【生に神の唄】 ～護る強さと弱さ～

【ハニ×カミ のハニ】

【エピローグ】

　『神へ少女の恩返し』
　『自然を護れ神を護れ、子供たちが決死の奏で』

　そんな見出しのニュースが紙面やワイドショーを賑わせた。
　『なんとか大学の教授』とか『なんとか宗教団体の代表』とか、様々な大人が神様について語ったが、あたしが知っていることとは違う。

　それでも、マスコミによる話題性で、マンションの建設工事は中止になった。

　八丹神町が全国で話題になったのは一過性に過ぎなかった。しかし、あたしと神の子をモデルにした小説【生に神の唄】はベストセラーとなり、後にアニメ化、映画化と大ヒット。

　観光名所としての魅力なんて無い町に、『聖地巡り』と言って県外から訪れる人が増えた。秋祭りの時期になると、地元民ですら広場に入りきれない程。
　市長は、その波に乗って新たな観光の政策をどんどん打ち出す。秋祭りに合わせて花火大会が行われるようになったので、観光客は更に増えた。駅では丹羽さんお守りに丹羽さんクッキーなど様々なグッズが売り出された。

　御神木のある緑地こそ残されたが、他に残っていた緑地はホテルやショッピングモールが建てられた。来年には、アミューズメント施設がオープンするらしい。


　この町に、神の子が護ろうとした『生の神の森』の面影は、今はもうほとんど残っていない。



　だけど、八丹神町の夕方の空には、今日も町内放送で生に神はにかみの唄が響いている。


　あたしはそれを聴きながら、御神木に向かってリコーダーを吹く。


　割れた甲高い音が出て顔を上げると、フィガがあたしを見て、ハニカんでいる……


～　Fine　～