888マイルの奇跡

かふぇもか

文字の大きさ
3 / 12

語り

しおりを挟む
「あ、お兄ちゃん。もう大丈夫なの?」
「大丈夫、かな。ところで愛梨、この世界にVRMMORPGってあるの?」
「ぶいあーる? 何それ?」
「いやいや、頭に被ってゲームの世界に入り込むやつだよ」
「それって、ちゅうにびょうってやつかな? お兄ちゃん、そんな趣味あったの……?」
「嘘だろ……、VRMMORPGがないなんて、こんなの現実じゃない……」

 絶対にこの世界からの脱出方法を見つけてみせる。
そう、俺は心の中で誓った。

 そういえば、セーブ&ロードが出来るんだったな。
 俺は、玄関で人差し指を縦に振って、メニュー画面を呼び出した。
 当然、愛梨には空間に映し出されている、画面は見えるはずもなく、何やってるの? という目で、俺を見ていた。

 ADVゲームは、何個もセーブが出来るものだと思っていたが、その項目は一つしかなかった。
 なんて不便なんだと思いつつ、セーブボタンを押してみると、画面に、『4月5日火曜 7時50分』という項目が追加された。

「お兄ちゃん、今日は学校休んで病院行こうか……?」
「い、いや! ほんとに大丈夫だから!!」
「そう? どっか違和感とか感じたらすぐ愛梨に言ってね?」
「う、うん……」
 愛梨はそう言うと、玄関を開けて、外に出て行った。
 俺も、外に出たが、やはり外の風景も、俺の知っている東京の街とは、違うものだった。


 愛梨の後ろにぴったりくっついて、道を歩いていたら、5分も経たないうちに、坂の上に学校が見えた。
 坂道の途中は、桜の木のトンネルのようになっていて、とても綺麗だと感じた。

『気づけば、海人は高校2年になっていた』

「?!」
 突然、俺の頭の中に、物語の最序盤に流れるような、謎の声が聞こえだした。

『ただ、海人の心には焦りだけが浮かんでいた。このまま何も起きずに、残りの2年間をただ、無意味に過ごしていくのだろうか……? 』

 頭の中から、知らない声が響いて、本当に気分が悪くなった。
その謎の声は、止まらずにいまだ頭の中に響いてくる。

「あ、あの!」

 また、後ろから愛梨の声じゃない、見知らぬ女の声が聞こえた。

「愛梨! 遅刻するから急ぐぞ!!」
「え、まだ時間ちょっとだけあるよ。それに、あの人お兄ちゃんのこと呼んでたよ?」
「いや、俺にあんな知り合いはいない。とりあえず、さっきから変な語りが頭の中で響いて気持ち悪いから、さっさと行くぞ」
「なんのこと、お兄ちゃん? もしかして幻聴……?」
 また愛梨はいらぬ心配をしたが、すぐに愛梨の腕を掴み高校の玄関まで走りだした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...