888マイルの奇跡

かふぇもか

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水島秋人

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 玄関の中には、ホワイトボードが置いてあり、学年のクラス別に名前が書かれた紙が貼られていた。
「お兄ちゃん、さっきの人に謝っとかないとだめだよ?」
「わかったわかった、あとでな」
 適当にそう返事をした。実際に謝りに行く気はさらさらなかった。
 そもそも、全く知らないやつだしな。

「愛梨は1年だからー」
 そう愛梨が呟いた。 さっきの変な語りで、俺は2年ということが分かったから、2年のクラスで俺の名前があるか探した。
 すぐにそれは見つかった。

 2年3組、阿澄海人あすみかいと

 名字まで俺の本名と同じだった。
 ということは、妹の本名は、阿澄愛梨あすみあいりという名前になる。

「愛梨は1年1組だったよ!」
「そういえば、入学式ってもう終わったんだっけ?」
「えっ、昨日の4月4日にちゃんとやったじゃん、愛梨は1年だからちゃんと参加したよ?」
 また、愛梨は不思議そうな目で見てきたが、愛梨は、「じゃあ私もう行くね!」と言って、駆け出して行った。

 やっと、一人になれた。

 俺は、玄関の自販機にあるジュースを買って一服しようとしたが、後ろから肩を叩かれて、振り返った。

「よう、カイ! 今年も同じクラスだな!!」
 後ろにいた男は、背が高い、顔だちの良いイケメンだった。
 見た感じ、明るそうな青年で、生徒会長でもやってそうな、俺の嫌いなタイプのやつだ。
 こういうやつは、俺みたいなニートを同情して、無理に話しかけてくる。

 正直迷惑な人種だ。

「お前、名前は?」
「は? 何言ってんの、水島秋人みずしまあきひとだよ、お前の親友を忘れたのか?」
「悪いけど、俺に親友はいない。今すぐ失せろ」
 そう言って俺は踵を返した。

 最高に決まったぜ、と心の中でそう思いながら、俺のクラスである2年3組に向かおうとした。

「ちょ、ちょっと! カイ、お前まだ土足だろ、意味不明なこと言ってないで、内履きに履き替えるぞ」
「そ、そういえばそうだったな」

 水島に言われて、今更内履きに履き替えなきゃいけないことに気づいた。
 せっかく、かっこよく決めたのに台無しである。
 俺のことを“カイ”とあだ名で呼ぶあたり、本当に仲のいい関係なのかもしれない。

 てか、俺の靴箱ってどこだ?

 水島は、すでに内履きに履き替えていた

「悪い、久々すぎて靴箱の場所忘れたんだ、どこか覚えてない……?」
「はぁ…… カイ大丈夫か?」
 水島は溜息をついたが、素直に靴箱の場所を教えてくれた。

「まあ、一応礼は言っとくよ、ありがとな」
それだけ言って、俺は2年3組に向かおうとした。

「いやいや、同じクラスなんだし一緒に行こうぜ」
 また肩を掴んできた。
 正直、鬱陶しかったが、よく考えると俺はクラスの場所を知らないため、素直についていくことにした。

 水島に連れだって、人の多い校舎を3階まで上がり、やがて2年3組という札が掛けられた教室が見えてきた。

 ドアには、一人一人の座席位置が書いてある紙が貼ってある。
 阿澄海人という名前は、案外すぐに見つかった。

 窓側の一番前の席だ。

「カイとは席が離れたなー」
「いや、むしろ俺にとっては好都合なんだがな」
「ん? なんか言った?」
「いや、何も……」

 水島は、自分の席に向かって歩いて行った。

 俺も、自分の席まで歩いていき、静かに椅子に座った。
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