23 / 37
パーティー
第二十三話 パーティー1
しおりを挟む
「暑い……暑い……」
「桂咲、さっきからうるさいぞ。口を閉じろ」
「なんだよ。オマエだって暑いだろ」
「クーラーがついているとはいえ、暑いことは認める。だが口を閉じろ」
「暑いって言わなきゃやってられるかよ」
「心の中で留めろ」
「心の中に留めたら、心の中が暑くなる」
「ああ言えばこう言うだな」
後期授業は二限目の英語の授業から始まった。神楽小路と、その後ろの席の桂は目を合わすことなく、会話をしている。神楽小路は読書をし、桂は机に突っ伏し下敷きで扇いでいる。
「さっきからお前が作り出す風が俺の髪にあたって大変不愉快なのだが」
「あ? 下敷きで風作ってオマエにも届けてやってんだろ。むしろ感謝すべきじゃん?」
「頼んでいない」
「じゃあ、髪切って来いよ。いっそ坊主にしたら涼しいぞ」
「絶対に切らん」
「てか、暑くないの? 髪長くて、もっこもこで」
「お前に心配される筋合いはない」
「心配してねぇし。ワタシの隣のコイツだってくせ毛でもっこもこだけど、月一でカットしないと不機嫌になるぞ」
「突然巻き込まないでもらえますか? 僕は神楽小路くんと桂さんの口論を傍観者の立ち位置でいたいんです」
急に話題という名のリングに上がった駿河は、今度提出を考えている小説のプロット作りにかかっていた。シャーペン片手にルーズリーフと取っ組み合いをしている。
「駿河総一郎、お前が桂咲を止めない限り、俺は読書が出来ん。なんとかしろ」
「そう言われましても、桂さんが僕の言うことを聞くとでも?」
「……」
「……でしょう?」
「オマエら、ワタシのことどう思ってるのか言っていけよ。一発ずつ蹴りいれてやるからよ」
「おはよう、みんな~。久しぶりだ~」
ここで神楽小路にとって救いの女神・佐野真綾が席に着いた。タオルで汗を拭き取りながら、みなの顔を見渡す。
「今、楽しそうにお話ししてたけど、なんだか知らない間にみんな仲良しになったの?」
「おう仲良しだぞ! な! 神楽小路」
「お前と会話するのは今日で二回目だが?」
「二回も話してたらもう仲良しなんだよ」
苦虫を噛み潰したような表情の神楽小路をよそに、
「楽しそうでなによりだよ」
と佐野は嬉しそうにしている。夏季休暇に入る前と何ら変わらない彼女の姿に神楽小路はどこか安心した。
「暑いから、なんかおいしいもん食べて元気になりたい」
「だねぇ。毎日暑いもんねぇ」
「暑すぎてなかなかキッチン立つのも嫌になるよな」
「うんうん、キッチンってなんで空調届かないんだろうね」
「だからといって、桂さんは僕の家にご飯を乞食しに来るのやめてもらえないですかね」
「お前は涼しい顔して料理出来てるんだからいいだろ」
「僕も暑い中頑張って自炊してるんですよ。……ああもう言い返すだけで暑くなります」
桂が突然何かひらめいたように手をたたいた。
「なぁ、ホームパーティーやろうぜ。ご飯食べて遊んだら元気が出るだろ。真綾は、少し遠いし泊っていけよ」
「泊っていいの? 楽しみ!」
「駿河は強制参加な」
「はいはい、了解です」
「おい、せっかく居合わせてるんだ。神楽小路も来るよなぁ?」
「断る」
「はぁ~残念だな。駿河も真綾も来るのによぉ」
「神楽小路くんもご予定がありますし」
大学内で話すならまだしも、わざわざ休みの日に会うのは気が進まなかった。
すると、
「わたし、料理作るよ!」
佐野は勢いよく挙手した。神楽小路、桂、駿河、教室にいた全員の注目を浴びる。視線を感じ、そろそろと手を下げて、
「咲ちゃん、泊めてくれるお礼にご飯つくるよ」
「え! それじゃあ、一緒に作ろうぜ。その方が楽しいし」
「だから、神楽小路くんも食べに来ない?」
神楽小路はようやく読んでいた本から顔を上げた。
「……参加する」
「やったー! 楽しみだね、咲ちゃん、駿河くん」
「どういう風の吹きまわしっつーか、手のひら返しつーかわかんねぇけど。じゃあ参加人数は四人な。いろいろ決めていこうぜ」
授業が始まるまでにトントン拍子で計画は進められていった。
「桂咲、さっきからうるさいぞ。口を閉じろ」
「なんだよ。オマエだって暑いだろ」
