わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。

8.

　リディアとヴィレムはエリオットたちをどうするのかを具体的に話し合った。話し合いの結果、この後すぐにはっきりさせることになった。
　特にヴィレムはモヤモヤした気持ちを抱えたまま過ごすことはできないと、すぐに話し合うことを希望し、リディアも了承した形だ。

　＊＊＊

　部屋には四人がそろっている。リディアとヴィレムの表情は硬い。いざ、二人を前にするとヴィレムもどう切り出せば良いのか迷っているようだった。そんな二人の様子にエリオットは不思議に思いながら会話を切り出した。

「ヴィレム、どうしたんだい？　そんな顔をして。エレインも昨日のことは悪いと思っているよ。君がそんな顔をしていたらエレインも素直になれないと思うぞ」
「エリオット、昨日のことってどのことだ？」
「そりゃあ、昨日の夕食のことだよ」
「エレインはすでに十分素直じゃないか。自分の気持ちに素直に自由にやっている。そして、君もね」
「何を言っているんだい？」

　ヴィレムの言葉に、エリオットは何かを察したのかもしれない。少しうろたえながらも取り繕うとしている。

「取り繕わなくてもいいよ、エリオット」
「取り繕ってなんかいないさ」
「君たちは浮気してるだろう？　君たちは本当に仲が良い」
「急に何を言うんだよ。エレインと仲が良いのは昔からだろ」
「見たんだよ、昨日」
「何をだ？」
「最後まで言わないとわからないかい？」
「リディアもいるんだぞ。誤解したら困るだろ」
「誤解なんてしないよ。その場にリディアもいたんだから。まさか別荘に来て、あんなものを見せられると思わなかったよ」

　ヴィレムの言葉にエリオットは顔色を変えた。観念したらしく、エリオットは急に態度を変えてきた。

「だからなんだって言うんだ？　僕たちは昔から愛し合っていたんだ」
「開き直るのか？　君はリディアと結婚していて、エレインは僕と結婚している。おかしいと思わないのか」
「思わないわよ。わたしはエリオットと結婚したかった！　でも、お父様が許してくれなかった」

　急に口を開き、エレインは感情をあらわにした。エレインの言葉にヴィレムが傷ついた顔をする。

「エレイン……」
「あなたと結婚すれば少しでもエリオットの近くにいられる。それに、お父様が決めた結婚でも知らない人と結婚するよりマシだもの」

　エレインの言葉にヴィレムはショックを受ける。そんなに自分と結婚したくなかったのかと。そして、結婚しても自分に全く気持ちが向かなかったのかと。

「僕だってエレインと結婚したかったさ。でも、こちらもその許しがもらえなかった。エレインにヴィレムとの子供が出来ればまだ諦めがついたさ。僕にだって子供はいない。爵位も継いだし、僕たちがやり直したっていいだろ」
「じゃあ、なんでリディアと結婚したんだ。そんなにエレインが良いなら結婚しなければよかっただろう」
「結婚したら爵位を譲ると言われていた。黙っていれば勝手に結婚の話を進められそうになっていた。結婚しないなら、親戚に爵位を譲ると。エレインを諦めさせようとしたんだろうな。だから僕は自分で相手を探すと時間稼ぎをした」
「エリオット、おまえ……」
「リディアは丁度良かった。実家の力が弱く、こちらのことは何でも受け入れてくれる。いざというときは離婚だってできる。とにかく僕には爵位が必要だった。もし、家を追い出されたらエレインに会えなくなる」
（あぁ、やっぱりわたしはエリオット様に愛されていなかったんだわ。どうしてわたしなんかを選んでくれたのかわからなかったけれど、やっとわかった……）