乙女ゲーの世界でツンデ令嬢を溺愛する

赤色愛好家

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ハジマリの章

ここは現実?

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目がさめると知らない天井だった。

「………は?」

もえは思わず声をあげた。

「あら、起きたのね。」

声のした方を見ると美幼女がいた。
縦ロールの金髪に吊り上がった蒼目だ。
ふふん、と得意気に笑う様子は、まさに"竜の姫君"の悪役、フィフィリアのようで…

「私はフィフィリア・イディアよ!」

はい確定。
どうやらこれは乙女ゲーの世界に転生(?)♡という展開らしい。

「あなた!名前は?」

「あ、柊もえです…。」

「そう。ヒイラギ!今日から私の下僕となる権利をあげるわ!喜びなさい!」

「いや、もえが名前なんですけど…ナンデモナイデスハイ!」

ここでフィフィリアのことを捕捉しておこう。
まず、ゲームの設定では契約している竜はいないものの、第一王子の婚約者であるため同じ学園に通っていた。
しかし契約竜がいないことがコンプレックスで主人公を虐めるのだ。
性格はワガママで残酷。見た目もゴテゴテとした典型的な悪役令嬢である。

しかし、もえは彼女のこともあまり知らなかった。何故ならドラゴンに夢中だったから。
ちなみに攻略対象達のこともよく知らない。何故ならドラゴンに夢中だったから。

ここでもえに魔がさした。
ここは異世界だ。というか多分夢だ。ちょっとくらいはっちゃけてもいいかもしれない。
設定をいじってみたらどうなるのか。
だから、ほんの軽~い気持ちで。

「私…ドラゴンなの。契約する気はない?」

フィフィリアが目を見開いて固まった。
目の前の人間がドラゴンだと言われて驚かない人もそうそういないだろう。
しかし、竜と契約することに異存があるわけもなく。

「い、いいわ。契約してあげる…!」

震えながらも歓喜の声をあげた。
よほど嬉しかったのか、バラ色になった頬が緩みきっている。
キラキラと見上げてくる美幼女に、もえはあっけなく陥落した。

(…え?あれ?この子悪役だよね?可愛くね?いや、可愛い!可愛いよフィフィたん!)

「じゃ、じゃあさっさとやっちゃおうか。」

フィフィリアの手を取って手首をなぞる。
じわじわと紋章が浮き上がってきた。
なぞるたびに濃くなっていく。
この印は、この人間は私のもの!と示すもので、いわゆるマーキングである。
カッと光ったかと思えば手首には黒薔薇が描かれていた。

「うん!出来た出来た!これからよろしくね…ぇと、フィフィって呼んでいい?」

流石にフィフィたんはマズイだろうと遠慮したのだが…。もえの問いかけには答えず、フィフィリアは自分の手首を食い入るように見つめていた。
気に食わなかったかと心配になり顔を覗き込むと、ぼろぼろと涙をこぼし始めた。

「ぁ…あ…わた、わたくし…っ」

どんな弱小貴族でも契約竜を持っている者がほとんどの世界で、この小さな女の子がどれほど苦悩してきたかはわからないが…。

「もう…もう大丈夫だよ。私が守るからね、安心して…私のフィフィ。」

もえがこの世界でフィフィリアを守ることを決意するには十分な出来事であった。






なんとなく流されてしまった感が否めないが、ここは夢の中の筈だ。
もえは一度冷静に考えることにした。

(目の前にいるフィフィはイキイキとしていて現実のようだし、自分に魔力らしきものが流れているのもわかるけれど。私には身寄りがなくて悲劇のヒロインぶってた時期もあったけれど。まさか…まさか、ね?)

もえは自分の頰をムギュッとつねってみたがやはり痛みは感じない。

(あぁ…なんだ夢なのか。安心したよーな、残念なよーな…。)

ブッチィ

「…んぇ?」
「……いやァァァ!!」

手には頰の感触に加えてヌルッとした何かが…

「…アアアァァァァァ!!」

もえの頰はもげた。
ドロドロとした暖かいナニカがここがリアルだと主張していた。

顔面蒼白なもえの目の前でとうとうフィフィが倒れた為、片手で頰を抑え、片手でフィフィを支えるというカオスな状況に陥ってしまった。

(治れ治れ治れ治れ治れ治れェ…!)

もえの祈りが通じたのかどうなのか。
頰がグチグチと嫌にリアルな音を立てて元に戻り始めた。

てんやわんやな現場が落ち着いた頃、目を覚ましたフィフィに土下座をする少女がいた。

その少女はのちにこう語る。

「いやぁ、あの時は流石に生きた心地がしませんでしたよ!でもそのおかげでここが現実たと理解出来ました!たまには力技も必要なのかなって…思った瞬間ですね。」
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