニメキャラの声を真似をするようなもの、なのだけれど、高野はどのタイプの声が気に入ったのだろう。

「かっこいい、ってことは、年上キャラ? いや、俺様系か? って、俺、気にしすぎだろっ! うわぁー、もうっ……」

 ぼそりと言ったあと、鈴木はわしわしと髪を掻いて机に肘をつき、喚いた。

(俺のバカっ……)

 もし、高野に向かって配信中の声で話しかけたとしたら、高野はどんな反応をするのだろう、ふとそう思ってしまって、ありえないだろ、と自らに突っ込みを入れた。

 台本に描かれている男たちはみな、女子にかっこいいと言われるような、いわゆるモテるキャラクターなのだ。間違ってもクラスの中で影みたいに存在している鈴木みたいなモブキャラではない。たとえ鈴木が声を変えて高野に話しかけてみたとしても、何をやっているのだと冷たい視線を向けられるに違いない。

「よ、よし。うん。もっかい練習しよ」

 日常ではモテなくとも、配信チャンネルでは違うのだ。鈴木の居場所は教室ではない。

 気持ちを切り替えてもう一度台本を読む。また「あー」と言って、イメージを声に出した。
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