【3】Not equal romance【完結】

羊夜千尋

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やっぱりワタシは

第十六話 やっぱりワタシは7

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 女性が立ち去ったあと、駿河は深々と頭を下げた。
「桂さん、フォローしてくださり、ありがとうございます」
「いいよ。駿河、困ってたし。あんなにしつこいの見てるとちょっとな。ヤバイこと、うっかり口走ってなきゃいいけど」
「大丈夫です。何かあったら僕が止めてましたよ」
熱くなった時、いつも冷静に止めてくれるのが駿河だ。

 十月頭頃の神楽小路は毎日うわの空で、気がつけば学校に来なくなった。真綾も、日に日に元気なくしていくし。見かねて、神楽小路に一度生存確認の電話を入れたことがある。その時に歯切れの悪いことしか言わない神楽小路にだんだん怒りが募って、語気が強くなってしまった。
 その時、駿河がワタシからスマホを取り上げ、神楽小路に何か言ってから通話を切った。
「なんで切ったんだよ」
「あのままでは桂さんも、神楽小路くんも、佐野さんも本当にバラバラになりますよ」
「だけど、真綾の連絡も無視してさ、何も事情を言わないってどういうことなんだよ」
「桂さん、一旦落ち着きましょう」
「ワタシは……真綾が……」
「佐野さんのことを心配する気持ちはわかります。ですが、神楽小路くんもなにか理由があるんだと思います。僕だって今回のことを含め、知りたいことありますし、もっと仲良くなりたい。だからといって、必要以上につついては逆効果です。その時が来るまで、待ってあげましょう」
「でも……」
「佐野さん、授業内容まとめたノートを作成したりしてるんでしょう? 佐野さんも帰って来るのを信じて待ってるんですよ。それに、彼女は行動力がありますから、もしかしたら、何か他にも考えがあるかもしれません」

 そうやって、駿河が止めてくれたから、ワタシは神楽小路や真綾との縁が切れずに今日を迎えてるんだと思う。
「サークルに入れば、また違う交友網が出来るし、新しい刺激をもらえるとは思うのですが、今はちょっと」
「お前が難しいなって思うんなら、それでいいんだ。無理すんなよ。でもスカウトなんてアイドルかモデルかよ」
「そんないいものじゃないですよ。作品を読まれて褒められるのは良いんですが、こんな大ごとになるのは勘弁してほしいですね」
「でも、駿河がサークルに入ったら、今みたいに一緒にいれる時間は少なくなるだろうな。大学祭じゃ、店番もしなきゃならないだろうし」
「そうですね。準備や片付けもあってかなり忙しいでしょうね」
「こういうイベントの時に駿河がいないとなんか物足りないだろうなっていうか……その、サークル入るの断ってくれて少し……いや、かなり安心した」
 たどたどしく話すワタシに、駿河は小さく口を開けたまま見ている。
「あ! だけど、サークル入りたくなったらワタシのことは気にせずに入れよ?」
「ありがとうございます。入部すると決めた際には桂さんにはちゃんと言いますから」
「うん」と頷きながら、ワタシは自然と微笑んでいた。
「そういや、駿河。さっきあの人が言ってた『青の空は君の色』って……」
「え!? あの……その……」
 駿河が珍しく口ごもり、腕を組む。目も泳いでいる。
「ワタシに見せれねぇようなエログロなヤバイ内容の小説書いたのか? タイトルはあんなに爽やかなのに?」
「ちっ、違います! 提出期限ギリギリに完成してチェックしてもらう時間がなくて……」
「駿河が提出期限ギリギリって……そんなことあるのかよ」
「あの時ばかりは、いつも提出期限当日に完成させてる桂さんの気持ちがよくわかりましたよ」
「おい、コラ」
 さっき先輩と話してた時は顔が暗くなってたけど、こうして話してたらいつもの駿河に戻って良かった。
「また読ませてくれよな」
「わかりました」
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