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森の精霊とオオカミ
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アレンは、家を出発して断食の聖の館へ向かった。
これからの希望に満ち満ちていたので、悲しくはなかった。
途中、深くなってゆく森を進んでいると、オオカミの遠吠えが聞こえて来たが、彼は臆する事なく前進した。
不思議と恐れは微塵もなかった。
(フム、夜の森を独りで歩いている馬鹿な人間が来たぞ、よし、今日の夕食にして食ってしまおう)
オオカミが静かにアレンの背後に廻って飛びかかろうとした時、森がオオカミの心に叫んだ!
「オオカミよ!」
「だれだ!」
「私はこの森の守護精霊だ」
「フン、メシの邪魔をするな!」
「バカモノ! このお方を誰と心得る」
「オレの今日の晩メシ様だよ」
「このお方はな、誰あろう断食の聖様だ」
「お前がこの森の守護精霊と言うのは嘘だな、オレはこの先の聖の館の片隅に住んでいるのさ、断食の聖はさっき晩メシを食って寝た所さ」
「館の聖は偽物だ、このお方こそ本物の聖なのだ、その気になられたらお前なぞ一息でかき消されてしまうぞ、嘘だと思うなら飛びかかって見るが良い、とめだてはしない」
「そのつもりだぜ、トンチキが」
呻き飛びかかろうとするオオカミの前を、アレンは悠々と歩いて行った。
オオカミはひるがえってアレンの背中目掛けて飛びかかった。
ドウン、ドスッ。
「オーン、オーン」
オオカミは見えない壁にぶつかって落っこちた。
異音に気づいたアレンが後ろを振り返ると、血塗れのオオカミが横たわっていた。
「おい君、一体どうしたのだ」
アレンがオオカミを抱き上げると、鼻と右前足が折れて出血していた。
(可哀想に、どうしてこうなったのだ、とにかく断食の聖様の館へ急ごう、医者がいるかも知れない)
アレンは血塗れのオオカミを抱きかかえて走り、館の門を叩いた。
「ゴメン下さーい!」
反応が無い。
アレンはオオカミを助けたかったので、大きな石を見つけて門にぶつけ始めた。
「コラッ、何奴だ!」
横の隠し扉から、門番のサフが顔を出した。
「あ、私はアレンと申します。聖様に弟子入りしたいのですが」
「こんな夜中に弟子入り願いする馬鹿がおるか! 朝に出直して来るが良かろう」
「はい、それは分かりました、しかし、せめてこのオオカミをお医者様に見せて頂けませんか?」
バタン。
血塗れのオオカミを見たサフは、問答無用で扉を閉めた。
「冷たいものだ、これが本当に聖者の屋敷なのか?」
「よし友よ、今夜は川辺で一夜を明かそう!」
アレンはオオカミに語りかけ、川辺へ向かった。
出血で消えそうになっているオオカミの命を、アレンの優しさと温もりが繋いでいた。
オオカミは、精霊の忠告を無視した事を深く反省していた。
本当にアレンこそ聖者である事を知ったからである。
アレンは、オオカミの傷を川の水で洗ってあげ、適当な木の枝を折れた足に当てて固定した。
また、木の実をすり潰して夕食とし、オオカミにも与えた。
アレンは一安心して眠りについた。
これからの希望に満ち満ちていたので、悲しくはなかった。
途中、深くなってゆく森を進んでいると、オオカミの遠吠えが聞こえて来たが、彼は臆する事なく前進した。
不思議と恐れは微塵もなかった。
(フム、夜の森を独りで歩いている馬鹿な人間が来たぞ、よし、今日の夕食にして食ってしまおう)
オオカミが静かにアレンの背後に廻って飛びかかろうとした時、森がオオカミの心に叫んだ!
「オオカミよ!」
「だれだ!」
「私はこの森の守護精霊だ」
「フン、メシの邪魔をするな!」
「バカモノ! このお方を誰と心得る」
「オレの今日の晩メシ様だよ」
「このお方はな、誰あろう断食の聖様だ」
「お前がこの森の守護精霊と言うのは嘘だな、オレはこの先の聖の館の片隅に住んでいるのさ、断食の聖はさっき晩メシを食って寝た所さ」
「館の聖は偽物だ、このお方こそ本物の聖なのだ、その気になられたらお前なぞ一息でかき消されてしまうぞ、嘘だと思うなら飛びかかって見るが良い、とめだてはしない」
「そのつもりだぜ、トンチキが」
呻き飛びかかろうとするオオカミの前を、アレンは悠々と歩いて行った。
オオカミはひるがえってアレンの背中目掛けて飛びかかった。
ドウン、ドスッ。
「オーン、オーン」
オオカミは見えない壁にぶつかって落っこちた。
異音に気づいたアレンが後ろを振り返ると、血塗れのオオカミが横たわっていた。
「おい君、一体どうしたのだ」
アレンがオオカミを抱き上げると、鼻と右前足が折れて出血していた。
(可哀想に、どうしてこうなったのだ、とにかく断食の聖様の館へ急ごう、医者がいるかも知れない)
アレンは血塗れのオオカミを抱きかかえて走り、館の門を叩いた。
「ゴメン下さーい!」
反応が無い。
アレンはオオカミを助けたかったので、大きな石を見つけて門にぶつけ始めた。
「コラッ、何奴だ!」
横の隠し扉から、門番のサフが顔を出した。
「あ、私はアレンと申します。聖様に弟子入りしたいのですが」
「こんな夜中に弟子入り願いする馬鹿がおるか! 朝に出直して来るが良かろう」
「はい、それは分かりました、しかし、せめてこのオオカミをお医者様に見せて頂けませんか?」
バタン。
血塗れのオオカミを見たサフは、問答無用で扉を閉めた。
「冷たいものだ、これが本当に聖者の屋敷なのか?」
「よし友よ、今夜は川辺で一夜を明かそう!」
アレンはオオカミに語りかけ、川辺へ向かった。
出血で消えそうになっているオオカミの命を、アレンの優しさと温もりが繋いでいた。
オオカミは、精霊の忠告を無視した事を深く反省していた。
本当にアレンこそ聖者である事を知ったからである。
アレンは、オオカミの傷を川の水で洗ってあげ、適当な木の枝を折れた足に当てて固定した。
また、木の実をすり潰して夕食とし、オオカミにも与えた。
アレンは一安心して眠りについた。
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