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ハジマリの章
プロローグ
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「あぁっ…もう……!」
若い女が一人、薄暗い部屋の中でコントローラーを握りしめ悶えていた。
「なんて…なんっっって可愛いの!」
公式がおふざけで作ったエンドだったが、柊 もえ にとっては最高のエンドであった。
「あぁ…可愛いぃ…私の…私のっ!」
"竜の姫君~君と遠い彼方まで~"という、人気乙女ゲームの隠されたエンド。それは…
「私のドラゴンちゃん達が可愛すぎるぅ!」
END:竜の姫君
いかにもなエンドだが、内容は酷い。
そもそもこのゲームは貴族の多くが竜と契約する世界で、庶民でありながら聖の竜と契約を交わした主人公と魅力溢れる攻略対象達との恋愛ゲームである。
他のゲームと違うのは攻略対象だけでなく、契約しているドラゴンとも親密にならなくてはいけない、という点だ。
強い力を持ち、時に人の姿をとり、契約主の近くにはべるドラゴン達の信頼を勝ち取ることで初めてハッピーエンドを迎えられるのだ。
しかし、もえはゲームが始まってからドラゴン達のいる「竜舎」に通い続けた。攻略対象も、ライバルキャラもガン無視して。
その結果、ドラゴン達に囲まれて幸せに暮らしましたとさ★ちゃんちゃんっ!みたいなエンドを迎えてしまったのである。
「あぁぁぁ…素敵!私も空を飛んでみたいなぁぁぁ…!」
そんなことをぼやきながら、ニヤニヤとベッドにダイブした。
ぼふんっと布団に埋もれ、もえはそのまま意識を失った。
ゴウゴウと音を立てる強風がぶつかってきたことで目を覚ました。
目の前には青い空が広がり、眼下には森が広がっていた。横をむけば鱗に覆われた漆黒の翼がバッサバッサと音を立てている。
つまるところ、もえはドラゴンになっていた。
「んぇ?うわぁ…あは、あははっ楽しい!気持ちいいぃぃ!」
叫んでみたが、グオオオオオと鳴き声になっただけであった。
しかし、こんなのが現実であるはずもなく。
この夢、さいっこぉぉ!という思いをこめてもえは叫んだ。
グガァァォォォオオ!!!
それから何時間、いや何日飛び続けたのか。
ついに眼下の森が途切れ、小さな街が見えてきた。
…ドラゴンの姿で街に降りるのは些か危ないだろうか。
夢の中なら…と、もえは人型をとることにした。が、飛んでいる最中にそんなことをしようとしたら結末など分かりきっている。
「ああぁあぁぁああぁ…!」
落ちた。それも勢いよく。
ドガッという音と共に大きな衝撃が体に走りそのまま意識を失った。
若い女が一人、薄暗い部屋の中でコントローラーを握りしめ悶えていた。
「なんて…なんっっって可愛いの!」
公式がおふざけで作ったエンドだったが、柊 もえ にとっては最高のエンドであった。
「あぁ…可愛いぃ…私の…私のっ!」
"竜の姫君~君と遠い彼方まで~"という、人気乙女ゲームの隠されたエンド。それは…
「私のドラゴンちゃん達が可愛すぎるぅ!」
END:竜の姫君
いかにもなエンドだが、内容は酷い。
そもそもこのゲームは貴族の多くが竜と契約する世界で、庶民でありながら聖の竜と契約を交わした主人公と魅力溢れる攻略対象達との恋愛ゲームである。
他のゲームと違うのは攻略対象だけでなく、契約しているドラゴンとも親密にならなくてはいけない、という点だ。
強い力を持ち、時に人の姿をとり、契約主の近くにはべるドラゴン達の信頼を勝ち取ることで初めてハッピーエンドを迎えられるのだ。
しかし、もえはゲームが始まってからドラゴン達のいる「竜舎」に通い続けた。攻略対象も、ライバルキャラもガン無視して。
その結果、ドラゴン達に囲まれて幸せに暮らしましたとさ★ちゃんちゃんっ!みたいなエンドを迎えてしまったのである。
「あぁぁぁ…素敵!私も空を飛んでみたいなぁぁぁ…!」
そんなことをぼやきながら、ニヤニヤとベッドにダイブした。
ぼふんっと布団に埋もれ、もえはそのまま意識を失った。
ゴウゴウと音を立てる強風がぶつかってきたことで目を覚ました。
目の前には青い空が広がり、眼下には森が広がっていた。横をむけば鱗に覆われた漆黒の翼がバッサバッサと音を立てている。
つまるところ、もえはドラゴンになっていた。
「んぇ?うわぁ…あは、あははっ楽しい!気持ちいいぃぃ!」
叫んでみたが、グオオオオオと鳴き声になっただけであった。
しかし、こんなのが現実であるはずもなく。
この夢、さいっこぉぉ!という思いをこめてもえは叫んだ。
グガァァォォォオオ!!!
それから何時間、いや何日飛び続けたのか。
ついに眼下の森が途切れ、小さな街が見えてきた。
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夢の中なら…と、もえは人型をとることにした。が、飛んでいる最中にそんなことをしようとしたら結末など分かりきっている。
「ああぁあぁぁああぁ…!」
落ちた。それも勢いよく。
ドガッという音と共に大きな衝撃が体に走りそのまま意識を失った。
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