「クーラーがついているとはいえ、暑いことは認める。だが口を閉じろ」
「暑いって言わなきゃやってられるかよ」
「心の中で留めろ」
「心の中に留めたら、心の中が暑くなる」
「ああ言えばこう言うだな」
後期授業は二限目の英語の授業から始まった。神楽小路と、その後ろの席の桂は目を合わすことなく、会話をしている。神楽小路は読書をし、桂は机に突っ伏し下敷きで扇いでいる。
「さっきからお前が作り出す風が俺の髪にあたって大変不愉快なのだが」
「あ? 下敷きで風作ってオマエにも届けてやってんだろ。むしろ感謝すべきじゃん?」
「頼んでいない」
「じゃあ、髪切って来いよ。いっそ坊主にしたら涼しいぞ」
「絶対に切らん」
「てか、暑くないの? 髪長くて、もっこもこで」
「お前に心配される筋合いはない」
「心配してねぇし。ワタシの隣のコイツだってくせ毛でもっこもこだけど、月一でカットしないと不機嫌になるぞ」
「突然巻き込まないでもらえますか? 僕は神楽小路くんと桂さんの口論を傍観者の立ち位置でいたいんです」
急に話題という名のリングに上がった駿河は、今度提出を考えている小説のプロット作りにかかっていた。シャーペン片手にルーズリーフと取っ組み合いをしている。
「駿河総一郎、お前が桂咲を止めない限り、俺は読書が出来ん。なんとかしろ」
「そう言われましても、桂さんが僕の言うことを聞くとでも?」
「……」
「……でしょう?」
「オマエら、ワタシのことどう思ってるのか言っていけよ。一発ずつ蹴りいれてやるからよ」
「おはよう、みんな~。久しぶりだ~」
ここで神楽小路にとって救いの女神・佐野真綾が席に着いた。タオルで汗を拭き取りながら、みなの顔を見渡す。
「今、楽しそうにお話ししてたけど、なんだか知らない間にみんな仲良しになったの?」
「おう仲良しだぞ! な! 神楽小路」
「お前と会話するのは今日で二回目だが?」
「二回も話してたらもう仲良しなんだよ」
苦虫を噛み潰したような表情の神楽小路をよそに、
「楽しそうでなによりだよ」
と佐野は嬉しそうにしている。夏季休暇に入る前と何ら変わらない彼女の姿に神楽小路はどこか安心した。
「暑いから、なんかおいしいもん食べて元気になりたい」
「だねぇ。毎日暑いもんねぇ」
「暑すぎてなかなかキッチン立つのも嫌になるよな」
「うんうん、キッチンってなんで空調届かないんだろうね」
「だからといって、桂さんは僕の家にご飯を乞食しに来るのやめてもらえないですかね」
「お前は涼しい顔して料理出来てるんだからいいだろ」
「僕も暑い中頑張って自炊してるんですよ。……ああもう言い返すだけで暑くなります」
桂が突然何かひらめいたように手をたたいた。
「なぁ、ホームパーティーやろうぜ。ご飯食べて遊んだら元気が出るだろ。真綾は、少し遠いし泊っていけよ」
「泊っていいの? 楽しみ!」
「駿河は強制参加な」
「はいはい、了解です」
「おい、せっかく居合わせてるんだ。神楽小路も来るよなぁ?」
「断る」
「はぁ~残念だな。駿河も真綾も来るのによぉ」
「神楽小路くんもご予定がありますし」
大学内で話すならまだしも、わざわざ休みの日に会うのは気が進まなかった。
すると、
「わたし、料理作るよ!」
佐野は勢いよく挙手した。神楽小路、桂、駿河、教室にいた全員の注目を浴びる。視線を感じ、そろそろと手を下げて、
「咲ちゃん、泊めてくれるお礼にご飯つくるよ」
「え! それじゃあ、一緒に作ろうぜ。その方が楽しいし」
「だから、神楽小路くんも食べに来ない?」
神楽小路はようやく読んでいた本から顔を上げた。
「……参加する」
「やったー! 楽しみだね、咲ちゃん、駿河くん」
「どういう風の吹きまわしっつーか、手のひら返しつーかわかんねぇけど。じゃあ参加人数は四人な。いろいろ決めていこうぜ」
授業が始まるまでにトントン拍子で計画は進められていった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 190万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる